現在学生の方はもちろん、社会人や主婦で、資格を取って手に職を持ちたい方の中には、言語聴覚士(ST)を検討している方も多いのではないでしょうか。

言語聴覚士は、働きながらでも資格取得可能ですが、実習と国家試験の受験が必須となるため、養成校選びが重要です。

この記事では、STの有資格者が、STを目指すために必要な学歴、学費、よくある疑問、働きながらSTになる方法、国家試験の難易度、学生のうちに覚えておくと良いことなどについてお伝えしますので、参考にしてください。

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1.言語聴覚士(ST)とは

STとは、生まれつきの障害や脳血管障害による後遺症で言葉がうまく話せない、コミュニケーションがとれない、食事ができないなど、言語(聞く、話す、読む、書く)や摂食嚥下(食べる)に問題がある患者様を対象に評価・リハビリを実施し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。

また、患者様本人だけでなく、他職種やご家族が円滑なコミュニケーションをとれるよう、評価から得られた伝わりやすい声掛けの仕方や苦手なことなどを伝達、共有していく役割も担っています。

施設によっては高次脳機能という注意や思考、認知など脳の働きに関わる評価もSTが担当しており、リハビリの方針や予後を検討する上で重要な職種です。

成人領域におけるSTの活躍の場は、病院などの医療施設を中心に介護老人保健施設や障害者福祉施設のような保健・福祉施設、補聴器や人工内耳を扱うメーカーなど多岐にわたります。

小児領域では、小児を対象とした病院のほか、療育施設、ことばの教室などで活躍しており、ことばの遅れや構音障害、吃音などの言語発達障害と自閉症や学習障害など発達障害のある子供に対して発達の評価や発達を手助けするような助言・訓練も行います。
(出典:日本言語聴覚士協会 言語聴覚士とは

2.言語聴覚士(ST)になるには最短何年?必要な学歴

日本言語聴覚士協会には、STになる方法として次のような記載があります。

言語聴覚士になるは、法律に定められた教育課程を経て国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。

言語聴覚士学会 言語聴覚士になるには

つまり、高校卒業者であれば目指すことができます(中卒なら高卒認定からスタート)。

STを目指す主なルートは以下2つとなり、4 年制大学卒業者の場合は最短2年です。同じリハビリ職である理学療法士(PT)や作業療法士(OT)は最短でも3年かかるため、PTやOTと迷われている大卒社会人の方におすすめです。

  • 高校卒業者の場合:文部科学大臣が指定する学校(3~4年制の大学・短大)または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所(3~4年制の専修学校)​ 
  • 4 年制大学卒業者の場合:指定された大学・大学院の専攻科または専修学校(2年制)を卒業​ 

以上が一般的なルートですが、言語聴覚士の養成に必要な一定の基準科目をすでに修得している方を対象とした1年制の指定校も存在します。また、海外で言語聴覚士に関する学位を取得した方は、厚生労働大臣の認定を受けることで受験資格を得ることが可能です。

現在、日本で1年制の学校として認められているのは、大和大学白鳳短期大学部のみです。興味がある方は以下を参照ください。
大和大学白鳳短期大学

(出典:厚生労働省 言語聴覚士法 第三十三条 (受験資格)

3.言語聴覚士(ST)になるための各養成校の特徴

養成校によって特徴は違いますが、言語や聴覚分野をはじめとして、解剖学・生理学・失語症・構音障害・摂食絵嚥下機能障害・発達障害・吃音・言語学・神経心理検査など様々な分野について学ぶことは共通しています。

座学で基本的な知識を身に着け、学生同士の練習で適切な評価方法や手順を学び、4年生大学では2~3年生で数日~数週間。4年生のときは約1か月の実習を病院や老人保健施設で行い、単位を取得します。

座学だけではなく、実際にオージオメーターを使った聴力測定の練習や、WABやSLTAなど失語症の検査や、コース立方体テストやRBMTなど知能や記憶など高次脳機能検査など、現場で使う具体的な技術の習得も並行していきます。

また、大学の場合は卒業の前には自分でテーマを決めて卒業論文の作成や発表もあります。

ここからは、各学校の特徴と、どんな人におすすめなのかをみていきましょう。

短期大学:忙しいが早く就職できる

短期大学は、4年制大学よりも早く資格を取得し働き始めることが大きなメリットです。その分、勉強や実習のスケジュールが詰まっており、駆け足で勉強をする必要がありますが、集中して学べる環境が整っています。そのため、早く就職したい人、学生時代は勉強に集中できる人にはおすすめです。

