新卒や経験の浅い言語聴覚士(ST)に人気の職場である病院ですが、具体的な勤務イメージができず忙しそう・厳しそうといったイメージで不安を感じてしまう方は少なくありません。

急性期病院や回復期病院、脳外科、循環器科、内科など病院の種類や個別の病院で特色は異なりますが、今回は一般的な総合病院を例に一日の業務や年収や給料、病院勤務のメリットデメリットをご紹介します。

病院勤務がどういったものか気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.病院勤務の言語聴覚士(ST)の1日

STの病院勤務は、朝礼、午前のリハビリ業務、昼食の摂食・嚥下リハビリ、午後のリハビリ業務、カルテや報告書などの書類業務、帰宅が一般的な流れです。場合によっては遅番業務や勉強会の参加、リハビリ教材の準備があります。

朝礼では、リハビリ科全体や言語聴覚部門で伝達事項や新しい患者様や注意が必要な患者様など情報共有を行います。

その後、病棟を回って寝たきりの方はベッドサイドで20分、車椅子に乗れる患者様は40~60分リハビリ室や言語療法室で言語訓練を行います。一日当たり5~8人ほどリハビリを行うことが多いようです。

お昼休みは休憩することもあれば、昼食で摂食・嚥下の機能評価や訓練を行います。禁食だった患者様が食事を開始するときや、食事形態を変更するときに介入することが多いです。休み時間がほかのスタッフとずれることもしばしば。

午後のリハビリ業務の後は、当日リハビリした方の経過記録や、退院にともなう報告書の作成など事務作業を行います。病院勤務は365日体制のことが多く、休日の前は自分の担当患者様の申し送り業務もあります。

時間イメージ業務
08:30~09:00出勤+準備
09:00~09:15リハビリテーション科ミーティング
09:15~09:30言語聴覚部門ミーティング
09:30~12:00リハビリ業務
12:00〜13:00摂食・嚥下機能評価
13:00~14:00お昼休憩
14:00~17:00リハビリ業務
17:00~18:00書類業務+終業

場合によってはこの後に、勉強会や研修、遅番がある病院では夕食の嚥下評価・訓練をすることもあり、月に数日は定時で退社することは難しい日があります。

2.年収や給料の仕組み

次に気になる年収や給料について見ていきましょう。

年収の平均は、役職の有無によって390~408万円

言語聴覚士(ST)の給料は政府統計ポータルサイトで調べることができます。

統計調査上、理学療法士・作業療法士・視機能訓練士との合算の数字にはなりますが、令和2年に公表された賃金構造基本統計調査によると、10人以上の事業所の役職者を除く平均年収は390.9万円で、役職者を含むと408.5万円です。
※役職を除いた母数は20,510人、含めた母数は23,272人

ちなみに、この年収には残業手当などの超過労働給与(所定外給与)は含まれておらず、基本給・職務手当、通勤手当、住宅手当、家族手当などが含まれています。

また、病院以外の施設で働く方の年収も含まれていますが、日本言語聴覚士協会によると、2021年3月時点で所属しているSTの71.7%が医療機関で働いていることから、こちらの給料と病院勤務での給与は大差ないと言えるでしょう。

病院勤務の給料は上限が決まっている

病院で働く場合、言語聴覚士の給与は大幅なUPは正直難しいのが現実です。なぜなら病院の売上は「医療費」であり、診療報酬という形で政府が全国一律の公的価格を細かく設定しているからです。

病院が自分で金額を決定することができないことに加え、一人のSTが提供できるリハの回数や患者様・症状に応じたリハビリ回数にも上限が設けられているため、一般企業のように努力で売上や利益を増やし続けることは困難と言えます。

また、高齢化で国民医療費は増加傾向にあり、国家予算の約半分まで膨張しています。国としてはどうにかして医療費を圧縮したい状態でもあるので、財源から見ても医療職の給料UPは難しいと考えられます。

年収UPは昇進か他業種への転職

STが年収をUPするには、昇進するか他業種へ転職するか方法が分かれます。

一つの職場で実績を積み上げ管理職へ昇進していき役職手当を得られるようになれば年収UPが見込めます。

先ほどご紹介した賃金構造基本統計調査によると、役職者を除いた月給は約27万円であるのに対し、役職者を含めると約28万円と1万円程度UPしています。この統計では、20,510人が役職なし、2,762人が役職ありですので、人によっては大きく年収が上がっていることがわかります。

ただ、役職による給料UPはその役職と病院で大きく左右されるので注意が必要です。例えば、私が以前勤めていた職場では、主任などの中堅職への役職UPは月給数千円UP程度でした。

もう一方の転職で年収UPを狙う場合は、訪問リハビリの事業所や、介護保険施設の立ち上げ業務が比較的給与が高く設定されているので狙い目です。

また、同じ病院勤務でも経験年数や実績があれば基本給の高いところへ転職することも可能です。特に首都圏の病院や医療施設は比較的給料が高い傾向にあります。

ご希望の条件に合った転職先が見つかるように、しっかりとお手伝いさせて頂きますので、お悩みの際はPTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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3.言語聴覚士(ST)が病院勤務する魅力

ここからは、なぜ経験の浅いSTに病院勤務がすすめられるのか、その理由を解説していきます。

医療行為を学べる

病院勤務することの魅力は、医療行為を実際に見ることができ危機管理や患者様の医療的な対応が学べることです。リハビリだけではなく、何がリスクなのか、顔色やバイタルサインの変動の重要性や、医師や看護師が何を大事にしているのか肌感覚で知ることができます。

この経験は、在宅や介護保険施設の現場でも生きることが多く、「この薬を飲んでいる人は、血圧の上下に気を付けよう」「点滴が増えたから水分量や栄養状態に何か問題が出たかな?」「この症状があるのは怪しいからドクターに報告しよう」など患者様の周辺情報から状態悪化をさせないセンサーのような感覚を身に着けることができます。

数多くのスタッフと関わる

病院勤務のもう一つの魅力は、チーム医療を学べることです。さまざまな科の患者様をリハ科で担当することから、医師や看護師、介護士、医療ソーシャルワーカー、栄養士など、多種職と連携して患者様の回復に携わります。

看護師や介護士とは、患者様の健康状態や生活の様子の情報交換、ドクターや医療ソーシャルワーカーとはリハビリの進捗や予後の見立てを話し合い、入院期間や方向性の相談をしたりします。こうした連携も医療機関ならではと言えるでしょう。

STは病院勤務から始める人が多い

5年以上の経験があると、やりがいのある分野をベースに自身にあった勤務先を選ぶことが多いのですが、まだ自分のやりたいことやキャリアプランが定まっていない新卒や経験の浅いSTの方は病院業務から始めることが多いです。

前述の通り近くに医師がおり、勉強会などを通して、知識やスキルを高められる環境は、新卒や経験の浅いSTにとって理想的ともいえるからです。

4.まとめ

病院勤務は医療行為の現場での学びや、チーム医療を通して多種職との連携を経験できるので転職しても有益なスキルを身に着けることができる魅力的な職場です。

今後の言語聴覚士(ST)としての展望や得意不得意が分からない時も、患者様と触れる機会が多く自分の方向性を見つけやすい環境です。

時間外の勉強会や書類業務もあり、休みがシフト制な職場が多いので、プライベートや体調との折り合いに工夫が必要な職場なので、自分に合うかどうかよく考えることが大切です。

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【参照サイト】
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賃金構造基本統計調査 / 令和2年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) / 一般労働者 / 職種(3 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
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