理学療法士(PT)を目指している学生にとって、学生生活で最も重要な1日と言える国家試験受験日。

受験日には、既に就職先が決まっている人がほとんどなので、本人だけでなく就職先の先輩PTもハラハラしながら試験当日を迎えることがあります。

そんな理学療法士国家試験ですが、実際にはどのような試験が行われているのか気になりますよね。

今回は、PTを目指している人へ理学療法士国家試験の受験方法や試験内容について分かりやすく紹介していきます。

1.近年の合格者数・合格率

この章では近年のPT国家試験合格率について見ていきましょう。

第58回は合格率87.4%

全体では第57回と同程度の合格率でしたが、新卒者の合格率は94.9%とかなり高い数字になりました。

不適切問題は第57回が12問と例年以上の多さでしたが、第58回は例年と同程度の7問となりました。不適切問題は採点除外等の扱いになるため、合否への影響は昨年より少なかったと予想されます。

受験者数新卒者合格者(合計)合格率(新卒)合格率(合計)
2023年(第58回)12,948人10,824人11,312人94.9%87.4%

合格率は80~90%を推移

過去7年間の試験結果は以下の通りです。

2016年以降の合格率ですが、全体では最低が74.1%、最高が90.3%、新卒者では最低が82.0%、最高が96.3%となっています。

難易度や不適切問題の数が年度によって異なり、試験を受けた年によっては多数の受験者が苦戦することもあります。過去の合格率を見ても新卒者は80%を下回ることはありませんが、出題傾向が前年から大きく変更になる場合もあり油断は禁物です。

理学療法士の数は年々増え続けており、今後の試験も難易度が上がることはあっても大きく易化することは考えにくいでしょう。

受験者数新卒者合格者(合計)合格率(新卒)合格率(合計)
2022年(第57回)12,685人10,549人10,096人88.1%79.6%
2021年(第56回)11,946人10,522人9,434人86.4%79.0%
2020年(第55回)12,283人10,749人10,608人93.2%86.4%
2019年(第54回)12,605人10,608人10,809人92.8%85.8%
2018年(第53回)12,148人11,520人9,885人87.7%81.4%
2017年(第52回)13,719人10,721人12,388人96.3%90.3%
2016年(第51回)12,515人10,562人9,272人82.0%74.1%

2.理学療法士(PT)の国家試験を受けるには

PT国家試験の受験資格を得るためには、養成校で最低でも3年以上学び、必要な知識と技術を身につけることが必要です。具体的には、4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制または4年制)があります。

全国のPT養成校はこちらをご覧ください。
日本理学療法士協会 理学療法士養成校一覧

3.第59回理学療法士(PT)国家試験の概要

この章では理学療法士(PT)国家試験の概要についてご紹介します。

試験日程

理学療法士国家試験は年1回、例年2月下旬に実施されます。2024(令和6)年度の第59回理学療法士国家試験は、2月18日(日)・19日(月)実施予定です。試験期間が2日間になっていますが、19日(月)は重度視覚障害を持つ受験者用の口述試験及び実技試験実施日のため、該当しない場合は18日(日)のみが受験日となります。

出願から合格発表までのスケジュール

例年9月上旬に厚生労働省から受験概要の発表があり、9月下旬に各学校に受験願書が配布、12月中旬~1月上旬に願書提出、1月下旬に受験票交付、2月下旬に試験、3月下旬に合格発表という流れです。国家試験合格後には免許登録の手続きを行い、免許申請書と診断書が必要となります。2024(令和6)年度の第59回は、3月21日(木)14:00に合格者が発表される予定です。合格発表は厚生労働省ホームページの「資格・試験情報」に、受験地と受験番号が掲載されます。

解答発表について、正答は合格発表と同時に発表され厚生労働省のホームページで確認可能です。出題内容に不適切問題や誤りがあった場合は採点除外・全員正解等の処置がとられる場合もあります。試験実施直後に解答速報が出る場合もあり自己採点には使用できますが、非公式のものとなります。

試験会場

筆記試験の開催地は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県、口述試験及び実技試験は東京都となっています。

会場が遠方の場合は前日から会場近くのホテルに宿泊する学生もいるようですが、宿泊を伴わない場合は電車の遅延などにも対応出来るよう交通手段を検討しておくとよいでしょう。

試験科目・試験形式・問題数・試験時間

理学療法士国家試験は、一般問題及び実地問題に区分して出題されます。それぞれの問題の詳細は後述します。

午前・午後に各20問、合計40問の実地問題と午前・午後の各80問、合計160問の一般問題が出題されます

合格基準は採点除外により毎年わずかに変動があります。2023(令和5)年開催の第58回では、実地問題は1問3点の120点満点、一般問題は1問1点の158点満点となり、総得点は278点満点。合計点が167点以上かつ実地問題の得点43点以上が合格ラインとなりました。

