日本は国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えており、2025年には後期高齢者人口が更に増え、4人に1人が75歳以上になると予測されています。

高齢者が住み慣れた地域の中で自分らしく生活するための支援として、「生活」をみる視点を持つ作業療法士(OT)は重要な役割を果たします。

この記事では、OTの高齢者への向き合い方や老年期障害分野で求められる役割、超高齢社会で求められるOT像についてまとめましたので、老年期障害分野に興味のある方や転職を考えている方の参考になれば幸いです。

1.作業療法士(OT)の高齢者への向き合い方

超高齢社会を迎えている今、高齢者を地域で支える地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。その中でOTは高齢者がその人らしく生活できるように、日常生活動作の工夫や生きがいや役割活動の継続などを支援する専門職として重要な役割を果たします。

加齢に伴い身体面や精神面に重複した問題を抱える事の多い高齢者に対して、生活を評価し支援することを得意とするOTは、対象者本人に対してはもちろん、家族や介護者、他の専門職に対して「生活のどんな部分で、どのように支障をきたしているか。それを改善するために何をすればいいか。」をアドバイスすることが重要な役割と言えるでしょう。

2.老年期障害分野で求められる役割

老年期障害分野で働く作業療法士(OT)は主に、介護施設や通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなどで働いています。対象者は、主となる疾患の他に老化に伴う症状や合併症を有しており、OTに求められる役割も幅広いのが特徴です。

ここでは、老年期障害分野でよくみられる疾患や症状に対するOTのアプローチ方法についてまとめました。

廃用症候群に対するアプローチ

廃用症候群とは過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた筋萎縮や関節拘縮、心機能低下など様々な状態をさします。

高齢者が一度廃用症候群になると元の状態まで改善させることは難しい場合が多いため、予防することが重要となります。

術後や入院中も疾患のコントロールに合わせて早期離床を図り、自宅や介護施設で閉じこもりや寝たきりとならないように、離床時間の確保や作業活動の提供などで廃用症候群を予防していくことがOTの重要な役割です。

認知症に対するアプローチ

平成29年度高齢者白書によると、2025年には高齢者の5人に1人、約20%が認知症になると予測されており、認知症に対するアプローチを得意分野とするOTの活躍が注目を集めています。

認知症を患った人は、発見・診断される過程で「できなくなったこと」に注目され自尊心の傷付きや抑うつ症状がみられリハビリに対して拒否感を持つことも少なくありません。

OTのアプローチ法は、「できること」や「なじみの作業」に着目し作業療法に取り入れることで、作業の喜びや自尊心の回復などを促す効果があります。

記憶障害や見当識障害などの中核症状の改善は難しいですが、徘徊や興奮、意欲低下など周辺症状は作業活動や環境調整などOTが得意とするアプローチで改善が期待でき、重要な役割を果たします。

パーキンソン病に対するアプローチ

パーキンソン病は進行性の難病で、主な症状である筋固縮や姿勢反射障害などが進行し、日常生活動作能力も低下します。作業療法では現在の能力と進行を見据えた上で、病状に合わせた日常生活動作のアドバイスや環境調整、介助方法の指導などを行います。

パーキンソン病では、巧緻動作能力が低下しやすく食事や整容動作が難しくなる場合が多く、バネ付き箸や太柄スプーンなど自助具の提案や動作指導などもOTに求められる重要な役割のひとつです。

脳血管障害に対するアプローチ

脳血管障害に対するアプローチは、理学療法士(PT)が基本動作や歩行訓練を行うのに対して、OTは食事動作やトイレ動作など応用的な日常生活動作訓練を中心に行います。

麻痺のある方に対して利き手交換訓練や、失行や失認症状など高次脳機能障害がある方に対して評価や訓練を行うことも特徴的で、脳血管障害に合併しやすい抑うつ症状や閉じこもり予防にもOTの関わりが重要となってきます。

抑うつ症状に対するアプローチ

高齢者によくみられる抑うつ症状は、身近な人の病気や死、退職によるやりがいの喪失などの喪失体験をきっかけに発症することが多く、悪化するとうつ病や閉じこもり・寝たきりに繋がるケースもあります。

作業療法では気晴らしや生きがいに繋がる作業活動を通して、自己実現や生活の質の向上を目指し、抑うつ症状の改善を図ります。

抑うつ症状の悪化を防ぎ、外に出るきっかけや家族や地域の中での役割を一緒に探すことで、その人らしく生活できるお手伝いをすることが、OTに求められる役割と言えるでしょう。

3.超高齢社会で求められる作業療法士(OT)像

IT化が進む現代、今後は医療や福祉の分野でもロボットやAIなどが活躍する場面が増え、リハビリ分野でも機械化される部分も出てくるかもしれません。

しかし、生活の改善や生きがいの回復などOTが得意とする仕事は機械化することは困難で、超高齢社会でその需要はますます高まっていくことが予測されます。

特に介護保険関連施設や通所・訪問リハビリなど老年期障害分野では人材不足が続いています。

新卒や若手でも比較的就職しやすく、身体障害分野や精神障害分野など他の分野で経験を積んだOTがキャリアチェンジする場合も、これまでの知識や経験を活かして活躍しやすく転職にもおすすめの分野です。

4.まとめ

この記事ではOTの高齢者への向き合い方や老年期障害分野で求められる役割、超高齢社会で求められるOT像についてまとめました。

超高齢社会を迎えている今、生活を評価し支援することを得意とするOTは重要な役割を果たしており、今後ますます需要が高まっていくことが予測されます。

特に老年期障害分野はOTが活躍しやすく、求人も多いためキャリアアップやキャリアチェンジにもおすすめの分野と言えます。

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【参照サイト】
3 高齢者の健康・福祉|平成29年版高齢社会白書(概要版) – 内閣府