作業療法士(OT)の活躍の場は年々広がっており、就職先の選択肢も増えています。それに伴い、求められる役割や仕事内容も多様化しているため、OTとして就職先選びは慎重に行う必要があるのです。

自分がどんなOTになりたいか、どのようなキャリアを積んでいきたいか、どんな職場環境で働きたいかを考えることが大切になってきます。

今回の記事では、OTの就職先と仕事の特徴についてご紹介していきます。キャリアプランや働きたい領域・病期などを考えていく上で参考にしてみてください。

1.作業療法士(OT)の就職先は医療機関が7割

2019年度の日本作業療法士協会会員統計資料によると、作業療法士(OT)が働く領域の中で医療機関はおよそ7割を占めています。

その他は児童・老人福祉施設や介護保険施設が多く、近年では特別支援学校や保健センター、職業訓練施設などでもOTの採用がなされています。

それぞれの就職先の仕事概要と特徴を次の章から詳しく解説していきます。

2.医療機関での主な就職先

作業療法士(OT)が働く職場として最も一般的なのが医療機関です。医療機関といっても、病院の種類や規模によっても仕事内容や働き方は異なります。主な職場として、総合病院や回復期病院、精神科病院、クリニックなどの医療機関が挙げられると思います。

病院では主に入院患者さんのリハビリを担当し、入院施設を持たないクリニックでは主に外来患者さんのリハを担当します。

また、病院の規模によっては感染対策委員会やリスク管理委員会などの委員会メンバーや、栄養サポートチーム、緩和ケアチームなどのチームメンバーなど、臨床業務以外の役割が割り当てられるケースもあります。

OTに人気の総合病院・精神病院・クリニックの特徴をそれぞれ見ていきましょう。

総合病院の特徴

総合病院ではさまざまな疾患の患者さんを担当します。主に急性期や回復期のリハビリを実施することが多く、一番回復の変化を肌で感じられる現場でもあるでしょう。

スタッフの人数も多いため、担当患者さんや上司から多くを学べる職場とも言えます。

精神科病院の特徴

精神科病院でのOTの場合、身体機能訓練を行うことは少なく、作業活動の提供や集団のレクリエーションを通して精神面へのアプローチを行います。

患者さんの数に対して採用されているOTの数が少ないため、一人で多くの患者さんを担当する場合があります。

クリニックの特徴

クリニックとは、無床もしくは19床以下の入院機能をもっている医療機関のことです。そのため、各クリニックの専門としている科によって患者さんの疾患も変わってきます。

地域に根差して長期間患者さんを診ていることが多いため、入院もしくは外来リハビリでも病院に比べて比較的長く患者さんの経過や生活を診ていくことができるのが特徴です。

3.福祉施設での主な就職先

作業療法士(OT)の職場として医療機関に次いで多いのが福祉施設です。福祉施設では、対象は小児から老年期まで、施設の形態もさまざまです。それぞれの特徴を見ていきましょう。

福祉施設での仕事概要

福祉施設では、リハビリの対象となる方の入れ替わりが病院に比べて少なく、比較的ゆとりをもって働ける職場が多いです。

また発達障害領域や老年期領域など興味のある分野が決まっている方にとっては、対象領域を絞って、より密着して介入できる職場でもあります。

入所型介護施設の特徴

入所型介護施設には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホームなどがあります。

介護老人保健施設では在宅復帰に向けたリハビリも行いますが、入所型介護施設の場合、基本的には予後を施設で過ごす高齢者の生活全般に向けてアプローチを行うことが多いです。

そのため、機能訓練や余暇活動、ADL訓練など幅広く行うのが特徴です。

通所型介護施設の特徴

通所型介護施設ではデイサービスやデイケアと呼ばれる施設があります。OTの場合、リハビリを行うデイケアに勤務することが多く、機能訓練や作業活動を個別・集団リハビリで行います。

日頃在宅で生活している高齢者に対してリハビリを行うため、比較的介護度の低い方を担当する場合が多いのが特徴です。

児童福祉施設の特徴

児童福祉施設でOTの職場として多いのは、知的障害児施設や重症心身障害児施設、肢体不自由児施設などが挙げられます。

身体・知的障害に対して日常生活や遊びを通してリハビリを提供しながら、環境設定や補助具の検討、生活のアドバイスなどを幅広く行います。

4.他にもある作業療法士(OT)に選ばれる就職先

その他にも作業療法士(OT)にはさまざまな就職先があります。地域包括ケアシステムの推進や働く幅が広がっていることから、新しい職場へチャレンジすることも選択肢の一つかもしれません。

