医療・介護の業界では、国家資格を有していることから転職もしやすい業界であり、実際の現場でも転職をする方は多くいます。

言語聴覚士(ST)として働いていても、何かのタイミングや理由で転職を考えることがあるでしょう。職場は、自分の生活の大部分を費やすことになる場所でもあるため、職場選びは非常に重要なものといえます。

ここでは、転職で後悔しないために、職場選びのポイントや避けた方が良い方法について紹介していきます。

現在、言語聴覚士(ST)として働くうえで後悔していることがある方、後悔をきっかけに転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

1.言語聴覚士(ST)として働くうえでよくある後悔

この章ではまず、STとして働くうえでよくある後悔について紹介していきます。

給与が安い

令和3年賃金構造基本統計調査の統計データによると、STの平均年収は4,265,400円となっています(年収=残業代や交通費なども含む)。これをさらに月給と賞与に分けると、月給は296,000円であり、賞与が713,400円となります。

残業代を除いた年収は4,131,000円で、残業代や交通費などを含めた年収と大きな差がないことからも、残業手当で得られる額が少ない可能性が高いことを示しています。

この統計データは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・視能訓練士と合算された年収データであり、STのみではありませんが、公開されている求人などの情報とも概ね一致しています。

国税庁の調査によるとサラリーマンの平均年収は約433万円ですので、それと比べるとSTの平均年収は若干低いですが、少なすぎるということはないでしょう。

ただし、STは以下の理由から給与が上がりにくいともいわれています。

・診療報酬制度の問題
・夜勤手当がない
・施設経営の問題
・若手スタッフが多い

そのため、年齢や経験年数を重ねるごとに、他職種や異業種と比較して給与が安いと感じる可能性はあるかもしれません。

給与については以下の記事でもご紹介しています。興味がある方は参考にしてみてください。

業務量が多くサービス残業が常態化している

リハビリ職全般に言えることですが、サービス残業が常態化している職場も多いようです。特にSTは、1人当たりの担当患者数が多いことに加え、評価の集計、教材や課題作成、VE・VFの準備、食事評価などに時間をかける必要があり、PTやOTに比べて残業が多く発生してしまう傾向があります。

人間関係・他職種からの言語聴覚士(ST)に対する理解が乏しい

STはPTやOTに比べて人口が少ない点、VE・VFなどの摂食嚥下評価が収益源にならない点などから、STが1人しかいない職場またはリハビリテーション科の代表者がST以外の職種である職場では、STへの配慮が少なく苦労するSTも多いようです。

その積み重ねが少しずつ不信感に変わり、最終的に人間関係の破綻に繋がってしまう可能性もあります。

希望の分野・職場ではない

STが活躍できる職場は多岐にわたりますが、同じ施設形態でも事業所により担当する仕事内容が大きく異なります。そのため仕事内容をよく調べずに入職してしまうと、自分が希望する分野のリハビリを行うことができず、後悔してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

訓練効果よりも単位実績を評価されてしまう

評価されるべき指標は患者さんに対する訓練効果であるべきはずですが、単位数や実績が優先的に評価されてしまう職場もあるようです。

STが少ない職場では1人あたり1日最大20単位程度担当しなければならず、業務が回らずに疲弊してしまったり、1人1人の患者さんにしっかりと向き合うことができず後悔してしまったりする可能性もあります。

勉強会・会合・休日出勤が多い

こちらもリハビリ職全般に言えることですが、患者さんにより良いリハビリを提供するためには日々の自己研鑽が欠かせません。最新の知識や技術を身に着ける必要があり、定時後には職場の勉強会、休日には外部での学会や研修会への参加、その準備として資料作成などを行うSTも多いようです。

これらについて入職前に把握するのは難しい場合もありますが、患者さんのためとはいえ、予想以上に日々の業務が多忙で自分の時間を確保することが難しく、その点にミスマッチを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

リハビリにおけるリスクが高く責任を感じてしまう

リハビリは結果次第で、患者様の人生を変えてしまう可能性もないとは言えません。特にSTの場合、摂食嚥下に関する評価・リハビリは肺炎を起こして全身状態の低下に繋がったり、今後の経口摂取の可否、延いては生死に関する問題になったりする場合もあります。

