デイサービスは、障害を持つ方々の地域社会での暮らしを支援する通所施設です。家庭的な施設や、運動メインの場所、言語に特化したものなど、施設ごとの特色も様々です。

今回は、高齢者を対象とした通所介護(デイサービス)と、就学児童に対して学校時間外の保育を提供する放課後等デイサービスにおける言語聴覚士(ST)の仕事と役割についてまとめました。

私が働いていた言語デイサービスについても少しだけ触れていますので、デイサービスでのSTの働き方が気になっている方は参考になさってください。

1.デイサービスとは

デイサービスとは、介護認定を受けた利用者やその家族が健康的な生活を営めるよう、機能訓練、入浴、食事、レク活動などを提供する通所施設です。家族が安心して休息でき、利用者さんが楽しく過ごす日中の居場所としての役割も果たします。

ちなみに、介護保険を利用した通所リハビリは、デイケアでのみと勘違いしがちですが、デイサービスでリハビリに力を入れている施設もあります。例えば、私が以前勤めていた「言語に特化したデイサービス」では、STによる個別評価などを取り入れていました。

言語コミュニケーションや嚥下評価を3ヶ月に1度行い、個々の症状に合わせたプリント(机上課題)、集団リハ、小グループでのコミュニケーションリハ、嚥下体操などをSTが担当していました。

他にも、介護士によるレクリエーションや体操もあり、みなさんで和気あいあいと家族のように過ごしていました。

また、最近では放課後等デイサービスでのST求人も多く目にするようになりました。小学生から高校生までの障害や発達に特性のあるお子さんを対象に、放課後または長期休暇に利用できる福祉サービスで、自立支援や日常生活の充実のための活動などを行います。

その中で、STは指導員として個別支援計画に基づいて、児童の心身の状況に応じた適切な技術をもって支援を行う役割を担います。

2.通所介護(デイサービス)での仕事

まずは、介護保険施設であるデイサービスでの言語聴覚士(ST)の仕事内容とスケジュールをみていきましょう。

STの基本的な仕事内容とスケジュール

デイサービスでのSTの仕事内容は、言語コミュニケーションや嚥下に関する評価・訓練、集団での口腔嚥下体操、食事評価や介助などのST領域に関する業務に加え、利用者さんの生活介助やバイタル測定、運動リハビリの助手や送迎業務など多岐に渡ります。

デイサービスは施設によって特色が異なるため、STに求められる役割も施設によって大きく変わってきます。例えば、私が以前勤めていた言語デイサービスでは、配膳や手洗いの介助、送迎車までのご案内の他は、STリハと記録、評価に専念できる環境でした。

その時の施設のある1日をベースに、スケジュール例を作成しましたので、実際の勤務の参考にしてみてください。

時間業務内容
09:00~09:45スタッフミーティング、準備
09:45~10:00利用者さん来所 移動介助、検温、お茶配りなど
10:00~10:30集団体操
10:30~12:00個別リハ、集団リハ
12:00~13:00昼食、休憩
13:00~13:30体操、宿題の確認
13:30~15:00個別リハ、集団リハ、運動リハ助手
15:00~15:30おやつ配り、嚥下チェック
15:30~16:00利用者さん帰宅 移動介助、掃除、片付けなど
16:00~17:00事務作業(記録、評価)

デイサービスで言語聴覚士(ST)に求められること

デイサービスは、生活の一部としての位置づけであるため、楽しく安心してその人らしくあれる場を提供することが大切です。

STは、利用者さんが円滑にかつ適切にコミュニケーションできる環境を整えるため、スタッフやご家族に対して適切なかかわり方やコミュニケーションのポイントを伝えます。このように、専門的な視点をもって評価を行い、生活の場にいかに還元するかを工夫していくことが醍醐味となるでしょう。

また、長期に利用される方も多いため、嚥下やコミュニケーション、聴力、歯や口腔衛生、体力や呼吸状態などの軽微な変化をキャッチして対応する必要があります。

同僚スタッフは介護職が多いため、医療機関での経験も役立ちます。急変、脳血管疾患再発、認知症の進行などにいち早く気づけることも多いと思います。

デイケアで求められることとの違い

一般的に、デイケアでは利用者さんの心身機能の維持改善を主目的とするのに対して、デイサービスではより安定した日常を継続できるように環境を調整するという視点を強く持つことが必要です。

職場を選ぶ際には、デイケアかデイサービスかという違いよりも、職員配置やリハビリ環境、施設の方針などを参考にすると理想の職場に出会いやすくなります。

デイサービスがおすすめな人の特徴

デイサービスは長期利用者が多く、ゆったりとした安定した人間関係を築く職場です。裏を返せば患者さんの変化は緩徐であるため、目標達成を好む方には適さないかもしれません。

一方で、体操や生活介助も行うため、明るく元気で体を動かすのが好きな方に向いており、病院で行う専門的なリハビリよりも、利用者さんの社会生活を全人的に支える広義のリハビリに携わりたい方におすすめです。

3.放課後等デイサービスでの仕事

次に、放課後等デイサービスについてもみていきましょう。障害や発達に特性のある就学児向けの学童保育のようなサービスで、学校後の時間を子供たちが過ごす施設です。

言語聴覚士(ST)の基本的な仕事内容とスケジュール

放課後等デイサービスは施設によって特色があり、STの業務内容も大きく異なります。

個別療育、集団療育、学習支援、言語・発達検査、運動補助、イベントや生きがい作りなど、業務は多岐に渡りますので、次のスケジュールイメージはあくまで一例になります。

時間業務内容(平日)業務内容(長期休暇など)
09:00~10:00出勤・前日の残務整理(記録や片付け)出勤・送迎
10:00~11:00朝礼こども来所・朝の会
11:00~12:00設定保育、検査、訓練準備集団療育・個別療育
12:00~13:00昼食昼食
13:00~14:00送迎開始片付け・午後の準備など
14:00~15:00こども来所おでかけ
15:00~16:00おやつおやつ・帰りの会
16:00~17:00集団療育、個別療育送迎
17:00~18:00送迎、退勤退勤

子どもが来所するのは基本的に学校が終わってからになるため、午前中の空き時間を有効に使うことができます。

放課後等デイサービスでSTに求められること

言語・コミュニケーション・嚥下に関する専門的な視点をもって、個別療育や集団療育定保育の中で課題を解決できるようかかわり方やコミュニケーション手段を工夫します。

毎日の様子を伝える記録や定期的な面談を通して、保護者を支えるかかわりを持つこと、特別支援学校の先生との連携なども大切な仕事になります。

比較的新しい業態ですので、ST自身で業務内容を模索していく力も求められます。

放課後等デイサービスがおすすめな人の特徴

放課後等デイサービスは、6歳から18歳までの長期的なスパンで関わり、障害を持ちながらも自分らしく自立していく子どもを生活の場で支える仕事です。

療育に対する考え方やSTの働き方は施設によって大きく異なりますが、多職種の視点から発達障害を学びたい方、生活の場で実際の子どもたちの困りごとに寄り添いたい方にはおすすめです。

土曜日や夏休み中も営業するため、業務内容や勤務時間なども確認が必要です。

4.まとめ

高齢者であっても、子供であっても、障害を持ちながらも自分の住む地域でより自分らしく暮らせるよう支援することができるのが、デイサービスの特長です。

表面的な問題に対応するのみではく、その障害の特性や構造を熟知した専門家として、言語聴覚士(ST)の視点を生かして当事者とご家族の生活を地域で支える役割を担いたいものです。

今回の記事が皆さんの職場選びの参考になると幸いです。
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