近年の高齢化や発達障害への注目で少しずつ活躍の場を広げてきている言語聴覚士(ST)ですが、やりがいを感じる仕事である反面、大変なことも多く、「辞めたい」と考えている人も中には居るかと思います。

今回はSTが「仕事がつらい・楽しくない」「辞めたい」と思う瞬間や対処法について解説します。STの仕事に悩んでいる方は参考にしてみてください。

1.言語聴覚士(ST)を辞めたい理由

STに限ったことではありませんが、仕事をするということは楽しいことばかりではなく、様々な理由で働くことが嫌になってしまうことももちろんあります。

まずは、STが仕事を辞めたいと感じる理由について挙げてみました。

職場にSTが1人しかいない

STは他のリハビリ職に比べると配置されている人数が少ないという施設が多くあります。施設の規模にもよりますが、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が10~20人以上在籍する施設でSTは2~3人程度という場合が多く、1人職場も少なくありません。

1人職場というと自分のペースで仕事ができて気楽なように思うかもしれませんが、実際はたくさんの仕事を自分1人で対応することになり大変です。

多くの担当患者の臨床のほか、カンファレンスの参加、リハビリ介入はしていないものの嚥下状態が気になると相談された患者様の評価、院内勉強会の依頼、カルテ入力・その他事務作業など、その仕事量は膨大です。

さらにSTはPTやOTとは大きく異なる専門性があり、臨床について悩んだ際にも1人職場だと相談しにくい、他のスタッフから相談を持ち掛けされた際に自分1人で解決しないといけない、なども大きな負担になるでしょう。

STとして十分な経験があり、1人職場でも大丈夫という人には適していますが、心身共に負担が大きく、1人職場がつらくて辞めたいと感じる方は多いようです。

職場の人間関係に悩みがある

STが施設で働く場合、リハビリ以外にも医師や看護師、事務職など多くのスタッフが所属しています。人数が多くなると、性格の不一致や意見の相違など人間関係の悩みも増えてきます。

最近よく問題となっているパワハラやセクハラなどのハラスメントも、加害者や被害者だけでなく、周囲も含めた人間関係に大きな影響を及ぼします。

STの場合、女性が多いことや1対1でのリハビリという特性上、スタッフ間だけでなく患者様から攻撃されてしまうことも少なくないため、職場の人間関係に問題があると、なにかあった時に相談しにくく、安心して働くことができません。

また、職場の雰囲気が悪いと患者様の情報共有が円滑にいかず、リハビリに影響が出たり、職場に行くこと自体が精神的な負担に感じるようになり、仕事を辞めたいということになる可能性もあります。

仕事が多すぎる

PTやOTが麻痺や怪我に対する運動療法など、一部共通するリハビリを実施しているのに対し、STは言語や嚥下障害などSTだけが専門とする障害が多く、これらに関する仕事は全てSTが受けることになります。

必然的に、人数の少ない職場では割り振られる仕事量も増えていきます。

継続的に仕事量が多い状態が続くと、だんだん余裕がなくなってしまい、仕事を辞めたいと考えるようになることもあります。

給料が低い

給与や待遇に関しては施設により大きく異なる部分ですが、生活する上でとくに気になるポイントでもあります。

経験年数を重ね、仕事量や責任が増えてくると、他の施設のSTの給与が気になって比較したり、自分の給与が低いのでは?と考えるようになります。

給与は仕事へのモチベーションや勉強会参加などの自己投資、プライベートの充実にも繋がるため、給与が低いことでSTの仕事を辞めたいと思うこともあります。

自分に向いていない気がする

国家試験に合格し、晴れてSTとして臨床の場に出ると、実際に患者様とコミュニケーションを取りながら信頼関係を構築したり、患者様のやる気を引き出しながらリハビリを進めるなど、これまで学んできた知識だけではどうにもならない問題に頭を悩ませることが多々あります。

その都度、必要な知識をつけたり、周囲に相談するなどして、うまく解決していくことができれば良いですが、STとしてのスキルを高めるためにはたくさんの経験が必要なため、ある程度時間がかかります。

この時間がつらくなってくると、自分はSTに向いていないのではないかと感じ、STの仕事から離れたいと思うようになることもあります。

2.リハビリが楽しくないと感じてしまった時は

仕事を続けていくうちに、なんとなく仕事がつまならい、仕事に身が入らないなど、リハビリを楽しむことができなくなることもあるかと思います。

働いていれば、誰しもが経験する可能性のあることですが、理由や深刻さの程度、乗り越える気力があるかどうかなど、人によって解決方法は様々です。

短絡的に「しんどいから辞める」と結論付けるのは簡単ですが、それでは根本的な解決とはなりません。

まずは、自分が何に不満を感じているのか、どうしたいのか、どうすれば解決する可能性があるのかなど、問題点を整理し、手間ではありますが、順序立てて解決に近づくのが良いでしょう。

もちろん、転職・退職するという手段が駄目というわけではありませんので、選択肢のひとつとして残しておくことも大切です。問題を解決するための複数の選択肢を用意して、自分にとって何が一番良いのかよく考えることをおすすめします。

3.シーン別!辞めたい感じた時の対処法

言語聴覚士(ST)が仕事を辞めたい!と感じた時に対処する方法として、どのような選択肢があるのか、シーン別に分けて例を挙げてみました。

仕事量・仕事内容が負担に感じた時の対処法

仕事量が多くて大変、仕事内容がきつくてついていけないなど、仕事に関して悩んだら、まずは現状の仕事を書き出し、優先順位とそこにかける時間や熱量の配分を決めると良いでしょう。

どの仕事に対しても真面目に取り組むことはリハビリを担う者として必要なことですが、キャパオーバーになって、どれも完結できなくなってしまっては元も子もありません。臨床ひとつとっても1人の患者様で長時間悩んでいたら他の患者様がおろそかになってしまいます。

