言語聴覚士(ST)にとって、老人ホームで働くことには大きなやりがいや意義を感じられるものです。

ただ、ひとくちに老人ホームといってもいくつか種類があり、その違いやどの施設が自分に適しているかあいまいという方も少なくありません。

そこで今回は、老人ホームの特徴や業務内容をまとめて整理したので、詳しくご紹介していきます。

老人ホームへの転職を考えている方には、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

1.言語聴覚士(ST)の老人ホームでの役割

老人ホームは運営団体や規模、利用目的によって様々な種類があります。施設によって特色は異なりますがSTの主な役割は、入居者の方が長く安全にホームで生活を送れるように評価やリハビリを行うことです。

病院と異なり維持期の方が多く、加齢での機能低下もありますが、活動量が下がることで廃用症候群が進み、摂食嚥下機能、構音・発声機能、認知機能の低下がみられるようになります。

これらの予防に努めることが、STが老人ホームで求められる重要な役割といえるでしょう。

2.老人ホームの種類

まず、老人ホームをSTが働けるかどうかという視点で分類し、簡単な説明とあわせて表にまとめましたので、こちらをご覧ください。

施設名特徴STの職場として
特別養護老人ホーム公的施設 俗にいう「特養」のことです。常時介護を必要とし、自宅での生活が困難なかたが利用します。
養護老人ホーム公的施設 生活保護を受け、経済的・身体的・精神的・環境的に自宅での日常生活が困難な方が対象。介護施設ではなく自立の人向けの施設です。×
介護老人保健施設公的施設 俗にいう「老健」のことです。“介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師による医学的管理の下、看護・介護といったケアはもとより、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設”※1です。
介護医療院公的施設 “要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設です。”※2医師や看護師が常駐。吸引・経管栄養可能な施設です。
ケアハウス公的施設 “家庭での生活が困難な60歳以上の高齢者が、低料金で食事や洗濯などの介護サービスを受けられる施設です”※3。介護サービスは行っていません。×
民間の介護付き有料老人ホーム民間施設 “厚生労働省によると“①入浴、排せつ又は食の介護、②食事の提供、 ③洗濯、掃除等の家事、 ④健康管理のいずれかする事業を行う施設”※4で、施設によって特色が異なります。
住宅型有料老人ホーム民間施設 “生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設“※5と説明されています。 自立の人のみ利用でき、介護サービスはついていないため、介護サービスが必要な際は地域の訪問介護サービスを利用します。×
サービス付き高齢者向け住宅民間施設 俗に言う「サ高住」「サ付き」のことです。バリアフリー対応の賃貸住宅で、生活相談員が常駐し生活支援サービスを受けることができます。介護が必要な場合は、外部の介護サービスと個別に契約が必要となります。×
健康型有料老人ホーム民間施設 “食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設” “介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければならない”※6施設です×
グループホーム民間施設 “入浴、排せつ、食事等介護その他の日常生活 の世話及び機能訓練を行う住居共同生活の住居“※7です。医療サービスは外部に委託しています。×
1:全国老人保健施設協会 老健施設とは
2:厚生労働省 「介護医療院とは?」
3:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット ケアハウスとは
4-8:厚生労働省 介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて
省 有料老人ホーム概要

上記の表でまとめた通り「老人ホーム」と呼ばれる施設の中でもSTが働ける施設は意外と限られています。ここからは、STが活躍できる4か所の施設について詳しく見ていきましょう。

