作業療法士(OT)がリハビリを提供する方は病気や障がいを抱えているため、様々なリスク管理を日々徹底しています。

しかし、気を付けていたとしても思わぬ事故や問題に直面するリスクも少なくはないのが実状です。今回は、万が一の時のために備えておくことのできるOT向けの保険制度について解説していきます。

1.作業療法士総合補償保険の概要と保険プラン

作業療法士(OT)の仕事には、様々なリスクが伴います。職場が全ての責任を負ってくれるとも限らず個人で備えておく必要もあるのです。

そこで、OT向けの保険である作業療法士総合補償保険について詳しくご紹介していきます。

作業療法士総合補償保険とは

OTが仕事中に起こり得るリスクは、例えば以下のようなものが挙げられます。

・リハビリ中に患者さんが転倒し、作業療法士の指導内容に問題があったのではないかと責任を問われて賠償問題に発展した。
・患者さんから預かった物を誤って壊してしまい、弁償することになった。
・業務遂行中の事故により、賠償責任が生じる恐れがあるため、訴訟に備えるための調査に費用を要した。
・リハビリを受けていた患者さんが死亡したため、見舞金を支払った。

このように日頃からリスク管理に気を付けていたとしても、不測の事態で賠償問題につながることも考えられるのです。

業務上の過失に対して損害賠償を請求された場合、もちろん管理している職場の責任も問われますが個人の責任も追及されることも考えられます。

そんな時に備えておくのが、作業療法士総合補償保険なのです。

保険プランについて

作業療法士総合補償保険には、全員加入の基本プランと任意加入のできる上乗せ補償プランがあります

日本作業療法士協会に加入して会員費を納入している作業療法士であれば、全員自動的に作業療法士総合補償保険の基本プランに加入することになっています。保険料は協会負担となるため、協会員であるOTは実質無料で補償を受けることができるのです。

<作業療法士総合補償保険制度のプラン詳細>

基本プラン上乗せ補償プラン
・対人賠償
・対物賠償
・初期対応費用
・傷害事故
・個人賠償責任(対人・対物)
・人格権侵害
・被害者対応費用

基本プランに加入していれば、リハビリ中のケガや死亡時、物を壊してしまった際などの賠償に対する補償を受けることができます。

しかし、基本プランの保証では不足する場合があるのも事実です。基本プランでは、対人賠償は1事故あたり上限が200万円ですので、200万円を超える賠償金が発生した場合には、OT自身が自己負担することになります。

一方、上乗せ補償プランであれば、対人補償は1事故あたり最大1億円となり、保証が大幅に拡大します。上乗せプランでは、基本プランの内容に加えて業務中以外の対人対物賠償が適応になったり、患者さんの個人情報をうっかり第三者に漏らしてしまうなどしてプライバシー侵害で訴えられた場合などにも補償を受けることができるようになります。

会員の自己負担金は、年に2,840円と増えますが、業務中や日常生活においての備えとしては不安を大きく軽減できるのではないでしょうか。

2.総合補償保険のメリット・デメリット

作業療法士(OT)として働く上で、総合補償保険に入るメリット・デメリットはあるのでしょうか。

どちらも理解した上で、加入や選ぶ内容を検討してみましょう。

メリット

総合補償保険に加入するメリットは、やはり安心して作業療法士としての仕事に専念しやすくなるということです。

「患者さんが転倒してしまったらどうしよう」「責任問題に問われてしまったらどうしよう」と不安に感じながら本来必要なリハビリが提供できなくなるよりも、万一の場合に備えた保険に入っておくことで、しっかりとリスク管理をしながら積極的なリハビリが行えるようになるでしょう。

デメリット

総合補償保険に入ることでデメリットはあまりありませんが、強いて挙げるとすれば上乗せ補償プランをつけたいと思った時に、自己負担金がかかってしまうということです。

この場合、加入手続きや変更があった場合などは、各自個人で行うことになります。

3.加入条件と申し込み方法

作業療法士総合補償保険に加入するとなった場合、加入条件とどういう手続きを行うのかもご説明していきます。

加入条件

作業療法士総合補償保険は、日本作業療法士協会に所属し、協会費を納入している方であれば自動的に基本プランに加入できます。

基本プラン、上乗せ補償プランともに、作業療法士協会の会員以外の方は加入できないようになっています。

申し込み方法

基本プランに関しては、日本作業療法士協会に所属し、協会費を納入していれば加入手続きは必要ありません。

上乗せ補償プランを追加で加入したい場合のみ、個人で「加入依頼書 兼 預金講座振替依頼書」に必要事項を記入し、捺印をして取扱代理店の損保ジャパンパートナーズへ返信します。

その際、新規加入したい場合は、作業療法士協会費を6月15日までに納入し、加入手続きも同日までに行う必要があります。その日以降に加入する際は、毎月15日までに手続きを行うと、翌月1日から補償が開始となります。

4.他にもある作業療法士(OT)向けの様々な保険

作業療法士総合補償保険の他に、作業療法士向けの保険をご紹介します。

OTフルガード保険(団体総合生活保険)

こちらの保険も、日本作業療法士協会の会員を対象としている保険で、団体割引として保険料の5%が割引されます。

OTフルガード保険では、ライフスタイルなどに応じて希望の補償を選択することができ、障害補償や所得補償、賠償責任や携行品等、救助者費用等に関する補償などを受けることができます。

保険料は、以下の通りです。

本人型夫婦型家族型
保険料(月払)940円1,580円2,490円

その他団体割引が使える保険

作業療法士の業務に直結する保険ではなくとも、日本作業療法士協会に所属していることで、団体割引が適応になる保険もあります。

・新・団体医療保険
・医療保険・がん保険
・自動車保険
・「親子のちから」

これらの保険もぜひ上手く活用していくと良いでしょう。

5.まとめ

医療や介護現場に携わる作業療法士(OT)として、万が一の場合に備える保険について考えることは大事です。

安心してOT業務に専念するための保険や、団体割引が使える保険なども上手く活用しながら、OTとしての人生を安心して歩んでいってほしいと思います。

不明点があれば、PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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【参照サイト】
一般社団法人 日本作業療法士協会