作業療法士(OT)にはいくつか専門領域がありますが、その中の発達障害領域と言われる分野で行われる小児作業療法。

発達障害領域の対象は、0歳から18歳前後までの間に先天性もしくは後天性の病気やケガを発症し、心身の発達を妨げるような障害をもったお子様です。

小児作業療法では、他の領域に比べて求人が少ないことや小児特有の疾患を有するお子様を対象とするため、就職するには割とハードルが高い印象がありますが、障害福祉報酬改定により需要は急速に高まっています。

子どもと関わる仕事をしたいOTや小児作業療法だからこそ感じられるやりがいというのもあるため、興味のある方はぜひ今回の記事を参考に小児作業療法を目指してみてください。

1.子どもを支援できる作業療法士(OT)の職場

小児作業療法を提供する職場の求人は障害福祉報酬改定により増えており、職場の種類も多岐に渡ります。

職場によって対象となるお子様の重症度や実施する内容に違いが出てきますので、1つずつ職場別に見ていきましょう。

総合病院など小児科のある病院

総合病院では様々な病期、疾患をOTが担当します。病院内の部署替えがあったり、小児科だけを担当するのではない場合もあるため、勤務形態や配属等を職場に確認する必要があります。

総合病院における小児作業療法の場合は、いわゆる脳性麻痺や自閉症などの発達障害というよりも整形外科や呼吸器疾患などの病気を有するお子様に対するリハビリを行うことが多くなります。

そのため、身体・運動機能面に対するリハビリを実施したり、疾患や障害を呈しながらも生活をより良く送れるための日常生活動作訓練を実施することがOTの主な役割となります。

訪問看護ステーション(小児・リハ)

訪問看護ステーションでの小児作業療法は、在宅や入所施設へ訪問をし、リハビリを実施します。通所サービスに通うことが難しい比較的重症度の高いお子様、もしくは在宅での生活を重視し、住環境を含めた総合的な支援が必要な方に対して実施されます。

そのため、拘縮(こうしゅく)予防や日常生活動作訓練から、居住空間の環境調整、介護指導などリハビリとして幅広く支援することが求められます。

その分よりお子様の生活に密着し、両親とも近い関係性の中でリハビリを提供できるというやりがいもあるのです。

児童福祉施設(療育センター)

療育センターと呼ばれる児童福祉施設には、通所施設と入所施設があり、それぞれ役割が異なります。

通所施設に関しては、発達支援センターや放課後デイサービスのように、日常生活は他で送れているが生活上不自由となる部分があるお子様を対象とするため、比較的介護度としては軽度な方が多いです。

発達が少し遅れているお子様に対して、身体機能訓練や集団生活に慣れるための応用訓練などを実施します。

通所施設の場合は、日頃見ている両親や場合によって施設や学校の担任などとも密に連携しながら関わっていくことが大切となります。

入所施設に関しては、様々な理由で自宅での生活を送ることが難しい方を対象としているため、介護度も比較的重度の場合が多くあります。

入所している施設が対象者の方の暮らす場所となるため、身体機能訓練だけではなく、日常生活動作訓練や環境設定、余暇活動の提供など広く生活を見ていく必要があります。

2.小児領域で求められる3つのスキル

小児作業療法では、他の3つの領域(身体障害、精神障害、老年期障害)とは異なり、子どもや発達障害ならではの介入の仕方や“遊び”の中に自然と治療的介入を取り入れる小児領域特有の手法が必要とされます。

小児領域で特に重要とされる3つのスキルを一つずつご紹介していきます。

子どもならではの特徴

小児といっても、対象とする年齢は幅広いです。0歳と10歳では体のつくりや成長度合いも全く異なりますし、先天性か後天性かによっても症状は異なります。

特に成人とは違い、小児領域では成長途中であるため自己矯正能力が高いという点が大きな特徴です。

そのため、その方の発達状況を見据えた介入が必要となりますし、将来痛みや障害を助長させないようより良い形へと促していく介入が大切になってくるのです。

理論よりも楽しさを追求

そして、忘れてならないことは、理論的な説明や直接的な機能訓練というよりも、作業療法を楽しんで行うという視点です。

手を使った遊び、体を動かすこと、歌やリズムなど、楽しみながら五感を使って身体機能、精神機能、周囲とのコミュニケーションへのアプローチを気づかぬうちにやってのけるのが小児作業療法なのです。

環境や家族とのコミュニケーション

小児領域では、お子様への直接的な介入の他に、両親や学校などの他施設と密に連携を図っていくことが重要です。

作業療法の中で一時関わっただけで、その方の日常をより良い形に変えることは困難です。
お子様の特徴やより良い関わり方などを双方で共有し合うことで、声かけや環境設定を調整していきます。

そうすることにより、病気や障害を抱えながらも、その方を尊重しながら生活しやすい状況を作っていくのです。

3.作業療法を必要とする小児と対策

世の中には目で見てわかりやすい障害だけではなく、日常生活は問題ないように思えるけれど、どこか生きにくさを感じているという方も実は多くいらっしゃいます。

適切な診断を受け、早い段階で作業療法などの専門的な支援を受けることで、本人の苦しみも軽減し、周りの適切な対応がわかってくることもあります。

そういった小児特有のケースと対策があることも知ってください。

作業療法が必要なケースも多様

普段何気なく生活を送り学校には行っているけれど、なんとなく動作に時間がかかる、人と上手く関わることができないというお子様は多いです。

  • 体を上手く動かせない
  • 服を着るなどの複合的な動きが苦手
  • スポーツ的(キャッチする、縄跳びなど)な動きが苦手
  • 頭で理解して動くことが苦手
  • 人と協力して動くことが苦手

など、実はよく観察し評価してみると、作業療法が必要なケースも多々あります。

小児作業療法の分野では、市町村の定期健診や幼稚園保育園への訪問などを実施し、そんな作業療法を必要とするお子様の適切な評価・支援を促すことも大切な役割です。

身体を動かすだけではない作業療法

そして、小児作業療法では体を動かすだけではなく、理解すること、人と関わることなど集団生活において生きづらさを感じているお子様に対しての支援も重要です。

直接的な訓練に加え、環境設定から声かけの仕方、その子の特徴を両親や学校などに正しく理解してもらうこと。その子の生活全般を多角的にアプローチしていくことが求められるのです。

4.まとめ

小児を対象とした作業療法士(OT)の職場と小児作業療法についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

小児特有の疾患や障害、アプローチとなるためより難しい分野と捉えられがちですが、生活全般を総合的に支援するという点で、OTは小児領域で一番力を発揮する職種ではないかと私は感じています。

これからの将来、子どもたちがどう生きていくか私たちOTの関りで大きく変わる、そんなとてもやりがいのある分野でもあります。

決して他領域に比べ求人が多くはありませんが、必要としている現場は必ずあるので、もし小児作業療法に興味のある方はぜひ目指してみてほしいと思います。下記の小児求人特集もぜひ参考にしてください。

求人特集リハビリ職の新しい働き方

今回の記事が皆さんの職場選びの参考になると幸いです。転職先で悩む際はお気軽にPTOT人材バンクのキャリアパートナーにご相談ください。
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