日本では、2025年を目途に住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができるよう2003年から地域包括ケアシステムの推進がなされています。

さらには、2013年の第6次医療計画において在宅医療での機能を確保するための指針が追加され、2018年の第7次医療計画ではより質の高い在宅医療の構築が各都道府県で進められているなど、国の方針として在宅介護・医療に力を入れているのがわかります。

作業療法士(OT)は、リハビリ職の中で「その人の暮らしや人生に密着したリハビリ」を提供する専門家です。そのため、国の施策とも相まって、訪問リハビリ分野の求人は年々増加傾向にあり、在宅でのリハビリをしたいというOTも多いのではないでしょうか。

この記事では、OTの訪問リハビリでの仕事内容と魅力、訪問リハビリテーションと訪問看護ステーションとの違いとおすすめについて解説します。

1. 作業療法士(OT)からみた訪問リハビリとは

訪問リハビリテーションは、医療施設や介護老人保健施設に併設する事業所から提供されるものと訪問看護ステーションから看護サービスの一部として提供されるものに分けられます。

制度上の位置付けや手続きに違いはありますが、実際に利用者が受けるリハビリ内容はほとんど違いがなく、どちらも「訪問リハビリ」と表現されることが多いです。

訪問リハビリで働くOTは、基本的に単独で訪問先に出向きリハビリを行うため、リスク管理や緊急時の対応などを全て一人で行わなければいけません。

そのため、さまざまな疾患の知識はもちろん、家族や他職種との円滑なコミュニケーション能力、その場の判断能力など、幅広いスキルが必要とされます。そうした背景から、病院や施設で経験を積んでから訪問リハビリ分野へ転職するケースが多いですが、もちろん新卒で募集している事業所もあります。

言い換えれば、在宅というOTの力を一番に発揮できる現場で、幅広い経験ができるということです。経験がなくて心配という方は、研修制度や先輩の同行訪問があるかなど、サポート体制が整っている事業所を選ぶと良いでしょう。

2. 作業療法士(OT)の訪問リハビリテーションでの仕事

訪問リハビリテーションの請求事業所数(訪問リハビリテーションを提供する事業所数)は毎年増えており、利用者も増加傾向にあるため今後も需要が高まっていくことが予測されます。

ここでは訪問リハビリテーション事業所に勤務するOTの仕事内容や特徴について詳しくご紹介します。

訪問リハビリテーションの特徴

訪問リハビリテーション事業所には医療施設や老健が併設されているため、必ず医師がおり、医師と連携しながらリハビリを提供していくのが特徴の一つです。そのため、母体の病院・施設から退院、退所した利用者さんに対して家屋状況の確認を含めたリハビリの提供をするケースも多くあります。

その場合は、病院や施設の担当スタッフと情報共有もしやすく、通所リハビリテーションを併設している場合も多いため、訪問リハビリ卒業後の連携もスムーズにいきやすいでしょう。

介護保険を利用したリハビリの場合、1回20分以上で週6回までの利用が可能ですが、退院(所)の日から起算して3月以内に、医師の指示に基づきリハビリテーションを行う場合は、週12回まで算定が可能となっています。

医療保険のリハビリでも、1単位=20分という数え方で、原則週6単位まで利用することが可能となっていますが、利用者の状態によって回数の制限が異なります。

ただし、老健に併設されている訪問リハビリテーション事業所に関しては、介護保険のみが適応となるため、1回40分のリハビリであれば、週3回まで利用することができます。

訪問看護ステーションに比べ、呼吸器管理やがん末期の方など対応できない利用者がいる割合が高い傾向が現状としてあります。

訪問リハビリステーションの仕事内容とスケジュール

事業所によって異なりますが、訪問リハビリテーションにおけるOTの業務内容には訪問先で行うバイタルチェックや評価、日常生活動作訓練や環境整備のサポート、家族への介護指導などがあります。

基本的には訪問リハビリテーションの1件あたりのサービス提供時間は40分間とする場合が多く、準備・移動時間を含め1日の平均的な訪問件数は4~5件、最大では7~8件回っているケースもあるようです。

訪問先以外での業務内容も様々で、退院前カンファレンスやサービス担当者会議、地域ケア会議への出席など求められる場合もあり、ケアマネージャーや他の関係スタッフとスケジュールを調整しながら動いていきます。

訪問リハビリテーション実施計画書や報告書の作成などの事務作業も多く、特に月末やレセプト提出前の時期は書類作成に追われることもあります。

以下は訪問リハビリテーション事業所に勤務した場合の一日のタイムスケジュール例です。

時間業務内容
8:30朝礼(予定の確認、訪問の準備) 準備が出来次第訪問へ出発
9:00訪問リハビリ(1~3件目)提供時間はそれぞれ40分間    移動時間は15分~20分  
12:00お昼休憩
13:00医師の訪問診療に同行(2件分)   診療後、訪問リハビリ指示書を作成してもらう
15:00訪問リハビリ(4~5件目) 午前と同様
17:00サービス担当者会議に参加 
18:00事業所へ戻って事務作業(カルテ記載、訪問リハビリテーション実施計画書、ケアマネージャーなどへの関係者への報告書の作成など)
18:30退勤

