呼吸器内科/外科でのリハビリというと、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)をイメージする方も多いと思いますが、令和2年の診療報酬改定により、言語聴覚士のリハビリテーションでも呼吸器加算がとれるようになりました。

それに伴い、言語聴覚士(ST)も同科で求められることが増え、活躍する場面も少なくありません。

今回は、そんな呼吸器内科や呼吸器外科に関するSTの仕事内容を紹介していきます。

呼吸器疾患の患者様に出会うことは多いので、ぜひ参考にしてみてください。

1.言語聴覚士(ST)と呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションは、学校や実習では中心的に学ばないので、印象が薄いかもしれませんが、STが関与する発声や構音機能と密接に呼吸機能は関わっています。

もちろん、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が主体でリハビリを行っているのですが、呼吸器疾患を患っている患者様は大変多く、STの活躍の場も少なくありません。

また、摂食・嚥下機能面でも咳嗽力は重要なので、呼吸機能の知識を深めていくことは、患者様の心肺機能の状態把握や、嚥下機能の評価の場面などでも役立っていきます。

2.呼吸器内科・呼吸器外科でのリハビリテーション

呼吸器内科・呼吸器外科では、呼吸器疾患に対して薬物療法で治療する方や、外科的手術で治療する方に対するリハビリテーションを行います。

呼吸機能が低下すると、肺での酸素と二酸化炭素の交換能力が低下し、ちょっとした運動でも息がきれて、動けなくなってしまいます。これに伴って筋力低下や意欲低下などがすすみ全身状態が低下するので、呼吸リハビリが必要になります。

リハビリ期間は疾患や重症度によって異なりますが、言語聴覚士(ST)が介入する入院中の患者様に対しては、10日~3か月程度が基本になります。

前述したとおり、ちょっとした運動や発声で、息がきれてしまうので、呼吸状態や脈拍、動脈血酸素飽和度を確認しつつ、呼吸を整えながら循環器症状に注意してリハビリを進めることが重要です。

また、日本リハビリテーション医学会によると、対象となる疾患は次のように紹介されています。

肺気腫、慢性気管支炎のような慢性閉塞性肺疾患、肺炎、神経や筋肉の病気による呼吸機能の低下、人工呼吸器をつけた状態、手術後で痰を出しにくい状態など

日本リハビリテーション医学会対象疾患とリハビリテーション治療の方法

3.呼吸器内科・呼吸器外科で行う言語聴覚療法

次に、呼吸器内科/外科での具体的な言語聴覚士(ST)のリハビリの仕事について見ていきます。

実際の臨床の場面では、「呼吸器内科/外科だけが対象の病院に勤める」ということはまれで、
「診療科目がたくさんある病院のなかで、呼吸器疾患もっている患者様を担当する」という形が多いかと思います。

一前述の通り、呼吸器疾患の患者様は、肺機能の低下により音声障害(声量低下、嗄声)や咳嗽力の低下、嚥下関連筋の筋力低下による摂食・嚥下機能障害を生じることが多いので、STはこれらの機能の改善を求められます。

例えば、声量低下や嗄声などに対する音声障害へは、呼吸筋のリラクゼーションや筋力増強訓練。腹式呼吸など、呼気を長く行えるようになるための訓練。バイタルサインに注意しながら声を大きく出す訓練。声帯を閉めて発声する訓練などを行います。

また、呼吸機能低下による全身状態の低下により、嚥下関連筋の筋力低下や喀出力の低下が生じ誤嚥性肺炎のリスクも高くなりやすいため、嚥下機能の評価やリハビリも必要とされます。

また、医師・看護師との全身状態に関する情報共有や、理学療法士や作業療法士との負荷量や、どのくらい急性すれば呼吸状態が落ちつくか情報共有することも重要です。

4.呼吸器内科/外科で働くスケジュールや勤務イメージ

呼吸器内科/外科における言語聴覚士(ST)のタイムスケジュールは、よくある病院勤務と同じです。

呼吸器疾患だけではなく、脳神経外科の疾患や廃用症候群など入院している様々な患者様をみながら、呼吸器疾患の方のリハビリを行うことが多いです。

時間業務内容
09:00~09:30朝礼、申し送り
09:30~12:00午前のリハビリ(1~3件)
12:00~13:00昼食(必要に応じて嚥下評価)
13:00~16:30午後のリハビリ(3~4件)
16:30~18:00カルテ記入、連携業務、書類業務など
18:00~帰宅。日によっては勉強会

5.言語聴覚士(ST)が呼吸リハビリでスキルアップするために

言語聴覚士でも取得できる、呼吸リハビリの専門性を高める資格として「呼吸ケア指導士」というものがあります。

これは、呼吸ケア指導士制度は日本呼吸ケア・リハビリテーション学会が2013年より導入した認定資格で、公式サイトによると次のように説明されています。

“呼吸障害をもつ人々の継続的ケアをチーム医療の中で実践するべく、呼吸ケアに関する最新の基礎的知識と臨床的技術を取得して、地域において指導的な役割を担っていける人材を認定し支援していくシステム”

取得方法などは下記記事をご参照していただき、スキルアップの一助にしてください。

また、ちなみにですが呼吸リハビリに関する資格として上記のほかに「呼吸療法認定士」がありますが、こちらは言語聴覚士では取得できないので注意が必要です。

6.まとめ

呼吸リハビリテーションは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)が中心となって行うことが多いですが、言語聴覚士(ST)も活躍できます。

具体的な呼吸器内科・外科での業務は、呼吸機能低下による声量低下や嗄声、嚥下障害などに対する訓練で、勤務の一日の流れは、よくある病院勤務とほとんど同じです。

呼吸器疾患の患者様は、息切れや疲れ、身体機能低下にともなう意欲減退がみられるので、全身状態はもちろん、顔色やその日の調子をよく観察することが大切で、焦らず気持ちに寄り添いながらリハビリすることが大切です。

人と関わるのが好きな性格や、細かいところに気づきやすい人は呼吸器疾患の患者様と相性が良いのでやりがいを感じやすいかもしれません。

また、専門性を高める資格として呼吸ケア指導士というものがあるので、習得してスキルアップを狙ってみるのもおすすめです。

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【引用サイト】
日本リハビリテーション医学会
対象疾患とリハビリテーション治療の方法