とてもやりがいのある仕事ですが、患者様の持つ可能性をどれだけ引き出せるか、患者様と真剣に向き合えば向き合うほど、STとしての責任の重さが負担に感じてしまうということも多いようです。

患者さんとのコミュニケーションが上手くいかない

STがリハビリを担当する患者さんの中には、言葉によるコミュニケーションに問題を抱える方々が多くいます。なかなか心を開いてくれないことに心が折れたり、リハビリの拒否など、患者様との信頼関係作りがうまくいかなかったりすることで、STの仕事がつらいと感じる人も少なくありません。

2.言語聴覚士(ST)として後悔しないためには職場選びが肝

転職先を選ぶとき、どのような理由、条件で選びますか?

理想の働き方やプライベートなど様々な視点で選ぶことはできますが、働き始めて後悔しないために最低限外せないチェックポイントがありますので、まずはそれらについて見ていきましょう。

福利厚生や数年後の年収も視野に入れる

年収や福利厚生は、第一条件として検討する方も多いと思いますが、勘違いで後悔してしまうことも少なくありません。

事業所の収益、施設形態などで年収は決まってきますが、病院などは、診療報酬の観点から、ある程度上限が決まっていることが多いです。毎月の給与だけでなく、賞与も含めた年収としてはどうなのか、また、休日の数や働く時間帯、残業の有無や仕事内容と比べて見合った額であるのか検討が必要です。

福利厚生については、事業所ごとに違ってきます。通勤手当や資格手当、特別休暇の支給、食事や社宅の貸与、事業所特有の制度やサービスが利用できるなど様々なものの中で、自身が重視するものが含まれているかしっかりと確認する必要があります。

特に、出産子育てを考えている方の場合は、院内託児所の有無や育児がしやすい制度があるかは重要なポイントとなってきます。

施設形態だけでなく仕事内容を見る

職場選びでは、働く先が病院なのか施設なのかでも働き方は大きく異なります。

病院であっても、急性期、回復期、維持期だけでなく、特定機能病院や、地域医療支援病院などもあり、経営母体からみても個人立病院、国立(公立)病院、公的病院など種類は様々です。

施設形態を選ぶことも重要ですが、事業所によって仕事内容は大きく異なってきます。自分がやりたいと考えているリハビリが、本当にできる場所であるかの確認は非常に重要です。

設備やスタッフなど働く環境を確認する

働く先が働きやすいかどうかは、設備が充実しているか、リハビリが行いやすい環境が整っているかも重要となってきます。

設備や環境については、ホームページなどで写真掲載も多いためイメージしやすく、実際に訪問した際に雰囲気などを知ることができるかと思います。

働く上の環境で大事なのは、設備だけでなく、周囲の人も重視される方が多いと思います。実際に働いてみないと、職場での人間関係などわからないことも多いですが、スタッフの年齢層や経験年数などはある程度把握できるため、自分と同年代の人が多い職場であるのか、教わっていきたいと思えるような経験年数の長い人がいる職場であるのか、逆に若手が多く自身が先輩となって引っ張っていく必要がある職場であるのかは、ある程度予測することができます。

3.そのほかの転職においてよくある後悔と避けたほうが良い方法

先ほどは、後悔しないために最低限抑えておきたいポイントについてお伝えしましたが、ここからはあるあるの後悔ケースを基に気を付けておきたいポイントをご紹介していきます。

転職理由が曖昧のまま転職を決めてしまう場合

転職さえすれば、すべて上手くいくと考えて転職をしてしまった人に多くみられる失敗でもあります。

今働いている職場で、転職したいと思えるような点があり、その点から現実逃避として転職を考える方もいます。

後悔しない転職をするためにも、何が問題点であったのか振り返り、自分が転職する上で重要視することを明確にした上で転職するかどうか、転職するのであればどのような転職先を選ぶか決めていく必要があります。

下調べをあまりせずに転職先を決めてしまう場合

転職理由が明確になっていても、通常業務が忙しく、十分に下調べをする時間を取らずに転職先を決めてしまうことはとても危険です。

ホームページにある情報や、募集要項などの情報だけでは、表面的なことしかわからず、実際のものとイメージがかけ離れていることもあります。

そうならないためにも、自身が働く先を判断する上で必要な情報は何であるのかを事前に書き出し、訪問した際に質問をしたりしながら確かめ、きちんと納得した上で働く先を決めていくことが重要です。

