今回のテーマは言語聴覚士(ST)の就職先についてです。

STの就職先として病院やデイサービス、介護老人保健施設などを思い浮かべる方も多いと思いますが、他にもいくつか種類があります。

業態や仕事内容によって対象の患者様や働き方、体験できる経験が異なるので参考にしてください。

1.言語聴覚士(ST)の就職先と仕事

STが活躍できる場は病院、介護保険施設、小児、一般企業など、多岐にわたります。まずは、具体的な職場と仕事内容について見ていきましょう。

病院施設

多くの人がSTの就職先としてイメージするのが病院だと思いますが、その種類によっても業務内容や対応する患者様の疾患は異なります。

急性期病院

発症間もない患者様の評価・リハビリを行います。

新規の患者様が多く、院内勉強会をしている病院も多いので、勉強や経験を積みたい方におすすめです。高次脳機能障害、発声・構音障害、摂食・嚥下機能障害の評価リハビリ、自宅に帰る方には在宅の過ごし方についての助言を行います。

回復期病院

急性期病院から直接家に戻ることが難しい患者様の機能回復を図ります。

理学療法士・作業療法士とともに毎日リハビリを行うため、チーム医療や患者様の変化を実感できる機会が多いです。

担当する患者様は異なりますが、提供するサービスは急性期と同様で、院内勉強会などの環境も充実しているため、勉強や経験を積みたい方におすすめです。

神経内科

パーキンソン病や脊髄小脳変性症など神経難病の方に積極的にリハビリを行う現場です。進行性の疾患であることが多いので、進行状況に応じたリハビリを提供します。

摂食・嚥下機能、発声発語機能に対してアプローチを行い、代替コミュニケーション手段の習得などもサポートします。入院している方や外来でいらっしゃる方にリハビリを行います。

物忘れ外来

ドクターの指示のもと、神経心理学検査を行い認知機能の状態を調べます。

検査を実施する機会が多く、軽度認知障害の方からアルツハイマー型、レビー小体型など様々な認知症の患者様に出会います。認知症の評価・リハビリ・家族への助言を行います。

介護保険施設

次に、介護保険施設について説明します。介護保険施設とは介護保険サービスの一種で、要介護認定を受けた方が利用できる居住型の介護施設のことです。

高次脳機能障害、発声・構音障害、摂食・嚥下機能障害の評価とリハビリが主な業務になりますが、目的や入居条件によっていくつか種類が分けられます。

特別養護老人ホーム

俗に「特養」と略される施設です。要介護3~5の方が利用できる施設で、原則として終身に渡り入居が可能です。

特養でのリハビリは、安全に日常生活が過ごせることを目的に関わることが多いので、誤嚥性肺炎を起こさないための評価とリハビリ、認知機能や発話機能維持のサポートをします。

介護老人保健施設

「老健」と略される施設で、介護や看護、医師サポートを受けながらリハビリをして在宅を目指します。

基本的に3~6か月しか利用できません。基本的なリハビリに加え、在宅生活に関する助言を行います。

介護療養型医療施設

急性期疾患から回復期まで医学的管理下のケアやリハビリが中心の施設です。

介護サービスはありますが、あくまでも医療機関という位置付けで、心身の状態が改善した場合は退所を求められる場合もあります。

サービス付き高齢者住宅

介護保険ではなく民間運営の施設で、日常生活が自立~要介護3程度の利用者様が対象で、状態が落ち着いている方が多いです。

軽度の利用者様が中心でマイルドなリハビリ内容であることがほとんどです。

訪問型サービス

大きく分けて「訪問看護ステーション」と「訪問リハビリ」の2種類があります。仕組みの違いはありますが業務内容はほとんど同じです。

訪問看護ステーション

「訪問看護」によるリハビリテーションを行います。利用者様ごとに主治医から指示をもらい、「看護師の代行として訪問リハビリを実施する」という業態です。そのため、看護師が事業所内に必ず配置されていますが、医師は必須ではありません。

主に高次脳機能障害、発声・構音障害、摂食・嚥下機能障害の評価とリハビリを行います。

訪問リハビリ

「医療機関」による訪問リハビリを行います。同事業所内にドクターがいて、その指示のもと訪問リハビリを実施します。

提供するサービスは、訪問看護ステーションと同様です。

通所サービス

介護保険のサービスで、通いで来られる利用者様に対するサービスです。

デイサービス(通所介護)

介護保険のサービスで、一日か半日施設滞在して入浴や食事などの介護サービスを提供します。

リハビリテーションではなく「機能訓練士」という形で機能訓練を行い、高次脳機能障害、発声・構音障害、評価とリハビリを行います。重度の摂食・嚥下機能障害の方は少ないです。

デイケア(通所リハビリテーション)

デイサービス(通所介護)と似ている名前ですが、利用者様の目的が介護を受けることではなく、リハビリを受けることが目的の施設です。

デイサービスと同じリハビリを提供しますが、デイケアにはリハビリ専用の設備や部屋が用意されています。

小児に関する施設

小児は需要の多い分野です。病院やクリニックもあれば、児童福祉施設もあります。

小児病院/クリニック

小児の言語聴覚療法(言語発達遅延、難聴、口蓋裂、構音障害、摂食・嚥下機能障害などの評価訓練)を行います。聴覚検査業務を行う病院もあります。

児童発達支援センター

児童福祉法では児童福祉施設に定義されている施設です。地域の中核となる障害児の専門施設として、障害の種別に関わらず適切な支援を受けられるよう質の確保を担っています。

児童の個別活動や集団活動を通じてのリハビリ(言語、聴覚、摂食・嚥下分野)、行事の計画や運営、保護者へのフィードバックとアドバイスを行います。

児童発達支援事業所

児童発達支援事業所障害のある、未就学の子どもが身近な地域で発達支援を受けられる施設です。

業務内容は児童発達支援センターと同じですが、通所しやすいよう、できる限り身近な地域に多く設置し、量の拡大を図る意味で設けられているのが違いです。

放課後デイ

就学後~高校生までの障害や発達に特性のある子どもが、放課後や長期休暇に利用できる福祉サービス施設です。

授業やワークショップの運営と親御様との面談、学校の学習のサポート、個別の支援計画の立案などを行います。

教育関連

教育関連は、生徒に教える仕事がメインになります。

大学、専門学校の教員

これまでの臨床経験を生かして、専門領域科目やキャリア支援の授業担当、クラス担任や学生対応、学校行事、学生募集に関わるオープンキャンパスなどのイベント運営、相談対応などを行います。

一般企業

まだまだ数は多くありませんが、一般企業で働く選択肢もあります。

補聴器・人工内耳の営業

STの意外な職場が、補聴器や人工内耳関連の営業の業務です。

病院に訪問し、お客様に補聴器や耳鳴り治療器を販売します。補聴器販売店とのリレーション構築、各種提案 ・補聴器販売店への製品トレーニングの企画・実施などを行います。

2.働く場所はキャリアプランで考える

言語聴覚士(ST)の勤務先についてご紹介してきましたが、ここからは具体的な選び方について解説していきます。

5年後10年後のイメージが理想

どんな職場に勤めるかは5年後10年後に自分がどのような働き方をしたいか、なりたいST何かイメージして、そこから必要な経験を逆算して考えて選べることがベストです。

具体的な例をあげると、将来小児の言葉の教室を開くことを目標にしているのならば、小児の病院やクリニックで医学的な治療法やドクターと関われる環境で経験を積み、児童発達支援事業所で多くのお子さんや家族に触れ、実際に言葉の教室のベンチャー企業で立ち上げ方を学ぶ。というキャリアプランを計画することができます。

今やりたい仕事で考える

ですが、実際には明確なキャリアプランがない、興味のある分野や自分の向き不向きがわからない人がほとんどかと思います。キャリアプランから考えることが難しい場合は、今やりたい仕事という観点で職場を選び、面接対策に必要なキャリアプランは後付けするというやり方があります。

例であげると、高次脳機能のリハビリに興味がある場合、急性期・回復期のリハビリを行っている病院を選び、面接の際に、高次脳機能の知識を深めリハビリの経験をし、認定言語聴覚士の「失語・高次脳機能障害領域」を取得したいというキャリアプランを後付けする。という考え方があります。

やりがいを感じるリハビリから考える

また、別の観点から職場を決める方法として、やっていて嬉しい・楽しい・達成を感じたなど、これまでの仕事で得たポジティブな経験を思い出し、そうした経験が多そうな職場を選ぶ方法もあります。

「好き」という感情は強力で多少困難な出来事があっても集中して乗り越える力を発揮しやすいので、キャリアプランが特にないならば、やりがいから職場を決めことも良い方法だと言えます。

3.人を中心に職場を選ぶ方法もある

さらに、それでも施設選びやキャリアをベースに考えることが難しい場合は、患者様の年代や関わり方、勤務体制の理想を突き詰めていく方法があります。

小児に関わりたいのか?成人のリハビリが良いのか?重症の方のリハビリも経験したいのか?マイルドなリハビリ業務を行いたいのか?先輩のSTがいる職場なのか?そうした要望を転職エージェントに伝えることで、マッチしそうな職場を紹介してもらう方法もあります。

4.まとめ

言語聴覚士(ST)の職場は、病院だけではなく教育機関や一般企業まで様々にあります。そのため、どんな職場があるのか、興味のない分野まで視野を広げておくことが重要です。

その後で、自分のキャリアプラン、理想のST像、自分に合った働き方や職場の体制は何なのか考えて整理し、職場を探すことが満足度の高い就職をするために大切です。

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