言語聴覚士(ST)は言葉やコミュニケーションと摂食・嚥下に関する専門職です。毎年新しいSTが誕生していますが、各協会の情報によると理学療法士(PT)や作業療法士(OT)に比べるとまだまだ少なく、現場では人手が足りていない状況です。
STになるためには養成校で必要な課程を修了し、毎年2月頃に実施される国家試験に合格しなければなりません。この試験に合格するためには試験について十分に理解し、対策を徹底することが重要です。
今回はSTの国家試験について、受験方法や試験内容、勉強方法、合格率など詳しく解説します。
目次
1.言語聴覚士(ST)の国家試験を受ける方法
言語聴覚士国家試験の受験資格を得るためには、法律で定められた養成課程を修了する必要があります。
最短のルートとしては高校卒業後に、文部科学大臣が指定する学校(3~4年制の大学・短大)または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所(3~4年制の専修学校)を卒業するルートが挙げられます。
一般の4 年制大学卒業者の場合は、文部科学大臣が指定する大学・大学院の専攻科または専修学校(2年制)を卒業することで受験資格が得られます。
そのほかSTの養成に関わる一定基準の科目をすでに習得している者を対象とした指定校(1年制)もあります。また、外国で言語聴覚士に関する学業を修めた者の場合は、厚生労働大臣の認定が得られれば受験資格が取得できます。
2.言語聴覚士(ST)の国家試験の内容と勉強方法
国家試験は厚生労働省から試験の概要が発表されたのち、願書の提出など学校の受験と同様の流れで受験の準備を進めていきます。
願書提出の際に必要となる書類の用意や受験手数料の振り込みなど重要な手続きがありますので、事前に確認しておかなければなりません。また出題される科目数も多いため、学校の課題など平行しながら効率よく勉強を進めていく必要があります。
それでは具体的に見ていきましょう。
国家試験の試験内容
言語聴覚士国家試験は、1年に1回実施されます。例年、9月上旬に厚生労働省から試験の概要が発表され、11月下旬~12月上旬に願書提出、2月中旬に試験、3月下旬に合格発表というスケジュールになっています。
直近の2023年では2月18日に試験が、3月24日に合格発表が行われ、試験地は北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県及び広島県でした。
試験科目は以下の通りです。
基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学及び聴覚障害学
これら12科目の中から基礎科目100問、専門科目100問の計2 00問、マークシート形式の5択で出題され、採点は1問1点の200点満点です。試験時間は午前と午後それぞれ150分ずつとなります。
受験にあたっては、11月下旬~12月初旬の指定期間内に、必要書類(願書、証明写真、卒業見込証明書など)を公益財団法人医療研修推進財団に書留で郵送し、受験手数料34,000円を振り込む必要があります。
願書の氏名は戸籍に記載されている文字で記入する必要があるため、確認が出来るよう事前に用意しておくなど余裕をもって準備しておきましょう。
国家試験の勉強方法
国家試験の勉強は問題量の配分や出題傾向を分析し、自分の得意分野と苦手分野も考慮しながら効率よく進めていくことが重要です。また、通常の試験のように新たな知識を覚えるのではなく、これまでに勉強してきた内容を整理し、関連づけて理解していくことがポイントになります。
各科目の問題配分や出題傾向の分析は毎年、過去問題解説集が発刊されていますのでこちらを使用して行います。
問題配分は問題の1~200番までどの科目に当てはまるのか確認し、それぞれの問題数の割合を、各科目の勉強時間の配分の目安にします。
出題科目は12科目となっていますが、細かく見ていくとかなりの数になります。出題される問題は科目によって異なり、出題数の少ない科目は例年1~2問程度なのに対し、出題数の多い科目は7~8問程度になるためしっかり押さえておきたいポイントになります。
基礎科目 | 医学総論、解剖学、生理学、病理学、内科学、小児科学、精神医学、リハビリテーション医学、耳鼻咽喉科学、臨床神経学、形成外科学、臨床歯科医学、口腔外科学、臨床心理学、認知・学習心理学、心理測定法、生涯発達心理学、言語学、音声学、言語発達学、音響学、聴覚心理学、社会福祉・教育学 |
専門科目 | 言語聴覚障害学総論、失語症、高次脳機能障害、言語発達障害、摂食嚥下障害、音声障害、構音障害、吃音、聴覚障害 |
出題数の少ない科目 | 病理学、生理学、リハビリテーション医学、吃音など |
