作業療法士(OT)の勤務先は病院など医療施設というイメージが強いと思いますが、病院以外で働く方も3割程度いると2019年度日本作業療法士」「協会会員統計資料にて報告されています。

具体的には、介護保険法関連施設や、児童福祉法関連施設、養成校や企業など幅広い分野の施設があげられます。

この記事では、OTの医療施設以外の勤務先とそれぞれのメリットデメリットを踏まえた特徴や給与、医療施設以外で働く意義について解説します。

医療施設以外で働くことに興味を持っている方や転職を考えている方は是非参考にして下さいね。

1.病院以外で働く作業療法士(OT)は3割弱

日本作業療法士協会に所属している会員の統計になりますが、「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」によると、病院や診療所など医療施設で働くOTは73.2%で、医療施設以外で働くOTは26.8%であることが分かっています。

例えば、介護保険制度が開始された2000年から、介護保険施設に勤務するOTは徐々に増加しています。

2010年頃には一時横ばいになりましたが、2013年度からの国の医療計画として「入院医療から在宅医療へのシフト」を目指していることもあり、訪問リハビリテーション事業所や通所リハビリテーション事業所などの職場の求人は増加傾向です。

他にも養成校などの教育分野、行政関連施設、関連企業など幅広い分野でOTが活躍しており、卒業後の進路や今後の転職先を考える際は自分のキャリアプランを見据えて色々な選択肢を検討してみると良いでしょう。

2.医療施設以外の主な職場一覧

先ほどの統計資料から、医療施設以外で作業療法士(OT)が勤務する主な職場をピックアップし、メリットデメリットを踏まえた特徴や給料について解説していきます。

【主な職場】

  • 介護老人保健施設
  • 老人デイサービスセンター(通所介護)
  • 訪問看護ステーション
  • 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
  • 児童発達支援センター、通所支援事業所
  • 障害児入所施設
  • 就労移行支援事業所
  • 養成校
  • リハ関連企業

介護老人保健施設

介護老人保健施設のOTの仕事内容は、主に医療施設から直接自宅退院が難しい患者さんに対して在宅復帰を目指したリハビリテーションを提供することです。

比較的病態の安定した回復期~維持期の患者さんが多く、在宅生活を見越した日常生活動作訓練や環境調整や福祉用具の提案などOTの視点が活きるリハが提供できるため、やりがいを感じやすいというメリットがあります。

しかし、介護老人保健施設におけるOTまたは理学療法士・言語聴覚士などのリハ職員の配置基準は「入所者100人あたり1人以上」で非常に少ない現状があるため、リハ職員一人あたりの担当患者数が多く、比較的忙しい職場が多いようです。

介護業界の慢性的な人出不足の影響もあり、給与は医療施設よりも高いところも多い印象です。

老人デイサービスセンター(通所介護)

デイサービスではOTなどリハ職員の人員配置は必須ではありませんが、リハビリに力を入れている施設も多く求人も増えてきています。

デイサービスに勤務するOTは機能訓練指導員として利用者さんの身体機能評価や個別機能訓練計画書の作成、リハビリ機器利用時の指導などの仕事内容を担うため、マンツーマンでの関わりの多い医療施設や介護施設よりも介助量が少ない場合が多く、体力的な負担が少ないというメリットもあります

しかし、リハ職としての仕事以外に行事やレクリエーションの企画や運営、利用者さんの送迎など幅広い役割を求められる場合もあるため、OTとしての業務に専念したい人にとっては、違和感を覚えるかもしれません。

給与面では医療施設や介護施設よりも低い傾向にありますが、利用者さんの送迎時間が決まっているため仕事のスケジュールが立てやすく残業が比較的少なく、非常勤やパートでの求人を探している人にもおすすめの職場と言えます。

訪問看護ステーション

訪問看護ステーションでOTが提供するサービスは基本的に訪問リハビリテーションと同様で、バイタル測定や身体機能面のアセスメント、自宅環境に合わせたリハや環境調整等です。

実際に利用者さんの生活の場でリハができるので、目標設定がしやすく成果にも繋がりやすい点と介護者である家族とのコミュニケーションも取りやすく包括的なケアができる点は魅力です。

基本的に一人で訪問するのでリスク管理や緊急時の対応などのスキルや経験が求められる点や、地域によっては普通自動車免許が必要な場合がある点は、人によっては障壁と感じるかもしれません。

訪問看護ステーションのOTの求人は時給で募集しているケースも多く、パートでの求人も豊富にある点が特徴です。

経験によっても給与に差が出やすい訪問業界ですが、訪問件数によって特定の金額を支給するインセンティブ制度を設けている事業所もあり、一般的に医療施設や介護施設と同程度~やや高めの給与が見込めると言えます。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)

特別養護老人ホームでは、在宅での生活が難しく長期に施設入所が必要な介護度の高い入所者さんが多くを占めており、積極的なリハビリというより生活リハビリや集団レクリエーション・行事などで社会参加や交流を促す関わりが中心となります。

入院期間や入所期間の決まっている病院や介護老人保健施設とは違い、比較的長い期間を通して入所者さんと関係を築ける点は魅力であり、単調になりがちな施設での生活に生きがいや楽しみを提供できる点はやりがいを感じやすくメリットと言えると思います。