人によってスケジュールの感じ方に違いはあると思いますが、アルバイトと両立する生活や、長期で旅行にいくことは4年制大学より大変かもしれません。

大学:丁寧に学びやすく、勉強以外の経験を積める

大学で学ぶ魅力は、一般教養も身に着けながらSTの勉強ができることです。大学にもよりますが、他学科との交流機会が短大や専門学校よりも多いので、サークル行事なども体験でき、卒業時には「学士」という大卒の肩書も手に入れることができます。

4年間の時間をかけて学ぶため、理解が追い付かなかったところの復習や、一歩踏み込んだ勉強がしやすい環境ですが、集中して取り組みたい人や少しでも早く働きたい人には物足りないかもしれません。慌てずにしっかり勉強をしたい人や、一般教養も身に着けたい人、大学時代にST分野以外にも経験値を積みたい人におすすめです。

専門学校:実習やカリキュラムが充実

専門学校は大学とは異なり、習得したい知識や技術を専門的に学ぶ学校です。そのため、STとは関係ない一般教養などは学べませんが、より専門性に特化して学ぶことができます。

専門学校によって特徴や魅力は異なりますが、実際に患者様と適切にコミュニケーションができるよう実習に備えたトレーニングができるカリキュラムがある、小児の臨床現場を提携先で抱えているなどの学校もあります。

専門学校には3年制と4年制がありますが、卒業までに取得する単位は変わりません。違いは学習や実習のスケジュールが3年間に凝縮されているか、4年間に分散されているかです。

3年制は、1年分学費が安く抑えられ、早く就職することができます。そのかわり忙しく、授業のスピードも速いです。4年制は3年制と比べると余裕をもって学習できるので、自分のペースで知識を身に付けやすいといえます。

2年制大学・専門学校(4年制大卒者向け)

4年制大学を卒業後に進路を変えたい方や、社会人や主婦からSTを目指す方におすすめです。

短大や専門学校同様、2年間で学科や実習の単位を取得するため、学業だけでも多忙です。ただし、大卒2年制で学ぶ方は資格取得意欲が高い人が多く、モチベーションが高い環境で学べるのが魅力の一つです。

4.働きながら言語聴覚士(ST)を目指すには?

働きながらSTを目指す場合には、昼夜間部・夜間部がある養成校に通う選択肢もあります。全国的に学校数が少なく、2024年現在夜間部の募集はなく、昼夜間部も3校のみとなっています。

昼夜間部は、平日は夜間、土曜日は昼間に受講するため、働きながら最短2年でSTを目指せますが、受験資格の条件は4年制大卒者であることです。

昼夜間部・夜間部でも、実習は昼間に実施されるため、実習期間中は仕事の調整が必要な場合があります。また、授業時間が限られている分、課題も多くなるため勉強時間の確保など注意が必要です。

住んでいる都道府県で養成校を探したい場合は、日本言語聴覚士協会の公式サイトを活用しましょう。通学時間帯や卒業見込みの学年に応じて検索できるため、自分に合った養成校を見つけることができます。
日本言語聴覚士協会 養成校検索

5.社会人や主婦が言語聴覚士(ST)になるには?

社会人や主婦がSTを目指す場合、事前に確認すべきポイントはいくつかありますが、養成校選びは特に重要です。

各養成校の特徴はお伝えしましたが、どの養成校を選ぶかは、STの資格取得だけを目的にするか、幅広い知識を学び直したいかで判断するとよいでしょう。

効率を考えると2年制大学や専門学校を選びたいところですが、学校数が少なく、通学できる範囲に学校がない可能性や、1年間で学ぶ知識量が多いため、学習面の負担が大きくなる点には注意が必要です。特に実習期間中に遠方まで通勤する場合などは、周囲の方々のサポートが必要になる場合もあります。

育児や介護との両立が必要な場合には、オープンキャンパスなどで実際に通学されている社会人や主婦学生の方にヒアリングして、判断軸を増やすのもよいかもしれません。

6.通信教育だけで資格取得できる?

STの国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣が指定する学校、あるいは都道府県知事が指定した養成所を卒業する必要があるため、通信教育での資格取得はできません。

また、国家試験の受験資格を得るためには、決められたカリキュラムの履修や、病院や施設での実習が必要であるため、通信教育だけではカバーできない部分が多くあります。

養成校で授業を行う講師は臨床経験が豊富なSTの先輩でもあります。STは活躍の場が幅広く、進路も様々ですので、受験資格を得る目的だけでなく、適切なアドバイスを受けながら、進路について考える大切な期間と言えます。

7.学費はどれぐらいかかる?

