言語聴覚士(ST)が就職や転職の際に、自分に合った施設を見つけるためのポイントとなるのが施設見学です。施設の雰囲気やその施設で活躍しているSTを実際に自分の目で確かめることで、自身が働いているイメージがしやすくなり、就職先を選択する手がかりになります。

この記事では、STの施設見学の流れや施設の選び方、注意しておきたい見学時のマナーについて解説します。貴重な機会を十分に活かせるよう、参考にしてみてください。

1.施設見学の流れ

施設見学は教員引率のもと学校単位で行く場合を除き、就職・転職を意識したイベントであることが多くあります。そのため、その後の面接を意識した立ち居振る舞いや、見学先の施設や職員に対して失礼のないよう、見学前の下準備や見学中の配慮が必要になります。

おおまかな施設見学の流れは以下の通りです。

見学前①見学希望施設の決定 ②施設責任者から見学希望許可を得る、日時の調整 ③施設について興味のある事柄等をメモにまとめ、下準備をする
見学日当日①施設責任者と見学現場の職員に挨拶をする ②施設職員の妨げにならないよう、指示に従い見学させてもらう
見学終了後①質問や確認事項等があれば、このタイミングで確認しておく ②お世話になった職員と施設責任者にお礼を伝え、速やかに退出する
見学後1週間以内見学のお礼の手紙やメールを送る

施設見学は施設に見学の許可を得ることから始めます。多くの場合は施設ホームページや求人サイトに見学についての記載があるため、記載内容に沿って予約を行います。特に記載がない場合には、学生であれば学内の就活センターや教授からの紹介、就業中であれば直接電話やメールで見学の可否を確認します。

施設によっては見学と面接を兼ねており、見学後に面接に移行するケースもありますので、予約時にはおおまかな見学の流れや履歴書など必要書類についても確認しておくと良いでしょう。

見学の日時が決まったら、事前に確認しておきたいことや質問内容をまとめる、見学時のチェックリストを作成するなど、見学前の準備を行います。事前準備をしておくと、時間を有効に活用でき、複数の施設を見学した場合にもチェックポイントの比較検討がしやすくなります。

見学当日は施設を見学させていただいていると同時に、施設側も見学者がどのような人物かチェックしていますので、施設職員への挨拶をはじめ、見学時の態度に注意し、指示を無視した勝手な行動は慎みましょう。

見学終了後は口頭で見学のお礼を伝え、その後の仕事の妨げにならないよう速やかに退出しましょう。また1週間以内に、見学によって得られた気付きや就職への熱意などを添えたお礼状を出すと好印象です。お礼状はメールでも構いませんが、手書きの書面の方が感謝の気持ちが伝わりやすく、印象にも残ります。

2.施設見学をする際のポイント

施設見学は実際に施設で活躍する言語聴覚士(ST)を見学できる数少ない機会です。限られた時間の中で、十分な情報が得られるよう、しっかりとポイントを抑えて挑みましょう。以下に施設選びと見学時のポイントについてまとめました。

①.施設選びは方向性を意識する

見学する施設選びの際には、就職・転職することを視野に入れた検討が大切です。STとして何がしたいか、自身がどう働きたいかなども合せて考えておくと良いでしょう。

希望する分野で選ぶ

選び方として一番多いのは自身が希望する分野から施設を検討する方法です。STは小児中心の施設、成人中心の施設、聴覚系の施設、介護系施設、教育系施設など、メインとして扱う年齢層や専門の分野で施設が分かれています。

就職を見据えて、興味のある分野の施設を見学先に選ぶことで、実際の仕事内容について把握できるため、自分が考えているイメージと実際のSTの仕事のイメージの相違が少なくなります。

将来的なST像として、特定の分野に限らず全般的にみれるようになりたい場合には、設備が整っており、患者数も多い大学病院のような大規模施設の見学がおすすめです。

職場環境で選ぶ

すでに大まかな分野が決まっている、という場合には、その施設が力を入れていることや、STが所属しているリハビリテーション科の傾向など、もう少し細かい部分に目を向けて検討することをおすすめします。

病院では施設のホームページを見ると、病院概要にMRIやCTなど所有している主要機器や設備について記載されていたり、リハビリ部門の紹介にSTが積極的に取り組んでいるテーマについて記載されています。

力を入れているということは、その疾患を扱う症例が多く、先輩STの経験も豊富ですので、より実践的な知識を学ぶことができる施設と言えます。

直接STが使用する機器ではなくても、様々な最新の検査機器が揃っており、十分な検査データを得ることができる環境は大規模病院ならではの特色です。逆に、介護施設など検査機器がない施設や小規模施設では限られた情報で評価やリハビリを進めていく工夫を学ぶことができます。