一方で、特別養護老人ホームに勤務するOTは機能訓練指導員の人員基準で配置されており、施設あたりのリハ職の人数が少ない場合が多く、理学療法士(PT)や言語聴覚士(ST)がいないケースもあるため幅広い役割を求められる場合もあります。

給与面では介護老人保健施設と同様で高いところもありますが、リハ職員の人数が少なくハードな面もあるなど、バランスはとれていると言っていいでしょう。

児童発達支援センター・通所支援事業所

児童福祉法関連施設である児童発達支援センターと通所支援事業所は、どちらも通所利用の障害児やその家族に対する支援を行うことは共通で、センターは施設の有する専門機能を活かし地域の中核的な療育支援施設として、事業所は支援を行う身近な療育の場として位置づけられています。

児童発達支援センターには、福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せ治療も行う「医療型」の2種類の施設形態があり、放課後等デイサービスや保育所等訪問支援などを行う福祉型児童発達支援センターに勤務するOTの割合がやや高いことが分かっています。

OTの役割は障害を抱える子供に対して生活能力向上のための運動・感覚機能へのアプローチや保護者へのアドバイス等があり、医療施設で行う療育よりも子供や家族に近い立場で地域に密着したアプローチができるという魅力があります。

しかし、OTを複数名雇用している施設は少なく相談できる先輩OTがいない、保育士や介護士などのリハ職員以外のスタッフと密接に連携を取りながら働いていく必要があるなど、コミュニケーションの仕方は少し特殊かもしれません。

給与面は、母体となる法人の運営状況に左右される部分も大きく、場合によってはやりがいはあっても収入面がネックと感じるケースもあります。

障害児入所施設

児童発達支援センターが通いで障害のある子供への支援を行うのに対し、障害児入所施設は入所で日常生活の指導及び自活に必要な知識や技能の付与を行う施設で、「医療型」と「福祉型」の2種類の施設形態があります。

医療型障害児入所施設に勤務するOTの割合は高く、身体または知的、精神に障害があり医学的治療が必要な子供に対して主に療育訓練や機能回復訓練、コミュニケーションの支援などを行う役割を担っています。

入所施設であり発達段階にある子供さんの療育に密接に関われるのも魅力ですが、施設あたりのOT配置数が少なく多忙になりやすい、相談できる先輩OTが少ない可能性があるなど、注意点もあります。

ただ、業務内容に給与が追いついていないケースも多く、やりがいと収入面のバランスが難しい面もあります。

就労移行支援事業所

障害者総合支援法関連施設である就労移行支援事業所は、障害のある方の一般企業への就職をサポートする通所型の福祉サービス施設です。

平成30年度の障害福祉サービス報酬改定では専門性が認められ、就労移行支援の福祉専門職配置等加算にOTの職名が追記されるなど、今後更なる活躍が期待される分野と言えます。

精神障害や発達障害、高次脳機能障害など一般には理解されにくい障害を持つ利用者に対して就労トレーニングや環境調整、企業・医療機関との連携の支援などを行うことで就労移行に繋がりやすく、OTの専門性を活かせるというメリットがあります。

医療施設や介護施設とはまた違った分野で応用的で幅広い知識と経験が必要となるため、新卒や若手での就職はハードルが高いと感じることもあるでしょう。

給与面は母体の規模によりますが、今後活躍が期待される分野なので将来性も期待できます。

養成校

リハ関連の専門学校や大学で教員として働く場合は、未来ある学生たちに指導を行い臨床の場に送り出していくやりがいがあり、教育・研究分野に興味のある人にはメリットが多い職場であると言えます。

給与に関しては養成校の増加や少子化の影響もあり、一時期よりは低下傾向にありますが、それでも他の施設と比べるとやや高めの場合が多いようです。

ただ、それには残業など業務外の仕事が多い点も影響しており、特に実習中や国家試験前などは業務外の仕事が多くなり、実習先でトラブルがあった場合は県外であっても実習先に訪ねて対応する必要があるなど、残業が多い点はデメリットとしてあげられます。

リハ関連企業

リハビリ機器や福祉用具を取り扱うリハ関連企業に勤めるOTは、臨床経験を活かして病院や施設スタッフに対して製品説明や営業など技術サポート業務に携わるケースが多く、リハ業界の技術進歩に携われる職場です。

ただ、企業によってはノルマが課せられますので、臨床現場とは違ったスキルを求められる場合があることなどがあげられます。

給与としては臨床で働く場合よりやや給料は高い傾向にあるようですが、企業によって入職後数年は契約社員での雇用というケースもあり、規模や採用形態によっても給与の違いがあるようです。

3.医療施設以外で働く意義

作業療法士(OT)が医療施設以外で働く意義は、より一層自分の興味ある分野に関われることが挙げられます。

例えば、発達分野では児童福祉法関連施設、老年期分野では介護老人保健法関連施設など、分野を深く掘り下げることは大きな魅力と言えます。

医療施設では幅広い患者さんを担当できるのに対し、医療施設以外では分野を絞ることができるため、興味のある分野が決まっておりスペシャリストを目指したい方におすすめです。

4.まとめ

この記事では、OTの医療施設以外の勤務先とそれぞれのメリットデメリットを踏まえた特徴や給与、医療施設以外で働く意義について解説しました。

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【参照サイト】
2019 年度 日本作業療法士協会会員統計資料
平成30年度障害福祉サービス等報酬改定について(概要資料)|厚生労働省