授業料ベースでみてみると、4年制大学の場合、私立で年間150万円程度、国公立で年間約50万円程度、3年制短期大学では年間約130万円程度、専門学校は年間約120万円程度、昼夜間は100万円程度とされています。

どの養成校を選んでも授業料以外に入学金や教材費、実習費、施設利用料などで50~70万円程度の費用が必要となります。

学費については以下でも触れています。学費も含めどの養成校を選べばよいか詳しく知りたい方は、参考にしてください。
言語聴覚士を目指す大学と専門学校の違い・学費・2年制の実情

8.言語聴覚士(ST)の国家試験合格率

STの国家試験合格率に話を移していきます。過去5年間のデータから傾向を確認します。

過去5年間のST国家試験合格率の推移

過去5年 言語聴覚士国家試験 受験者数・合格者数・合格率の推移

年/回受験者数(名)合格者(名)合格率
2024年(第26回)2,4311,76172.4%
2023年(第25回)2,5151,69667.4%
2022年(第24回)2,5931,94575.0%
2021年(第23回)2,5461,76669.4%
2020年(第22回)2,4861,62665.4%
(出典:厚生労働省 第26回言語聴覚士国家試験の合格発表について第25回第24回第23回第22回

国家試験の難易度は年によって異なるため合格率に幅がみられますが、過去5年では、毎年受験者数は2500名前後で合格率は65.4~75.0%、合格率は約7割です。

各養成校で国家試験対策を行っているため、国家試験合格率の高い学校を選び、過去問で入念に対策をすることで7割は合格を狙えると思います。

国家試験の勉強法や過去問の活用法については、以下でも紹介しています。
言語聴覚士(ST)国家試験の合格率はなぜ低い?難易度や試験内容も解説

9.学生の時にやっておくといいこと

STになって、今振り返るとこうしておけばよかったということを紹介します。

就職してからの自己学習や、職場の研修や勉強会でスキルや知識は磨いていけるのですが、学生時代は、実は失語症・構音障害・小児発達・聴覚・摂食嚥下分野など専門的な知識を持った先生がそばにいて、図書館や教材などが充実しているので吸収しておくべきチャンスでもあるのです。

学生時代に最も勉強しておいた方がよいのは基礎基本

実際に働いてみて、解剖学や神経学、言語機能や嚥下機能など基礎基本が大事だと感じました。「どこが障害されると、どんな症状がおきるのか?」「原因をおさえて適切なアプローチをする」ことが重要です。基礎基本を押さえると適切な評価ができます。

学生時代に、自分の就職したい分野(小児、成人、聴覚など)で携わる知識を覚えておくことと、実際に働いたときに復習しやすくしておくことが大切です。

実習での経験を大事に

実習での経験は就職したときに実践で使えるものが多いため、先輩STの患者様とのかかわり方や、声のかけ方、関係性の作り方、リハビリの評価や手技をよく覚えておくと良いです。

そのときは何かわからなくても、見たり聞いたりしているだけで、のちのち結びついていくこともあるので、目を肥やしておくことが大事です。

10.国家試験不合格になってしまったら?

どれだけ日々努力していても、試験当日に体調を崩してしまい実力が出し切れないなどのハプニングや、試験ですので苦手な範囲が多く出題される可能性があるなど、100%合格するとは言い切れません。

STの国家試験は2月に実施されることが多く、合否の発表は3月末というスケジュールとなっています。そのため、就職先が決まっていても国家試験の合否によっては内定取り消しとなる場合があります。

国家試験に不合格になっても、これまでの努力や学費などを考えて再受験を目指す場合には、在籍していた養成校で研究生などの制度を利用し、学校で勉強を続けながら再受験を目指す方法と、独学で再受験を目指す方法があります。

一般的には養成校との繋がりをもっていた方が、次の国家試験の情報収集がしやすかったり、模試への参加が可能であったりと、独学で勉強するよりはモチベーションが維持しやすく、有利な環境と言えます。

また、就職先に関しては内定取り消しになる可能性のほか、施設によってはリハ助手として臨床の手伝いをしながら実践的な知識を学ばせてもらえることもあります。その場合、受験勉強と並行しての仕事となるため、勉強のスケジュール管理に注意が必要です。

11.まとめ 

STになるには4年制大学に行く、3年制の短大に行く、3~4年制の専門学校に行く、4年制大学を卒業後に2年制の大学、大学院もしくは専門学校で学び、国家試験に合格することが必要です。

STになるための必要単位数は一律で決まっているので、3年制でも4年制でも学ぶ内容は変わりません。3年制では忙しい代わりに早く就職することができ学費を抑えられ、4年制ではじっくり学んで実習や国家試験に臨めます。

国家試験は過去5年間で合格率70%が平均です。国試合格率の高い学校を選んだり、過去問でよく対策することで7割の人は合格できる確率です。

学生時代にやっておくといいことは、基礎基本の勉強、実習での先輩STの患者様への接し方や、リハビリ評価や方法をよく見ておくことです。その場ですぐわからなくても、実際に働くと「勉強していて思い出しやすかった」「あの時先輩STがしていたのは〇〇だったのか」と腑に落ちる場面が来ます。

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