自身のキャリアを考えた際に、スキルアップのために資格取得を検討する人も多いのではないでしょうか。

しかし、理学療法士免許取得後の認証資格には、どのようなものがあるかイメージしにくい人も多いかもしれません。

そこで今回は、理学療法士(PT)のスキルアップにつながる認証資格の種類や取得方法などについて2023年度の最新情報を交えて、ご紹介していきます。

スキルアップや認証資格に興味のある人はぜひ参考にしてみてください。

1.理学療法士の認定資格(生涯学習制度)について

日本理学療法士協会では、理学療法士(PT)の質向上や、専門分野における職務的水準の引き上げを目的とし、協会が主体で実施する卒後教育として生涯学習制度が運用されています。

2021年3月までは、経験年数の浅いPTに向けた座学中心の新人教育プログラムを軸としていましたが、2022年4月からは、新人教育プログラムが廃止され、新たに登録理学療法士制度を導入した新生涯学習制度がスタートしました。

新生涯学習制度の基盤ともいえる登録理学療法士制度は、多様化するニーズに応えうるPTを育成し、専門職としての質を保証するために「5年ごとの更新制」を取り入れ、PTの能力を高めることが目標とされています。

そして登録理学療法士としての学びや経験を基盤に、各領域のスペシャリストとして学術的思考性の高い専門理学療法士と臨床実践に秀でる認定理学療法士を認証し、登録理学療法士同様に5年更新制とすることで生涯にわたる知識や技術の維持・更新を促す働きかけをしています。

新生涯学習制度では、登録理学療法士のカリキュラムを修了していることが専門・認定理学療法士の申請条件とされ、専門・認定理学療法士になるには最短でも卒後5年はかかるようになり、以前よりも資格取得に必要な時間が大幅に増えることになりました。

しかし、就職先が設ける卒後教育に頼らざるを得ない状況から、等しく質の高い卒後教育を受けられる環境が整えられつつあるため、PTの人数が増え続けている現在、そしてこれからのPTにとって必要な制度であるといえるでしょう。

2.登録・認定・専門理学療法士の特徴

2022年に新制度がスタートし、日本理学療法士協会が認証する資格は登録理学療法士、専門理学療法士、認定理学療法士の3つになりました。

新人だけでなく旧新人教育プログラムを修了した理学療法士にとっても大きな変革となり、今後も制度の見直しにより調整されていくことが予想されます。

制度の見直しにより各資格の取得方法などが変わることも考えられますが、2023年現在での各資格の特徴や、取得方法について詳しくみてみましょう。

登録理学療法士

登録理学療法士は、2022年4月の登録理学療法士制度の開始とともに登場した日本理学療法士協会による認証資格です。

PTの資格取得後(養成学校卒業後)に前期研修(座学33時間、実地研修48時間)及び後期研修(座学76.5時間、実地経験3年)を履修することで登録理学療法士となります。

前期研修は最短2年、後期研修は最短3年で履修可能となっており、前期研修では必要に応じて指導を求めながらも基礎的な理学療法を実践できるレベルになること、後期研修では多様な領域で標準的な理学療法を臨床実践でき、学生や後輩を指導できるレベルになることを目指します。

前期研修・後期研修ともに修了時の試験はなく、講義の受講や実地研修を終え、後期では症例検討会の参加など全てのカリキュラムを修了することで資格を取得可能です。

登録理学療法士は5年ごとの更新制となっており、資格を取得後も継続的な自己学習や研修に参加することが求められています。

2022年6月時点で、すでに全国で6万人以上の登録理学療法士が誕生しており、今後も増えていくことが予想されます。

認定理学療法士

認定理学療法士には、脳卒中、神経筋障害、脊髄障害、発達障害、運動器、切断、スポーツ理学療法、徒手理学療法、循環、呼吸、代謝、地域理学療法、健康増進・参加、介護予防、補助具、物理療法、褥瘡・創傷ケア、疼痛管理、臨床教育、管理・運営、学校教育の21項目の認定分野が設けられています。

主に臨床実践に秀でたジェネラリストとしての活躍が期待されており、認定理学療法士の資格を取得することは、その分野において高い専門的なキャリアや知識を身に着けている証明になり、活躍の場も広がるとされています。

2022年6月時点で延べ16,823名、実数14,594名の認定理学療法士がおり、年々取得者数は増えています。

専門理学療法士

専門理学療法士は、基礎理学療法、神経理学療法、症に理学療法、運動器理学療法、スポーツ理学療法、心血管理学療法、呼吸理学療法、糖尿業理学療法、地域理学療法、予防理学療法、支援工学理学療法、物理療法、理学療法教育の分野に分かれます。

以前は基礎、神経、運動器、内部障害、生活環境支援、物理療法、教育管理の7分野でしたが、より細分化され国民にも変わりやすい名称へと変更されました。

申請条件の中には、査読を通過した信頼性の高い論文や著作の実績が必要であり、臨床で働きながら申請条件を満たすことは大変難しい面もあります。

そのためか専門理学療法士は2022年6月時点で延べ4,188名、実数1,715名いますが、認定理学療法士に比べると数は少なくなっています。

認定理学療法士の臨床認定カリキュラム教育機関の講師や、学術大会での演題査読なども担えるなど、登録理学療法士や認定理学療法士とは一線を画した資格でもあり、研究職や教育現場など臨床以外の選択肢も広がります。