特別養護老人ホーム(特養)のSTの仕事内容、働く環境

特養は自宅で生活は困難で介護を必要としている方が入居されています。

STの業務としては、口腔体操や歌唱などの機能訓練、摂食・嚥下機能障害に対して評価やリハビリをすることが多いです。

施設によって各種研修や託児所などのサービスも見受けられます。

介護老人保健施設のSTの仕事内容、働く環境

介護老人保健施設では入居者の自立や自宅復帰をめざしてケアをする施設です。老人ホームの中でもリハビリに力を入れている施設と言えます。

「残業無し」を売りにしている施設もあり、ワークライフバランスの取りやすい環境と言えるでしょう。

介護医療院のSTの仕事内容、働く環境

介護医療院では医療サービスを必要としている方にも対応しており、リスクのある方のリハビリも必要とされる施設です。

ただ、まだまだ求人自体は少ないのが現状で、医療サービスを併用し、リスクのある方のリハビリもできる勤務先を希望している場合は、維持期も対応している回復期病院などを検討した方が希望の職場を見つけやすいかもしれません。

民間の介護付き有料老人ホームのSTの仕事内容、働く環境

介護付き有料老人ホームには、要介護認定が無い方から、寝たきりの方までさまざまな入居者がいます。

長期ブランクや未経験でも歓迎する求人もあり、勤めやすい施設形態かもしれません。

3.老人ホームで求められるスキル

介護医療院を除いて、老人ホームでは病院のように緊急性の高い疾患を持つ方はあまりいませんが、後期高齢者の方が多く、複数の疾患や既往を持っていることがほとんどです。そのため、言語聴覚士(ST)には成人分野の全般的な知識とリハビリが求められます。

特に「むせる」「食事をとらなくなって栄養が確保できない」など、摂食・嚥下障害に関しては相談を受けることが多いので、これらのスキルは重要度が高いです。

また、口腔体操などレクリエーションを依頼されることも多く、複数の人が楽しんでリハビリできるような工夫や企画力も求められるため、手段リハビリのスキルを要求されることも少なくありません。

証明できる資格として、認定言語聴覚士の摂食嚥下障害領域や呼吸ケア指導士などにチャレンジしてみてもいいかもしれません。

4.タイプ別!言語聴覚士(ST)におすすめの老人ホーム

最後に、これまでの話を踏まえて、どんな人にどの施設がオススメか紹介してこの記事を終わりにしていきます。

在宅に向けてリハビリしたい人は、介護老人保健施設がオススメ

自宅に戻ることを想定してリハビリのプランを立案する必要があり、家族や他職種との連携も必要とされます。

入居者の家庭状況や、家族背景などを聴取して、個人に合わせてリハビリを提供できるので、自宅復帰を支援することにやりがいを求める方には相性の良い施設と言えます。

ブランクがあって再就職が不安な方には、特別養護老人ホーム・民間の介護付き有料老人ホームがオススメ

特養や介護付き有料老人ホームは、老人ホームの中でも新人研修やOJTに力を入れている事業所が多い分野です。

また、入居者の利用が長期のため人の入れ替わりが少なく、書類業務の負荷も少ないため、比較的穏やかな現場であるともいえます。

5.まとめ

言語聴覚士(ST)の老人ホームでの役割は、入居者の方が長く安全にホームでの生活を維持できるように評価やリハビリを行うことです。

老人ホームの種類は幅広いですが、STが必要とされるのは、施設内での介護や医療サービス介入の必要性が高い、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、民間の介護付き有料老人ホームです。

特別養護老人ホーム、介護医療院、民間の介護付き有料老人ホームは、口腔体操や歌唱などの機能訓練、摂食・嚥下機能障害に対して評価やリハビリをすることが多く、シフト制勤務がほとんどです。

介護老人保健施設はほかの施設と比べて人の入れ替わりが比較的多いですが、様々な利用者様に触れる機会も多く在宅へ向けたリハビリを行えるため、やりがいを感じやすい職場と言えます。

特別養護老人ホーム・民間の介護付き有料老人ホームは、入居者の利用が長期のため人の入れ替わりが少なく、新人研修を謳っている施設もあり、ブランクがあってからの再就職もしやすい職場と言えます。

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【引用サイト】
全国老人保健施設協会 老健施設とは
厚生労働省 「介護医療院とは?」
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
厚生労働省 介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて