言語聴覚士(ST)に興味がある、STを目指している、という方の中には、年収が低いって聞いたけど本当か、昇給はどうなっているのかなど、生活する上で大切な給料について気になっている方も多いのではないでしょうか。

今回は気になるけど、人には聞きにくいSTの給料事情についてまとめました。是非参考にしてみてください。

1.言語聴覚士(ST)の年収が安い6つの理由

一般的に「医療職」と聞くと安定していて給料も良いのでは?と考える方も多いかと思いますが、STについて調べてみると「給料が安い」という意見もみられます。

まずはSTの給料が安いとされている理由について主なものを6つご紹介していきます。

理由①.診療報酬制度の問題

医師や看護師が行う処置は内容や回数によって診療報酬が定められており、必要な処置を実施すれば加算されていき、施設としての売り上げになります。一方、STをはじめとしたリハビリは20分を1単位として時間で計算される仕組みになっています。

評価に必要な検査やリハビリの実施計画書などは、実施すればその都度加算されていきますが、通常の訓練の場合は、セラピストのうちの誰がどの訓練を行っても1単位で得られる報酬は一定で、施設としては収益性が低いということになります。

また、疾患などにより患者様の持ち時間(単位数)もそれぞれ決まっているため、時間をかければ利益に繋がるというわけではありません。ST自身も週に合計108単位までしか取得できないという規定があり、患者様の数が多かったり、介入する頻度が多くても最大108単位となり、それ以上の利益を出すことができません。

リハビリなどに関わる診療報酬は適宜改定されていますが、今後急激にリハビリの収益がアップする内容に変更される可能性は低いというのが現状です。

理由②.残業時間が少ない

STは患者様の障害の評価や個別もしくは集団リハを主に実施します。そのほかカンファレンスへの出席やカルテ・書類などの事務作業もありますが、診療報酬の項で触れたように、基本的には限られた時間でしかリハビリが実施できません。

そのため多くの場合、事務作業を含め終業時間内に仕事を終えることができ、残業時間での手当が得られる可能性は低いです。

理由③.夜勤手当がない

介護施設や一部の病院などで、朝食時間から介入する早番、夕食の時間に介入する遅番などが設定されている場合もありますが、基本的に患者様が寝ている夜間帯にSTが介入することはありません。

夜勤での出勤がないため、夜勤手当がつくこともなく、月々の給料アップにはなりません。

理由④.介入件数の少なさ

STは少しずつ必要性が高まってきているとは言え、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)に比べるとまだまだ、人材が足りていません。病院では人数に限らずPT・OT・STが揃っている施設が増えてきていますが、介護施設ではSTが介入していないことも多く見られます。

また、STはPTやOTのように骨折などの整形に関わる分野には携わっていないため、介入できる疾患も限られています。

介入できる件数が少ないということは訓練実施による収益だけでなく、検査等による算定加算も見込めませんので、STや施設の売り上げに繋がらず、STの給料としても増えることはありません。

理由⑤.施設経営の問題

これまでみてきたように、診療報酬や算定上限、残業などの手当の壁により、STは一定以上の利益を出すことが難しいとされており、検査等の加算などだけでは継続的かつ大幅な利益が見込めないため、STをはじめとしたリハビリ職の給料は上がりにくくなっています。

つまり、施設側からすると「リハビリ」は患者様のために必要な治療ですが、施設の利益としてはあまり稼ぐことができる職種ではないということになります。

理由⑥.若手スタッフが多い

STはPTやOTに比べても国家資格とされた時期が遅く、数の多い医師や看護師と比べても若手スタッフで構成されている場合も少なくありません。

特に比較的新しい施設では若いスタッフの比率が高く、経験年数も浅いため、年収が少ない傾向にあります。

2.言語聴覚士(ST)の収入と生活

令和3年賃金構造基本統計調査をもとにSTの年収についてまとめました。職種による違いや経験年数についても触れていますので、参考にしてみてください。

平均年収はそこまで低くない

令和3年賃金構造基本統計調査の統計データによると、STの平均年収は4,265,400円となっています(年収=残業代や交通費なども含む)。これをさらに月給と賞与に分けると、月給は296,000円であり、賞与が713,400円となります。

残業代を除いた年収は4,131,000円で、残業代や交通費などを含めた年収と大きな差がないことからも、1章で触れたように残業手当で得られる額が少ない可能性が高いことを示しています。