4.後悔しない職場選びにはエージェントの活用がおすすめ

転職するために、職場の情報収集が重要なことがわかっても、やはり日々の業務の中で情報収集にあてる時間が限られていたり、また、自身で集められる情報にも限りがあり、なかなか十分な情報収集が行えないことがあります。

また、実際の訪問でも給与や待遇面など、重要と思っていても、聞きにくいことがあったり、訪問先が忙しくてあまり時間を取って貰えず、十分な質問が出来ないこともあります。

そういった場合に、転職エージェントを活用することがおすすめです。

PTOT人材バンクでは、キャリアパートナーが応募先との間に入るため、応募先に直接質問ができなくても、代わりに問い合わせてくれます。

また、ホームページや募集要項などに記載されているよりも多くの情報を保有しているため、転職先を検討する上で必要な情報を簡単に知ることができます。
言語聴覚士(ST)の求人・転職情報はこちら

何か些細な相談ごとでも、キャリアパートナーが親身に相談にのってくれるため、転職する上での不安も軽減され、後悔するリスクは限りなく減らすことができるのではないでしょうか。

5.スキルアップはどの職場でも後悔解消に繋がる可能性がある

スキルアップを目指すことは、転職して職場を変える選択をしても、現在の職場に残る選択をしても、後悔の解消に繋がる可能性が高いといえるでしょう。

たとえば認定資格や民間資格を取得した場合、専門的かつ高度な知識・技術を持っていると認められ、周りのスタッフ、患者さんやそのご家族からの評価・信頼を得ることができ、人間関係における悩みの解消が見込めるかもしれません。

またスキルアップすることで仕事の幅が広がり、自分が本当にやりたい分野で活躍できる可能性が高まります。昇給や昇進などのキャリアアップや仕事のやりがいにも繋がるため、現状を変えたいと考えている方はスキルアップも含め検討してみるとよいかもしれません。

具体的な方法については以下の記事でもご紹介しています。興味がある方は参考にしてみてください。

6.言語聴覚士(ST)が合っていないと感じる方へ

転職を考える上で、そもそもSTの仕事自体が自分に合っていないのではないかと考える方も中にはいるのではないでしょうか。

仕事内容が自分には合っていないと感じた時に、まずは何が合っていないと感じたのか一つ一つ思い出してみましょう。そして、本当にやりたいと思っていたことは何だったのか、それができているのかどうかも考えてみましょう。

中には、本当にやりたかったことが、STの仕事とはかけ離れていて他の職種の方が合っている場合もあると思います。

しかし、本当にやりたかったことが、現在の職場でできていないだけで、他の職場であればそれが実現するということも十分あり得ます。その場合は、やはりST自体を合ってないと考えて辞めてしまうことは後悔にも繋がりやすいため、迷った場合は一度仕事内容をしっかりと振り返ってみましょう。キャリアパートナーに相談してみるのも良いでしょう。

これからSTを志していく方にとっては、後悔しない働き方をするためにも、STという仕事がどういう仕事であるのかしっかりと内容を把握し、自身の適性と合っているのか、自身がやりたいと本当に思える仕事であるのかをしっかりと考えてみましょう。

STの国家資格取得は、取得自体にも時間と労力を要します。後悔しない選択をするために、STを志して良いか迷うところがあれば、今一度自身のやりたいことや考えを振り返ってみましょう。

7.まとめ

引っ越しや結婚などの環境の変化に合わせた転職だけでなく、働いていく上で今の職場や働き方が本当に自分に合っているのか、自分のやりたいことができているのか、何かしらの理由で転職を考えることはあると思います。

どのような理由であれば、「今の職場より良い環境に転職するはずだったのに。。。」と後悔してしまうことはあると思います。

基本的な条件の確認に加え、転職後に達成したいことや優先したいことなどをなるべく丁寧に整理し、後悔のない職場選びができるよう、少しでもこの記事が参考になると幸いです。

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【参照サイト】
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)