自身がどのような環境で働きたいのか、その施設についての細かい情報を得てから見学先を選ぶと良いでしょう。

将来性で選ぶ

STのリハビリについて実践的に学ぶということになると、病院が第一の候補に挙がります。様々な疾患を診ることができ、学会への発表や勉強会への参加実績など、学習環境も整っていることが多く、初めは病院を選ぶという方も多いのではないでしょうか。

しかし、近年のSTが介護や教育など活躍の場を広げていることを考えると、これらの分野ではSTとしての伸びしろも未知数ですので、病院以外の施設に目を向けて見学先を選ぶのも一つの手です。

②.見学時はリハビリ体制や働き方が大事

見学の際には職員からの説明を聞きながら、限られた時間で進められていきます。時間を有効活用できるよう、確認したいポイントを事前にメモするなど用意しておきましょう。

リハビリ室の規模・設備

所属するスタッフのだいたいの人数や、実際にリハビリを行う場所の広さ・環境はもちろん、電子カルテなど使用する機器の充足度、スタッフルームの環境などは働く際の満足度に大きな影響があります。

STは評価の際に様々な検査キットを使用したり、絵・文字カードやアイススティックなど道具を使用したリハビリも多く行いますので、これらが十分に揃っているか、自分で用意するのかもチェックしておきたいポイントです。

職場・職員の雰囲気

STとして働く上で、仕事のやりやすさを左右する重要な鍵を握るのが人間関係です。リハビリは理学療法士(PT)や作業療法士(OT)をはじめ、医師や看護師など様々な職種との連携が大切な仕事です。

そのため、上司・部下という立場や職種に関係なく、声掛けがしやすい雰囲気の職場のほうが、円滑にリハビリに関する情報を共有することができます。

短時間の見学だけでは十分に把握することは難しいかもしれませんが、職員同士の挨拶や会話の雰囲気、スタッフルームの環境はどうかなど、雰囲気を感じておくことが大事です。

自身の譲れないポイントを明確にしておく

検査機器やリハビリに使用する用具の充実度や症例数、職場の人間関係など、自身が優先したいポイントがあると、見学の際に施設そのものをメインに見るか、働いている職員をメインに見るか視点が定まります。

施設見学の先の就職を考えて、自分がやりたいこと、求めるリハビリ環境などを明確にしておくと良いでしょう。

3.施設見学で抑えておきたいマナー

実際に施設見学する際には、最低限のマナーや施設ごとのルールを守る必要があります。これらを怠ると、見学先の施設に迷惑がかかったり、あなたが所属する学校や施設の評価が下がることに繋がりますので注意しましょう。

服装

服装はあなたの第一印象にも直結する重要なポイントです。きちんと感や清潔感を重視し、スーツの着用をおすすめします。急な見学などスーツの用意が難しい場合でも、シャツやジャケットの着用など、できるだけ清潔感のある服装を選ぶようにしましょう。

言語聴覚士(ST)は病院や介護施設などが主たる職場であり、衛生面に配慮が必要な職種ですので、髪型やメイク、爪などの清潔感もとても重要です。ささいなことですが、しっかりチェックしておきましょう。

挨拶、言葉遣い、コミュニケーション態度

どこの施設でも挨拶をすることは基本中の基本です。見学の始まりと最後に行う挨拶はもちろん、部屋に入る際や施設内ですれちがう職員への挨拶などにも気を配ると良いでしょう。

言葉遣いに関しては基本的な敬語を使えるようであれば問題ありません。無理に難しい言葉を使う必要はありませんが、状況に応じて適切な言葉選びができるよう、日ごろから気をつけておきましょう。

また、STはリハビリ職の中でもコミュニケーションを専門とし、言葉を扱うリハビリを行う仕事です。見学中にSTとしての資質を見られている場合もありますので、会話するときには相手の目を見て話したり、自分から質問したりするなど積極的にコミュニケーションをとることを意識してみましょう。

時間管理

見学をお願いしている立場として、時間を守ることも最低限のマナーです。忙しい勤務時間を割いて見学させていただくため、到着時間に遅れないようにするほか、見学の予定時間を著しく遅延させたりすることのないよう、指示に従って見学しましょう。

見学はあくまでも施設や臨床の場を見せてもらうことですので、勝手に患者様に声をかけたり、担当者の指示なく介入することも、相手に迷惑がかかったり、見学時間の遅延に繋がりますので避けましょう。

施設ごとのルールにもよりますが、質問がある場合にはメモなどにまとめておき、見学終了後、できるだけ手短に済ませられるように用意しておきましょう。

4.まとめ

今回は言語聴覚士(ST)の施設見学の流れや施設の選び方、注意しておきたい見学時のマナーについて解説しました。

施設見学はSTとして施設で働くのであれば、多くの人が経験するイベントです。これをきっかけに自身の希望する進路が見えてきたり、実際に就職に繋がるということも多いため、ポイントを抑えて、社会人として恥ずかしくない振る舞いをしておきましょう。

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