この統計データは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・視能訓練士と合算された年収データであり、STのみではありませんが、公開されている求人などの情報とも概ね一致しています。

国税庁の調査によるとサラリーマンの平均年収は約433万円ですので、それと比べるとSTの平均年収は若干低いですが、少なすぎるということはないでしょう。

参考までに、夜間など勤務時間による手当や急な入院患者の受け入れなどで残業時間が多くなりがちな看護師の場合、平均年収4,986,200円、残業を除くと4,605,800円となり、年間約38万円の手当が出ていることになります。

また、一般的に勤続年数が長くなれば年収も上がっていく傾向がありますが、その点はSTも同じです。参考として35~39歳のデータをまとめてみました。

経験年数月給賞与年収
1~4年268,400円640,800円3,861,600円
5~9年268,500円712,600円3,934,600円
10~14年287,700円766,200円4,218,600円
15年以上308,700円805,800円4,510,200円

STの生活水準は決して悪くない

令和2年の国民生活基礎調査によると、1世帯当たりの平均所得金額は564.3万円、中央値は440万円となっています。また、割合としては300~400万円未満が最も多く、平均所得金額以下の世帯は61.5%を占めています。

このデータの金額分類は100万円未満~2000万円以上と差が大きく、平均値以下の世帯の割合が6割を超えることからも平均値が高く出る傾向を示しています。STの平均年収である約426.5万円と比較してみると平均値には届きませんが、中央値に近い金額になっており、日本の平均所得から大きく外れているというわけではないことがわかります。

実際には税金と社会保険料が控除されるため、年収がそのまま手元に入るわけではなく、配偶者や子供など扶養者の数により、多少の変動があります。

年収420万円で単身者の場合、STは残業時間もそれほど多くないためプライベートも充実させつつ、貯金や自己投資などもしながら十分に暮らしていける金額です。

控除対象扶養親族が居る場合、税金の負担が軽減するため、手元に入る金額はわずかに増えが、ある程度広い家を借りる・買う(それに伴う住宅ローンの発生)、食費や光熱費など生活費、教育費などの出費も多くなるため、節約や共働きと言った家計のバランスを考慮した生活が必要となるでしょう。

ただ、複数人で暮らす際の出費増については他の職種で働く方にも当てはまるため、年収420万円程度であれば裕福とは言えないながら、ある程度の貯金もしつつ、暮らしていける金額と言えるのではないでしょうか。

3.言語聴覚士(ST)が年収を上げる方法

STが年収を上げる方法としては「勤続年数を伸ばす(定期昇給)」「資格取得や安定した業務で評価をあげる(査定昇給)」「主任などに昇進する(昇格昇給)」「転職する」の5つが挙げられます。

定期昇給や昇格昇給は施設ごとに定められた条件や勤続年数・経験年数による部分が大きく、短期間での年収アップは難しいと考えられます。効率よく昇給を望むのであれば、経験年数を重ねるだけでなく、査定昇給をうまく活用し、認定言語聴覚士の資格を取得するなど自身のスキルアップをはかることも昇給への近道となります。

また、経験年数が浅くても年収アップを狙うのであれば、転職することもひとつの手です。昇給の有無や昇給額は施設によって差が大きく、昇給額が低い職場では長年勤めても年収は増えにくい傾向があります。

現状だけでなく、将来的に自分の希望条件に至らないのであれば、給与の高い、あるいは手当、ボーナスなどの条件が良い職場に転職することも検討しましょう。

PTOT人材バンクは年収を考慮した上での転職サポートも行っておりますので、キャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

年収アップが可能か気になりませんか

4.まとめ

今回は言語聴覚士(ST)の給料事情と年収についてご紹介しました。診療報酬制度によるリハビリ収益化の難しさや施設により大きく異なる昇給制度の違いなどがあり、STの年収は伸び悩んでいるのが現状です。

今後STがさらに活躍の場を広げ、認知度や必要性が高まっていくことで年収が上がっていく可能性もあります。

また、STとして年収アップするためには、自身のスキルアップと自身の希望条件に合った施設選びが重要になります。スキルアップはより良いリハビリの提供や今後の昇進や転職などにも繋がりますので、機会があれば積極的にチャレンジしていくことをおすすめします。

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言語聴覚士_退職金

【参照サイト】
令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 10 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
2021年国民生活基礎調査の概況 II各種世帯の所得等の状況