3.理学療法士の認定資格を取得する条件

登録理学療法士

日本理学療法士協会へ入会後、前期研修・後期研修を履修することで資格を取得できます。
前期は基礎的な内容ですが、後期には士会主催症例検討会または士会承認症例検討会での症例発表が努力義務とされています。

また、座学、症例検討会への参加のほかに、実地研修・実地経験も必修です。
実地研修には、日本理学療法士協会会員かつ登録理学療法士による実地研修の指導が必要であり、協会作成のガイドラインに沿った研修が行われます。

修了時の試験などはなく、全てのカリキュラムを修了することで登録理学療法士となれますが、5年毎の更新制が設けられているため、更新までの5年間で必要なポイントを獲得しなければ資格を継続することができません。

また、専門・認定理学療法士の資格を保有していても登録理学療法士の更新ポイントや更新手続きは別途必要になるので注意しましょう。

認定理学療法士

登録理学療法士の履修カリキュラムを修了し、指定研修カリキュラム及び臨床認定カリキュラムの受講・日本理学療法学術研修大会の参加を終えることで認定理学療法士の申請条件を満たします。

臨床認定カリキュラムは、全国各地にある教育機関で受講する必要があり、教育機関となる施設は認定分野により異なります。2023年3月時点で、脳卒中で51施設、運動器36施設ありますが、該当施設が全国で1施設のみの認定分野や2023年度には開講がない認定分野(褥瘡・創傷ケア、疼痛管理)もあるなど、認定分野によってカリキュラムの受講のしやすさも変わってきます。

これらの申請条件を満たし、申請が受理されたのち、認定試験に合格をした人が認定理学療法士の資格を得られます。

認定理学療法士も5年更新制となっており、更新の要件には学会発表や更新時研修の受講などが必要です。登録理学療法士の更新ポイントとの重複は認められていないため、別途登録理学療法士の更新に必要なポイントも獲得しておかなければいけません。

専門理学療法士

登録理学療法士を取得し、①日本理学療法士協会が指定するカリキュラムの受講、②ブロック学会及び都道府県学会参加、③日本理学療法学会連合の会員団体が主催の学術大会での発表、④日本理学療法士協会が定める点数基準に該当する査読付き原著論文1編の要件を満たすことで申請ができます。

申請後、外部有識者を含めた2~3人の面接官による口頭試問で合格した人が専門理学療法士に認定されます。

専門理学療法士も5年更新制であり、更新要件は認定理学療法士と同じ要件となります。論文・著作は協会が指定する雑誌への採択もしくは掲載されていることが条件となるため、高い学術レベルが求められるなど、資格取得の難易度は高いといえるでしょう。

4.認定・専門理学療法士制度のメリット

認定・専門理学療法士を取得するためには、自己研鑽が欠かせず、高度なスキルや経験、豊富な知識が常に求められます。取得に労力を要する上に5年ごとの更新となり、論文作成や学術大会での発表など更新要件を満たすことは容易ではありません。

そのため認定・専門理学療法士を取得していることは、それだけで本人の意識の高さと努力を示すものになるため、転職の際にも大きなアドバンテージになります。

また、施設によっては資格を保有していることで手当が出たり、昇給につながったりする場合もあるほか、将来的に資格を保有していることで診療報酬の加算対象となる可能性も秘めている点も大きなメリットといえるでしょう。

5.まとめ

旧生涯学習制度では新人教育プログラム終了後に取得できる認証資格が認定・専門理学療法士のみでしたが、登録理学療法士制度の誕生により、継続的な学びが資格に反映されやすくなりました。

自己研鑽を重ねる動機付けにもなり、理学療法士(PT)全体の質の向上につながるため、将来的なPTの地位向上にもつながることでしょう。

また、卒後教育の充実により新人教育の在り方も変革の時を迎え、今後はより専門性の高い職業として魅力が増していくのではないでしょうか。

以前よりも研修や学会発表などに触れる機会も増えるため、専門・認定理学療法士へ挑戦しやすくなるなどメリットも多いので、ぜひ前向きにとらえ自己研鑽をしていけると良いですね。

PTOT人材バンクは資格を生かした転職サポートも行っておりますので、キャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
理学療法士(PT)の求人・転職情報はこちら

関連記事

理学療法士(PT)のキャリアに関するおすすめ記事をご紹介。

【引用サイトURL】
前期研修 概要 4ページ目
後期研修 概要 4ページ目
日本理学療法士協会ホームページ
登録理学療法士制度について

登録理学療法士取得者数

【参照サイトURL】
日本理学療法士協会
生涯学習

日本理学療法士協会ホームページ
各資格の取得状況

認定理学療法士制度3ページ
認定理学療法士の認定分野

日本理学療法士協会ホームページ
認定・専門理学療法士制度について
認定理学療法士の取得(取得概要はこちら)

専門理学療法士制度
専門理学療法士の認定分野

認定理学療法士臨床認定カリキュラム教育機関
教育機関一覧