「患者さんの力になりたい」「自宅や仕事への復帰を支援したい」といった気持ちはPTとして働く上でとても大切になってきます。ですが、そういった気持ちだけで働き続けることはできませんよね。
自身の働きの対価として、どのくらい給与が貰えるのかはとっても重要だと思います。転職を検討する際も、給与面の情報を最初に確認する方は多いのではないでしょうか。
今回はそんなPTの給与事情について詳しく見ていくことにします!実際にPTはどのくらいの給与をもらっているのか、調べてみるのは大変だと思いますので、是非参考にしてみてください!
目次
1.理学療法士(PT)の平均年収・給料
まずはPTの平均年収と給料について見ていきましょう。
PTの月給や賞与
2022年の3月末に公表された厚生労働省の賃金構造基本統計調査の結果によると、残業代や交通費なども含んだ2021年の理学療法士の年収は統計上4,265,400円となっており、前回の調査より76,000円UPしております。
また、残業代などを除いた年収も4,131,000円となっており、前回の4,085,000円より46,000円高くなりました。
残業代などを除いた月給で見ると281,900円が284,800円に、賞与で見ると702,200円が713,400円に増加しており、残業代なども高まってはいるものの純粋に給与が増えていることが分かります。
そのため、2021年度のPTの平均年収は約426万円ということがわかります。
ただ、こちらは10人以上の従業員がいる企業規模のデータを記載していますので、職場の規模によっては多少変動します。また、こちらの章で使用しているデータは理学療法士だけでなく、作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)、視能訓練士の合算データであり、PT単独でのデータではない点にご注意ください。
少し年収が上がったと言っても、現場で働くPTの方からすると、労働内容や労働環境の対価としては少し年収が低いのではないかという思いは依然としてあるでしょう。
ただ、PTが提供する介入に関しては、まだまだ科学的根拠(エビデンス)の蓄積が十分でないものも多く、Evidence-Based Medicine(EBM)が重要視される今日においては、診療報酬がなかなか上がらないのが現状です。
PTが行う介入方法およびその効果に関して質の高いエビデンスを示す、保険内診療以外の場面での付加価値を生み出すなどでPTの社会的な立場が向上させることで、診療報酬と併せて給与の上昇につながるかもしれません。
男性の年収約443万円、女性の年収約407万円
同じ統計を元にPTの給与を男女で分けてみると、男性は4,429,800円であり、女性は4,072,100円となります。ただ、この金額は役職者込みの金額であり、役職者を除くと男性は4,167,900円、女性は3,933,300円になります。
いずれも、前回の調査時より年収が高まっている傾向にあります。また、男性と女性の年収差も埋まっており、役職込みで413,600円あった差が357,700円に、役職を除いた場合281,600円あった差が234,600円と、どちらのケースでも5万円前後男女差がなくなっていることが分かります。
働き方改革や同一労働同一賃金制の導入、ジェンダーレスやジェンダーフリーなどの重要性は増しており、男性だから、女性だからと言った理由で仕事上の役職や雇用形態による賃金に差がでてくることは少なくなっているのかもしれません。
しかし、依然として女性の方が役職者有り無しの差が小さくなっており、管理職の割合はまだまだ男性が多く、非正規で働くことを選ぶ女性が多いことが考えられます。
2.2010年から2021年の年収推移
同じく賃金構造基本統計調査から、次は過去11年間の理学療法士(PT)の年収の推移をみていきましょう。
2019年以前のデータでは役職者が含まれているものがなく、男女合わせたものがありませんので、ここでは役職者を除いた男女別の年収推移を見ていきましょう。尚、2019年以前のデータはPTOTの合算値でしたが、2020年からはPTOTに加えSTと視能訓練士も含まれています。
2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 | 2015年 | 2014年 | 2013年 | 2012年 | 2011年 | 2010年 | |
男性 | ¥4,167,900 | ¥4,145,600 | ¥4,221,800 | ¥4,170,300 | ¥4,124,600 | ¥4,190,400 | ¥4,160,700 | ¥3,980,400 | ¥4,102,600 | ¥4,137,800 | ¥4,113,900 | ¥4,041,800 |
女性 | ¥3,933,300 | ¥3,864,000 | ¥3,942,700 | ¥3,989,200 | ¥3,966,700 | ¥3,933,700 | ¥3,918,200 | ¥3,802,500 | ¥3,831,800 | ¥3,782,300 | ¥3,814,300 | ¥3,741,500 |
コロナ禍が始まった2020年においても大きく減少しておらず2021年には回復傾向にあるところを見ると、景気に左右されず安定的に収入を得られる職業であると考えられます。
一方で、保険内診療で介入が行われる限り、大きく年収がアップすることも少ない側面を持っていることも見てとれます。
3.今後理学療法士の平均年収・給料は上がる?
理学療法士は、将来的に大幅な昇給が難しい職業とされていますが、平均年収は今後どのように推移していくのでしょうか。理学療法士の現状と将来の見通しについて、解説していきます。
理学療法士の数は増え続けている
2024年度時点での公益社団法人日本理学療法士協会の会員数は139,556人に達し、2012年度の83,939人から55,617人の増加が見られます。高齢化による需要増がある一方で、理学療法士の数が過剰であるため、供給が需要を上回っているのが実情です。
また、2024度の国家試験合格者数は11,266人で、年々増加しています。理学療法士は給与を引き上げなくても人材が集まるため、給与上昇は難しい見通しです。
今後は就職競争が激化し、スキルの低下が懸念される可能性もあります。理学療法士として求められる存在であり続けるには、スキルを磨き続けることが重要です。
第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について
経験・スキルが給与に反映されづらい
理学療法士の診療報酬は時間単位で設定されており、効率よく点数を稼ぐことが難しいです。リハビリは1単位20分で、8時間勤務時は最大24単位ですが、実際は平均18〜24単が多いようです。また、リハビリの種類によって単位数に制限があり、上限を超えると指導対象となります。このため、経験を積んでも収入に変化がないため、長年の理学療法士は給与に不満を感じやすい傾向があるといえるでしょう。
理学療法士の活躍の幅は広がっている
高齢者の増加に伴い、理学療法士の活動は病院やクリニックなどの医療業界から介護業界へと広がっています。地域での予防介護や地域包括ケアシステムへの参加など、理学療法士の知識が求められる機会は増加する見込みです。また、スポーツや研究・教育分野でも理学療法士の需要が高まっています。さらに、大学院に進学して、理学療法についての研究に従事する理学療法士なども増えてきているようです。
4.理学療法士(PT)が高収入をめざす方法
PTが高収入をめざす方法について見ていきましょう。
基本は年齢と経験を積み重ねていく
PTも他の多くの業種と同じように、経験年数と共に給与がアップする場合が多いです。
次の表で見てみると、働き始めた20代前半よりも経験を積んだ50代前半の方が給与は高いことが分かります。
20-24歳の月給×12ヶ月 | 2,934,000円 | 50-54歳の月給×12ヶ月 | 4,389,600円 |
20-24歳の賞与 | 352,000円 | 50-54歳の賞与 | 1,005,300円 |
20-24歳の年収 | 3,286,000円 | 50-54歳の年収 | 5,394,900円 |
また、PTの場合は勤続年数によっても年収に違いが見られます。経験やスキルが充実してくる35歳~39歳であっても、次のように同じ職場での経歴の長さで年収は大きく変わってくることも示されています。
経歴1~4年の月給×12ヶ月 | 3,220,800円 | 経歴15年以上の月給×12ヶ月 | 3,704,400円 |
経歴1~4年の賞与 | 640,800円 | 経歴15年以上の賞与 | 805,800円 |
経歴1~4年の年収 | 3,861,600円 | 経歴15年以上の年収 | 4,510,200円 |
このように、同じ年齢であっても、経歴が違えば年収額にも大きな差がでてきますので、自分が働きやすい職場で長く務めることが年収アップにもつながりそうですね。
これらの表をみて分かるように、多くの職場で勤続年数での昇給が一般的になっています。病院や施設などで保険内診療で患者さんを診る限り、能力の優劣に関わらず誰が対応しても時間当たりの報酬額は一定なので、このあたりの制度が大きく変わることはなさそうです。
では、長く務めること以外にもPTが年収を上げる方法はあるのでしょうか?
以下にいくつか例を紹介しますので、参考にしてみてください。
専門性を身に付けるため、認定資格や別の資格を取得する
理学療法士は、日本理学療法士会が提供している生涯学習制度を活用できます。この制度に参加し、前期・後期の研修を受けることで登録理学療法士の資格を得ることができ、その後は認定理学療法士や専門理学療法士といったより専門的な資格の取得を目指すことも可能です。登録理学療法士、認定理学療法士、専門理学療法士はいずれも認定資格であり、取得後は5年ごとに更新が求められます。
資格取得について詳しく知りたい方は以下を参考にしてください。
認定理学療法士とは~理学療法士(PT)の認定資格の総まとめ~
管理職など組織のマネジメントを担う立場になる
病院や施設の役職のあるポジションに就くことができれば、管理職手当などの支給もあり年収アップにつながる可能性があります。
独立・開業を検討する
「理学療法士」の資格のみでは医療保険の対象事業所を開業できませんが、以下のように理学療法を単独で行わない形であれば開業が可能です。
- 無資格者でも施術ができる「整体院」
- 介護予防事業所
また、開業権のある国家資格を取得するという選択肢もあります。
- 柔道整復師
- 鍼灸師
- あん摩マッサージ指圧師
独立・開業や開業権のある国家資格ついて詳しく知りたい方は以下を参考にしてください。
柔道整復師と理学療法士(PT)の違いとは?ダブルライセンスや難易度を解説
自費リハビリなど保険外診療を行っている企業等に就職する
医療保険や介護保険内での診療と違い、継続的に顧客を獲得することができれば大きく報酬をアップさせることも可能です。
