小児科領域で働く言語聴覚士(ST)はまだまだ多くなく、どういった職場や仕事内容になるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな小児分野で働く場合のSTの勤務先や対象についてまとめてみました。

医療保険や介護保険が適用される病院・施設での勤務が大半であり、小児に関わる施設での勤務は少ないのが現状です。しかしSTが求められる機会や場所も増えていますので、今後のキャリアの参考にしていただけますと幸いです。

1.子どもを支援できる言語聴覚士(ST)の職場

STとして子供を支援する職場について、代表的な施設、対象とするお子さん、業務内容についてみていきたいと思います。

総合病院など小児科のある病院

対象は言語・コミュニケーション障害、嚥下障害、難聴などと多岐に渡ります。

乳幼児検診などで遅れを指摘された場合や、親御さんがお子さんの言語やコミュニケーションに違和感を覚えた場合などに紹介されることが多いため、適切にスクリーニングをしてリハビリの必要性などを判断することが求められます。

また、リハビリや療育が必要なお子さんに専門的な支援が受けられる施設やネットワークを紹介できるよう地域資源についての情報を得ておくことが重要です。

他にも、保護者に対してもスクリーニングによって得られた結果から説明と指導を行います。

以上のように総合病院では評価と連携が主な仕事になりますが、療育センターなどの専門的な支援施設が近くにない場合や専門施設利用開始までに待機期間がある場合には、病院で継続的に訓練を行う場合もあります。

小児科クリニック

総合病院と同様に幅広い障害に対応します。

訓練に力を入れている小児科クリニックの場合には、地域の療育センターや学校や幼稚園などと連携しながら個別の言語療法や集団での療育を行い、対象児のコミュニケーション改善を目指します。

総合病院に比べて訓練の必要性がある乳幼児が紹介されることが多いため、個別のリハビリなどを通してしっかりとお子さんの機能獲得や生活能力の向上などを支える役割が求められます。

訪問看護ステーション(小児・リハ)

外出できず自宅療養している小児を対象とすることが多いため、重症心身障害児や医療的ケア児に対する嚥下訓練の需要があります。また、代替コミュニケーションを含めたコミュニケーション訓練を行う場合もあります。

リスク管理が非常に重要になるため、症状や疾患に対する知識や経験が問われる上、様々な機関や職種と密に連携を取るフットワークの良さも求められます。

児童福祉施設(療育センター)

知的障害、発達障害、言語障害などのお子さんを対象として、聴力検査や言語・発達検査、個別リハ、集団療育などを行います。

理学療法士や作業療法士、心理士や保育士と共にお子さんの全体の発達に目を向けて支援します。保護者指導はもちろん、幼稚園や学校との連携も重要な仕事です。

ことばと聞こえの教室

小学校内に設置されたことばと聞こえの教室では、機能性構音障害、吃音、言語発達遅滞、学習障害、難聴を持つ児童に対して、言語の個別訓練、聴力検査や補聴効果の判定、構音訓練などを行います。

学校で友達との関係や勉強で困らないよう、保護者や教師と協力して専門的な支援を行います。子供は授業を休んで通級してくるため、子供たちが安心して目的意識をもって取り組めるような対応が期待されます。

ちなみに、ことばと聞こえの教室は正規の授業として扱われるため欠席扱いにはなりません。

2.小児領域で対象となる症例

次に小児領域での言語コミュニケーション障害、聴覚障害、摂食嚥下障害における言語聴覚療法について簡単におさらいしてみたいと思います。

話すことが苦手な児童

言語発達遅滞、機能性構音障害、吃音などの障害などのいわゆる言語障害を抱えたお子さんに加え、自閉症スペクトラム障害を持つお子さんのコミュニケーション、学習障害のあるお子さんの学習支援、時には小児失語症などのお子さんが対象になります。

リハビリは、言語理解・表出を促す個別リハ、集団療育とともに保護者へのケアも大事な業務です。お子さんの特性や養育環境に合わせた適切なリハビリテーションを考案することが求められます。

聞くことが苦手な児童

聴覚障害を抱える小児に対し、補聴機器などを適切に活用しながら聞き取りや発音のリハビリテーションを行います。

医療施設では、医師の指示のもとに聴力測定や人工内耳・補聴器の調整などの医学的なリハビリテーションを実施し、難聴通級施設などでは適切な補聴とコミュニケーションモードの選択を行い、聴覚活用や言語発達を促す療育を行います。

また、保護者が難聴を持つお子さんに適切に関われるように指導する力が求められます。

食べることが苦手な児童

脳性麻痺や口唇口蓋裂、ダウン症児など、嚥下や咀嚼に器質的・機能的な障害を抱える小児が対象です。

間接的嚥下訓練、直接的嚥下訓練に加えて、食事姿勢や食具の選定、手術的治療の検討など幅広く対応する能力が求められ、多職種との密接な情報共有が重要となります。

3.小児と向き合える言語聴覚士(ST)はまだまだ少ない

言語聴覚士(ST)が国家資格化されたのは1997年であり、STの数はまだ十分では無いと言われています。日本言語聴覚士協会によると、協会員のうち小児を対象としているSTは全国で4480名(令和3年3月現在)と小児分野で働くSTが少ない現状がうかがえます。

会員が対象としている疾患(複数回答可)

摂食・嚥下14176人
成人言語・認知14197人
発声・構語13980人
小児言語・認知4480人
聴覚2033人
その他222人

一方で、特別支援学校や特別支援学級へ通級している児童数は増え続けており、言語やコミュニケーション障害を持つ小児に対して、STの専門性を活かした活躍が期待されています。

4.まとめ

ここまで、小児分野で働く場合の勤務先や対象について見てきました。

言語聴覚士(ST)養成課程では、小児に対する言語聴覚療法の基礎を学び実習も行います。しかし、現場に出てからは成人のみを対象とする方が多いのが現状です。

まだ働いている方の少ない小児科領域ですが、STとして働くキャリアが少しでもイメージできるようになれば幸いです。小児科領域の求人特集ページも開設していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

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引用サイト
日本言語聴覚士協会 会員動向

参照文献
言語聴覚士テキスト第3版