言語聴覚士(ST)を続けていくうえでキャリアアップについて興味があるという方も多いと思います。

臨床経験を重ね、施設内での立ち位置が定まってきたり、STとしての目標が明確になってきた時が、キャリアアップに向けて動きだす良い機会です。

この記事では、具体的な方法に加えキャリアアップの考え方と陥りやすい失敗について解説します。

1.言語聴覚士(ST)のキャリアアップ

キャリアアップは一般的に「仕事の能力や専門性を磨いて、よりハイレベルな職業経験を重ねること」を意味します。

キャリアアップに似た言葉としてスキルアップがありますが、スキルアップは「資格の取得など個人的な能力向上」、キャリアアップは「獲得した能力を活用して地位を得たり、施設や社会に貢献する」というイメージです。

STの場合のキャリアアップは興味のある分野の専門性を高めていくというだけでなく、施設や事業所での役割の幅を広げていくという意味合いが強くなります。

キャリアアップの例としてはNSTなど専門的な部門でのリーダーになることや、主任などリハ室内や施設内での役職に就く・管理職になること、入院や外来などの臨床だけでなく介護部門でも主軸として関わるなどがあります。

2.言語聴覚士(ST)におすすめのキャリアアップ方法

STがキャリアアップしていくためにはいくつかの方法があります。

キャリアアップはモチベーションアップのためにも「なりたい自分を目指して動く」ということが重要になります。以下に例を挙げましたので、参考にしてみてください。

専門領域を広げる

STはリハビリ職の中でも専門分野が広く、様々な症例の臨床を行うと同時に、それぞれが興味のある専門分野を持っている場合が多いです。

もちろん、特定の専門分野に対して突出した知識があるということも強みではありますが、施設のスタッフとしてのちのち後輩達をまとめあげる立場を目指すのであれば、STに関わる全体的な知識が必要です。

また、専門領域が広いということは様々な分野でリーダーに就く機会が広がるということにもなります。

そのため、特定の分野に限らず、臨床に活かせる分野を積極的に学んでいくというのもキャリアアップのためのひとつの手です。自身が担当する患者様や所属する施設の疾病傾向などからリハビリに活かせる学びを増やしていくと良いでしょう。

新しい業務スキルを身につける

STが施設で担う仕事は臨床でのリハビリだけではありません。例えば嚥下障害の患者様であれば、十分な栄養をとってもらうために、医師や栄養士と嚥下の状態を共有したり、食事の形態を調整したりなど、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)というものが関わってきます。

NSTではリハビリ処方でSTが介入している、いないに関わらず、施設内で食事を提供していたり、在宅での食事形態を調整する必要があるなど嚥下に不安がある方すべてを評価します。

通常のリハビリのように時間をかけての評価ではなく、少ない情報から評価・食形態の選択をする必要があり、STの重要性が高い業務です。

転職の際などにもNSTに参加していることは評価の対象となりますので、積極的に参加しておいて損はありません。また栄養サポートチーム専門療法士という資格を取得するとチームの中核として業務を担うことができます。

他には病院施設に勤めている場合、併設された介護施設での通所リハや訪問リハなども需要が高まってきているため、介護保険に関する知識をつけたり、機能維持を目的としたリハビリの習得など介護部門への業務スキルを身につけるのも良いでしょう。

リーダーを目指す

リーダーになるためにはSTとして十分な経験と知識のほか、STチームやリハ室全体を引っ張っていくことのできるリーダーシップ、医師や看護師などの他部門とも対等に話し合えるだけの信頼関係も必要になってきます。

経験や知識、信頼関係などは一朝一夕では身に付くものではありませんので、臨床と向き合いながらじっくりと積み重ねていく必要があります。

スタッフの数が多い施設や創設から年月が経った施設に比べると、新設されたばかりの施設のほうが、役職者として中核を担ってくれるスタッフを募集している場合もありますので、できるだけ早い段階で役職者になりたいという方は他施設への転職も視野に入れてみましょう。

3.よくあるキャリアアップの失敗例

キャリアアップの基本的な考え方はリハビリの目標や計画の立案と同じです。

最終的になりたい目標を決め、そこに至るまでにどんな段階を経ていくのか短期的な目標を検討し、その目標をクリアしていくためには何が必要か、どうしたら良いのか、その都度選択していきます。

よくある失敗としては、目標があやふやで様々な資格などに手を出すなど方向性が定まらない、最終目標に至るまでに自分がすべきことがイメージできていない、資格や特技など良い武器を持っているのに活用できていないなどが挙げられます。

これらの失敗は、将来の目標を明確にしてきちんとした計画を立てることで回避できる可能性が高まります。思うように結果が得られない、予想外のハプニングで軌道がそれてしまったなどの場合は、無理に進めようとせず、改めて計画を立て直すことをおすすめします。

せっかくの経験を無駄にしないよう、自身の能力を踏まえた目標や計画を立て、定期的に何ができていて何ができていないのか省みて、時には目標や計画を見直し、再度目標に向けて修正していくことが大事です。

4.まとめ

今回は言語聴覚士(ST)のキャリアアップと具体的な方法とよくある失敗について解説しました。STとして働いていると様々な疾患を持った患者様と接することになり、適切なリハビリを提供するためにはスキルアップが必須となります。

スキルアップしたり経験年数を重ねるうちに、今度はリーダーを任されたり、新人教育に携わったりと、立場も変わってきます。その際、ただ業務をこなすのと、目標を目指して動くのでは結果に明らかな差が出てきます。

資格を取得したり、勉強を続けることは簡単なことではありませんが、キャリアに繋がるしっかりとした目標があると、日々の臨床でも達成感や充実感を得ることができますので、この機会にキャリアアップについて考えてみてください。

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