訪問リハビリ・訪問看護ステーションの特徴

医療保険や介護保険を利用して、在宅で暮らしている方のところへ訪問しリハビリを行う訪問リハビリ。近年需要が増えており、訪問リハビリを行うOTも増えています。

機能訓練やADL訓練、趣味活動など、その方に合ったリハビリを提供しますが、実際に生活している環境にOTが入れることはやりがいの大きい職場であるとも言えます。

保健センターなど行政機関の特徴

採用の人数は限られていますが、保健センターや高齢サービス課などの行政機関にOTが就職するケースもあります。

その場合、臨時職員としての採用や公務員試験を受けて採用となります。一般的な患者さんへのリハビリ提供とは異なりますが、専門職種としての視点を活かした新しい政策やアドバイスができるのが特徴です。

職業訓練施設の特徴

職業訓練施設では、社会復帰に向けた作業訓練指導や勤務先へのアドバイス・環境調整などを行います。

直接体に触れてリハビリを行うことが少ないため、身体的な負担が少なく、作業療法士としての「人・作業・環境」という視点を活かせる職場の一つです。

5.就職先はキャリアプラン・領域・病期で考える

ご紹介したように、作業療法士(OT)の就職先の選択肢は広がっていますが、多いが故にどの領域で就職すればよいか迷ってしまうケースもあるのではないでしょうか?

ここでは、就職先を考える上で抑えておきたいポイントについて解説します。

キャリアプランがあればそれを叶えられる道へ

将来なりたいOT像がある場合には、何年後にどんなOTになっていたいかという経験の道筋についても考えてみましょう。

例えば、将来は地域の中で高齢者や障害者の方一人ひとりに寄り添い、その人らしく生きられるよう多くの引き出しを持ったOTになりたいと考えている場合、もちろん始めから訪問リハビリの現場に就職するのも一つです。

しかし、始めは総合病院でリスク管理やさまざまな疾患に対しての経験を積み、多職種との連携について学んだ後に、自信を持って一人で訪問リハビリの現場に出るというのもキャリアとしては良いでしょう。

領域から職場を選ぶ

OTの対象領域は、身体障害領域、精神障害領域、発達障害領域、老年期障害領域の4つに分かれます。現在働いている領域を極めていくか、新しい領域に挑戦してみるかで決めるのも一つの手です。

例えば、総合病院に勤務中に整形外科疾患に興味を持ち、ハンドセラピーなど、より専門的に勉強できる整形外科病院やクリニックに転職を考えるなど、興味のある分野を更に極めていくケースはよくあります。

また、もっと長期的に患者さんと関わり、ゆとりを持って働きたいという場合、老年期障害領域に転職する方も多いです。

病期から働き方を考える

急性期、回復期、維持期、終末期という病気からキャリアを考えてみても良いでしょう。

急性期では、術後や発症間もない患者さんに対して、リスク管理を徹底しながら早期離床をサポートしていき、回復期では急性期後の比較的状態が安定した患者さんに対して日常生活動作訓練や作業課題を中心に自立に向けたリハビリを行っていきます。

維持期では、在宅復帰後や施設入所後の環境に合わせた生活リハビリを中心にサポートを行い、終末期では徐々に低下する日常生活動作能力を補う環境調整の提案や介助指導などを心身両面でアプローチしていくことになります。

急性期に興味があれば総合病院や大学病院、回復期であればリハビリテーション病院、維持期であれば慢性期病院や福祉施設、終末期であれば緩和ケア病棟を有する病院や訪問リハビリなどが選択肢として挙げられます。

決まらない場合は純粋な興味でOK

これまでご紹介してきたように、OTが求められている分野や役割、求人募集のある職場は年々広がりを見せていますので、具体的な将来像が決まらない場合には、領域や病期、サポート体制、患者さんとの距離感など、興味ややりがいを感じられるものから転職先を考えてみても良いかもしれません。

近年ではOTはどんどん地域の中で活躍することが求められています。総合病院で学べることと、地域に出ることで学べることも異なります。

興味のあることやOTとしての理想を諦めることなく、新しい挑戦をしていってほしいと思います。

キャリアプランや興味で決めると言われても、自分に合った職場探しに苦労する方は非常に多いです。そうした場合は、一人で考え込むのではなく、友人や転職エージェントに相談することも転職成功の秘訣です。

また、興味のある施設に見学に行くなどして、職場の雰囲気や環境を知り、働いている人の話を聞くことで自分が働いているところをイメージしてみるのも良いでしょう。

6.まとめ

今回は作業療法士(OT)の就職先と特徴について、また、キャリアプランや領域・病期などで考える職場の選び方についてご紹介しました。

活躍の場が広がりや有資格者の増加によって、自分の強みをもったOTが必要とされる時代となってきました。

OTは医療やリハビリの経験以外のことでも、全てOTとしての引き出しにできる職業だと思っています。自分のなりたいOT像を考え実現していくために、さまざまな経験を積みながら、転職を一つのステップアップにしてください。

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【参照サイト】
2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料