訪問診療への同行は毎日ではなく週1~2回程度で、同行がない日は1日あたり6~7件訪問する日もあり、サービス担当者会議や退院前カンファレンスなども不定期で予定に入ってくるためスケジュール調整する必要があります。

3.作業療法士(OT)の訪問看護ステーションでの仕事

訪問看護ステーションではOTなどのリハ職は、訪問リハビリテーションという項目でリハビリを提供しません。

「訪問看護Ⅰ5」や「訪問看護療養費Ⅰ・Ⅱ」という算定項目で利用者さん宅を訪問しリハビリを提供しますが、内容としては訪問リハビリテーション事業所が行うものとほとんど違いはありません。

訪問看護ステーションの特徴

医療保険を利用したリハビリの場合は、1回30~90分、週に3回まで利用可能。介護保険を利用したリハビリは、1回20分、1日3回まで、週に6回まで利用することが可能です。

訪問看護ステーションでは看護師も同じ事業所内に配置されており、看護師と密に連携を図りながら、疾患のコントロールやリスク管理などについても情報共有を行うことでケアの質を高められるのが特徴です。

そのため、訪問看護ステーションでは、訪問リハビリテーション事業所よりも、重度者やターミナルケアを必要とする利用者に対してのサービス提供を行う役割も期待されています。

作業療法士(OT)の基本的な仕事内容とスケジュール

基本的な仕事内容とスケジュールについては、訪問リハビリテーション事業所に勤務するOTとほぼ同じで、リハビリの提供時間も1件あたり40分前後の場合が多いようです。

しかし、訪問看護ステーションの場合、介護度の重い方やターミナルケアの方を担当する場合もあるため、訪問リハビリよりもより細やかな自宅の環境設定や家族への介護指導を密に行う機会も多くなります。

また、訪問リハビリテーションでは事業所の医師が作成する「訪問リハビリ指示書」が必要なため訪問診療に同行するケースが多いですが、訪問看護ステーションではその必要がないことが、大きな違いと言えるかもしれません。

訪問看護では、主治医に「訪問看護指示書」を作成してもらえるので、改めて診察の必要がなく同行もありません。その分、1日あたりの訪問件数を多く回ることができるでしょう。

利用者の状態やリハビリ内容などの詳細を記載する訪問看護計画書やケアマネージャー・関係各所への報告書など、様式の違いはあれど事務作業や会議への参加なども訪問リハビリテーション事業所とほとんど同じで、スケジュールを上手く調整しながら動く必要があります。

4.訪問リハビリの魅力とおすすめ

作業療法士(OT)にとって訪問リハビリの魅力というのは、訪問リハビリテーションであっても、訪問看護ステーションであっても共通しています。訪問リハビリでは、終末期のがん患者さんや神経筋疾患、呼吸器疾患や循環器疾患など疾患や介護度も幅広く担当することができます。

そのため、疾患や障がいに対するリハビリだけでなく、リスク管理や福祉用具・住宅改修に関すること、多職種連携し実際の生活を支えていくことを実際の現場で幅広く経験していくことができるのです。

対象とする方の暮らしに対し、多角的にアプローチをしていく作業療法士(OT)にとって、その方の暮らしの場でリハビリを提供できるということは大きなやりがいと魅力と言えるでしょう。

2つの働く場所の違いとして強いて言うとすれば、病院や施設を退院され、生活の維持や社会参加に向けてリハビリでアプローチをしたいという方には訪問リハビリテーション、機能回復や完治が難しい方でもその人らしく暮らしていけるようOTとして関わりたいという方は訪問看護ステーションがおすすめと言えるのではないでしょうか。

また、訪問リハビリでのOTは、他の分野に比べて比較的給与が高い傾向があり、近年では訪問件数を増やすことにより報酬が上がるインセンティブ制を導入している事業所も増えてきています。

働く時間も週に1~5回、9時から15時など多様な働き方がしやすい職場が多く、実際に私もフリーランスとして別の仕事をしながら、経験を積むために週1回訪問看護ステーションにてパート勤務しています。

5.まとめ

この記事では、作業療法士(OT)の訪問リハビリでの仕事内容と魅力、訪問リハビリテーションと訪問看護ステーションとの違いについて解説しました。

国の施策を見ても、訪問リハビリ分野は今後ますます需要が高まることが予測され、利用者さんの生活に密着したリハビリが提供できるやりがいのある分野だと言えます。

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【参照サイト】
厚生労働省 訪問リハビリテーション
厚生労働省 訪問看護
厚生労働省 第6次医療計画
厚生労働省 第7次医療計画