例えば期限のある課題など優先的に済ませる仕事と後からでも大丈夫な仕事を分け、さらに仕事内容を細分化し、やるべきことをチェックリストのようにしていくと、いつもどこでつまずいているか、自分が苦手とする項目も明確になります。

自分自身の問題点が分かれば、少しずつ進めておいて負担を軽くする、他の仕事を先に済ませて時間を確保するなど対処することもできます。やるべき項目がわかっているため、ひとつずつ達成していくことで、達成感を得られることもポイントです。

また、同僚や上司に相談できるのであれば、担当する患者様やそのほかの仕事の割り振りを変更してもらえる可能性もありますので、何がどのように大変か自分の気持ちを整理して相談してみるのもひとつの手です。

人間関係に悩んだ時の対処法

STとしてリハビリのチームに携わるのであれば、苦手な人とチームを組む可能性も十分にあり得ます。上司と部下など立場の違いなどもあり、人間関係の問題は自分だけではなかなか解決しにくい問題ですので、慎重に進める必要があります。

職場の雰囲気が悪い場合に一番取り入れやすい対処法としては、自分から行動していくということが挙げられます。例

えば、自分から毎日の挨拶をしっかり行うなど積極的に話しかけることです。苦手な人に対しては、反射的に距離を取ってしまい、コミュニケーションを怠りがちになるため、日常的に行いやすい挨拶が適しています。

苦手な人と距離を置く、苦手なままにしておくことは関係悪化に繋がる要因になります。こちらが苦手と感じていても、相手はそうではない可能性もありますので、「相手も自分のことを好きではないだろう」と決め付けず、自分からできるだけ話しかけるよう心がけてみることをおすすめします。

パワハラなど身体的・精神的な攻撃の対象になっている場合には、早い段階から上司や人事担当など第三者に相談をするなど、味方になってくれる人を探しておくと良いでしょう。その際には証拠などがあると有用ですので、事実をメモしておいたり、録音などで残しておくといいでしょう。

精神的に追い詰められたり、過度に落ち込む必要は全くありません。どうにもならない場合には早めに切り替えて、転職を視野に行動することも大切です。

給与に不満を感じた時の対処法

給与の問題は施設により定められている場合がほとんどです。昇給も勤続年数に左右されるなどかなりの時間がかかり、個人で変えられる問題ではないため、他の施設の給与や待遇などをよく比較検討し、転職を考えるのが妥当でしょう。

とくに新規開設の施設では比較的若い人材が集まっており、古くからある病院などに比べると経験年数の浅いSTでも管理職やリーダーなどの立場になりやすい傾向があります。

立場が変われば責任も伴いますが、自身の給料だけでなくスキルアップにも繋がるため、良い経験となるでしょう。

向いてないかも?と思った時の対処法

自分がSTに向いてないかも?と思った時には、なにが原因で仕事がいやだと感じているのかを明確にする、自分がどうなりたいのか将来の自分について考える、など自分自身をよく理解することが大切です。

STの仕事は小児や成人、医療分野や介護分野、教育分野など幅広く活躍の場がありますので、この作業をすることで自分に合う次の職場探しに役立てることができます。

仕事に対する思いと対処法について整理した表を掲載しておきますので、ぜひ参考にしてみてください。

仕事に対する思いおすすめの対処法
評価や定型的なリハビリを続けることがつまらない 自分も楽しみながら介入したい通所リハなど介護部門への移動や介護施設などリハビリにゲーム要素を取り入れて実施するタイプの施設がおすすめ
介入期間が短すぎる じっくり患者様と向き合い、リハビリの効果を感じたい生活に寄り添ったリハビリの提案・実施ができる回復期に力を入れている病院がおすすめ
知識や経験の不足を感じる STとしての見識を広めたいこれまでとは異なる対象(成人/小児分野)を主とする施設や、対象は同じでも病院から介護施設やことばの教室のような系統の施設がおすすめ
臨床につくのがつらい 経験を他の仕事に活かしたいSTの経験を活かしつつ、一般企業などこれまでとは異なる職種への転職の検討がおすすめ

4.元言語聴覚士(ST)として働ける場所は多い

STが転職を考える場合、病院などの医療施設や介護施設など、臨床に携わる職場が第一候補に挙がると思います。しかしSTとしての仕事自体を「楽しくない」と感じるのであれば、これまでの経験を活かしつつ、他の仕事を目指してみるのもひとつの手です。

自分の趣味や興味のあることなどSTとはまったく関係のない職場でも、たくさんの患者様と接してきたコミュニケーション能力を活かすことができますし、リハビリの計画を組むように、順序立てて仕事を整理する、困りごとに対して問題の核を見つけ解決に導く、などこれまでの経験は無駄にはなりません。

医療や介護をサポートする企業では、STとして臨床で経験したことや嚥下障害や認知症に対する専門知識、患者様と接する中で感じたことなどを余すことなく活かすことができるため特におすすめです。

株式会社エス・エム・エスでも募集していますので、興味のある方は是非応募してみてください。

5.まとめ

今回は言語聴覚士(ST)が「仕事がつらい・楽しくない」「辞めたい」と思う瞬間や対処法について解説しました。

なんらかの対処で問題が解決し、楽しく経験を重ねていけることが一番ではありますが、STとして得た経験は、他の職種でも十分に活かすことも可能です。働く上で自分にとって大切にしたい要素の優先順位をつけ、自分に合った解決方法を取り入れてみてください。お困りの際はPTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
言語聴覚士(ST)の求人・転職情報はこちら

関連記事

言語聴覚士(ST)の悩みに関するおすすめ記事をご紹介。