自身のスキルに自身があるならチャレンジしてみるのも良いと思います。
副業をする
近年では副業を許可している職場も徐々に増えているようです。
スキマ時間に副業をするのも年収をアップさせる手段の一つです。PTとして働く傍ら、趣味や特技を仕事につなげることができれば尚良さそうですね。
非常勤で働く
デイサービスや訪問リハビリの職場には、週1日から可能な非常勤の仕事もあります。休みの日に他の施設で働くことで、リハビリの経験を広げ、人脈形成の機会も得られるかもしれません。
スポーツトレーナーとして活動
スポーツトレーナーは多くが個人で契約し、休日限定の仕事も可能な場合が多いようです。プロとの契約はハードルがあるものの、地域のスポーツ団体や企業チームでスキルを活かせるチャンスはあるでしょう。
セミナーの開催
理学療法士としての知識を活用し、セミナーを実施するのも一案です。理学療法士同士や一般向けの健康セミナーなど、自分の得意分野に合わせて内容を選ぶと良いでしょう。ただし、開催には実績と専門性が求められるでしょう。
ライターとして執筆にチャレンジ
理学療法士が持つリハビリや健康に関する知識を活かしてライター活動を行うことは、専門性を広める良い機会です。医療や健康、運動に関するコラムや記事を執筆することで、一般の方に貢献しながら収入の確保にも繋がるかもしれません。
高年収の職場に転職
理学療法士が働ける職場は幅広いものの、給与水準は職場によって異なるのが実情です。高収入を目指すには、年収が高めの職場へ転職する方法もあります。
この章では、年収が比較的高めの職場を紹介します。
介護施設や在宅リハの現場
日本の高齢化により、介護施設や訪問リハビリの需要が増えていますが、理学療法士の多くは病院・クリニックに勤務しているため、介護業界では働きやすい環境を整える施設が増加中です。高めの給与や、訪問リハビリに歩合制を採用している施設もあるため、収入面を重視する方は一度検討してみると良いでしょう。
従業員数の多い事業所
大きな病院や施設は福利厚生が整っており、働きやすいとされています。また、給与水準も高めで、特に賞与の面では従業員数が1,000人以上の事業所と小規模事業所で10万円以上の差が出ることもあります。高収入をめざすなら、従業員規模にも目を向けてみましょう。
一般企業
理学療法士として同じ職場で勤務していると、昇給があまり期待できない場合があります。そのため、一般企業へ転職することで昇給額が増え、長期的には収入が向上することもあるでしょう。福祉用具や福祉機器、住宅分野では、理学療法士としての知識を活かしながら働けるでしょう。
5.高収入をめざす理学療法士が転職時に注意するポイント
この章では、収入アップを中心に考えた場合の転職におけるポイントをお伝えします。これらの注意点を押さえたうえで、転職活動を進めていきましょう。
施設規模の大きさと給料の高さは比例する傾向
施設規模が大きいほど給与水準が高くなりやすい傾向があるようです。とりわけ賞与の差が大きく、大規模な施設では待遇が整い、役職に就いた際には責任範囲の拡大に伴い手当額が増えるケースが多いです。
運営母体が国公立か私立かでも差がある
施設の規模や性質による給与の差がある上に、国公立と私立の違いも影響します。国公立は初任給が低いものの、昇給しやすい傾向があり、私立はその逆です。各施設で状況は異なるため、長期的な視野をもって自分に合った施設を選びましょう。
年代によっては転職検討に十分な配慮が必要
理学療法士の平均年齢は35歳前後で、若手が多い職業とされています。国家資格としては1965年に始まったものの、当初は認知度が低く取得者も少数でしたが、1999年の規制緩和後に資格者が増え、職業としても広く認知されるようになりました。現在、40歳以下の資格者が約70%にのぼり、20〜30代が中心です。40代以上の方が転職する際は、職場で年下の先輩が多くなる可能性があるため、平均年齢を確認しておくとよいかもしれません。
学歴はある程度意識することが求められる
理学療法士の受験資格を得るには、4年制大学、3年制の短期大学、もしくは3年制・4年制の専門学校の教育課程を修了することが必要です。待遇に大きな差はありませんが、大規模施設では大卒が優遇される場合もあります。資格取得前の方は、将来のキャリアを見据えて資格取得方法を選びましょう。
6.理学療法士は30代以降に収入アップが見込める
理学療法士は若いうちは給与の伸びが緩やかですが、長く続ければ大きな昇給が期待できます。介護分野の需要増加や勉強を通じたキャリアチェンジの可能性も広がり、向上心があれば多様な分野で挑戦できる職業です。
希望の年収額などがある場合は、PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。あなたの条件に合った転職先が見つかるように、しっかりとお手伝いさせて頂きます。
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【参照サイト】
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令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年 賃金構造基本統計調査 【参考】職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
賃金構造基本統計調査 職種別第2表