出題数の多い科目 | 小児科学、精神医学、耳鼻咽喉科学、形成外科学、臨床歯科学、口腔外科学、臨床心理学、認知・学習心理学、生涯発達心理学、言語発達学、失語症、高次脳機能障害、言語発達障害、摂食・嚥下障害、構音障害、聴覚障害など |
出題傾向は、問題の科目を分類したのちに、よく出てきているキーワード(単語や疾患名、出題の仕方など)を見ていきます。また、毎年出題者も発表されていますので、それぞれの先生の専門分野や、書籍なども押さえておくと良いでしょう。
出題科目は幅広いですが、小児系や口腔系、心理系、脳神経系、聴覚系のように系統立てて分類すると重複する範囲を効率よく進められたり、疾患の発生機序や病態・障害などと関連付けて学習しやすく、全体像の理解や学習の効率アップにも繋がります。
その年に話題になった疾患や治療法など等にも触れてくる場合があるため、医療に関係するニュースもチェックしておきましょう。
3.2023年の国家試験の日程と今年の合格率
例年2月中旬に試験、3月下旬に合格発表となる言語聴覚士国家試験ですが、気になる2023年の国家試験日程と今年の合格率についてみていきましょう。
2023年2月18日が試験日
2023年は2月18日に北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県及び福岡県の会場にて試験実施、合格発表は3月24日に、厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページ及び公益財団法人医療研修推進財団ホームページにて、発表されました。
事前に受験票で試験会場や入室時間を確認し、電車の遅延などにも対応出来るよう交通手段を検討しておきましょう。遠方の場合には試験会場近くに宿泊するなど余裕をもって試験を受けられるようにしましょう。
2023年は合格率67.4%
2023年の言語聴覚士国家試験の受験者数は2,515名で、合格者数は1,696名、合格率は67.4%で、2021年の69.4%、2022年の75.0%に比べると下降傾向となりました。
4.言語聴覚士(ST)の国家試験のボーダーライン
言語聴覚士国家試験は前述のように12科目からの出題、基礎科目100問と専門科目100問の全200問で構成され、1問1点で採点されます。基本的には6割となる120点が合格基準となっています。
難解な出題や不適切問題(解なしや複数正解)となる問題、マークミスをする可能性を考え、模擬試験の段階で過去問から出題される試験は正答率9~10割、養成校の先生が作成する模擬試験では7~8割程度とれる実力をつけておくと安心でしょう。
国家試験本番で最も重要なことは120点以上の合格点を取ることです。そのためには難しい問題や悩む問題にあたっても初めから時間をかけず、まずは最後の問題まで目を通し、確実に取れる1点を積み重ねていくことが大切です。
5.まとめ
今回は言語聴覚士国家試験の内容や勉強方法などについてご紹介しました。理学療法士や作業療法士に比べると合格率が低く、難しい印象ですが、出題内容は基礎がしっかりしていれば、十分に合格を狙うことが出来ます。
本格的に国家試験対策を始める時期は実習の時期とも重なりやすく、学校の課題や試験もあるため、なかなか集中しにくいとは思いますが、授業や復習をベースに、早い段階からコツコツと進めていくことが合格への近道です。
試験直前には日程や会場なども十分に確認し、余裕をもって当日を迎えられるよう、事前に準備して国家試験に臨みましょう。
不明点があれば、是非PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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言語聴覚士(ST)を目指す方におすすめの記事をご紹介。
【参照サイト】
日本言語聴覚士協会 言語聴覚士数の推移
日本理学療法士協会 国家試験合格者の推移
日本作業療法士協会 統計情報 日本作業療法士協会会員統計資料
厚生労働省 言語聴覚士国家試験の施行
厚生労働省 第25回言語聴覚士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第25回言語聴覚士国家試験合格速報
厚生労働省 第24回言語聴覚士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第23回言語聴覚士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
目指せST(言語聴覚士) ST(言語聴覚士)になるにはどうしたらいいの?