マークシート式で5つの選択肢の中から1つ又は2つの正解を選択する試験方式で、午前と午後に100問ずつを2時間40分かけて解答していくため、かなりの長丁場となります。

1問1問が専門性の高い問題になりますが、1問毎に時間を多くかけることができないため、問題毎への時間配分も重要です。

試験問題と正答はこちらを参照ください。
第58回理学療法士国家試験、第58回作業療法士国家試験の問題および正答について

試験委員

例年9月に発表されています。2024(令和6)年度の第59回は委員長1人、副委員長1人、委員35人で構成され、詳細は厚生労働省のホームページで確認することができます。

2024年実施予定の第59回理学療法士国家試験の詳細については、以下をご参照ください。
【第59回理学療法士国家試験 試験委員名簿】

試験を受けるための手続きについて

理学療法士国家試験を受験するためには、定められた書類を準備し、期日までに特定の場所へ郵送又は直接提出する必要があります。受験手続きに際し必要なものは以下のとおりです。

受験願書 

理学療法士及び作業療法士法施行規則様式第5号という専用の書類を用意します。理学療法士国家試験運営本部事務所や臨時事務所から取り寄せるのが一般的です。

弱視用試験や点字試験、読み上げ又は点字試験と読み上げを希望する場合は、受験願書の右上に該当する希望を朱書きするなど細かな決まりもあるので注意しましょう。

願書の氏名は戸籍抄本に記載されている文字で記入する必要があるため、確認が出来るよう事前に用意しておくなど余裕をもって準備しておきましょう。

写真及び写真台紙

出願前6か月以内に脱帽正面で撮影した写真を使用します。縦6センチメートル、横4センチメートルで裏面に撮影年月日と氏名を記載し、理学療法士国家試験運営本部事務所もしくは臨時事務所が交付する受験写真用台紙に貼り付けて提出をします。

また写真については、写真の人物が受験者本人と相違がないかを確認するため、養成施設もしくは上記運営事務所で本人確認を受ける必要があります。

返信用封筒

規定の大きさの封筒を用意します。

修業証明書や卒業証明書、見込証明書

理学療法士国家試験を受験するには、養成施設で3年以上理学療法士として必要な知識と技能を習得した証明が必要になります。

そのため、第59回理学療法士国家試験を受験予定の方は、養成施設を卒業又は2024(令和6)3月15日(金)までに修行し卒業する見込みであることを証明する修行証明書、もしくは修行見込証明書、卒業証明書、もしくは卒業見込証明書の提出が必要です。

外国で理学療法に相当する免許を取得している人などは必要書類が異なるので、ホームページで確認するようにしましょう。

受験手数料(収入印紙)

受験手数料10,100円に相当する収入印紙を受験願書に貼ることにより納付します。

国家試験の概要はこちらを参照ください
理学療法士国家試験の施行

4.理学療法士(PT)国家試験の内容

理学療法士国家試験は、一般問題及び実地問題に区分して出題されます。それぞれの問題の詳細について見ていきましょう。

一般問題

一般問題の科目は「解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法」です。

上記の科目の中で理学療法以外の科目は作業療法士の国家試験と共通の科目になっており、専門職として知っておくべきである一般的で基礎的な医療知識が問われます。例えば「心臓の機能や解剖」「筋の支配神経」「身体の免疫機能」などについての問題が出題されています。

理学療法の科目に関しては専門科目とも言われ、理学療法士としての専門知識を問われる問題が出題されます。理学療法の科目は基礎理学療法学、理学療法評価学、理学療法治療学、地域理学療法学、臨床実習の5つの内容に分類でき、それぞれの内容から満遍なく問題が出題されます。

例えば「正しい関節可動域の測定方法」「理学療法プログラムの内容」「物理療法の適応と禁忌」などが該当します。理学療法評価学(関節可動域測定や徒手筋力テストについて)、理学療法治療学(物理療法、運動療法について)の出題頻度は高いと言えるので、おさえておくと良いでしょう。

実地問題

実地問題の科目は「運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法」です。

実地問題は一般問題とは異なり、知識のみでなく思考力も問われる問題になっています。例えば、具体的な症例の現病歴がイラストやX線写真、検査結果などと併せて提示され、適切な理学療法プログラムや病態の選択などを求める問題などが出題されます。

一つの科目のみならず、複数の科目の知識を組み合わせなければ解決できない問題も多いため、幅広く複合的な知識が必要になってきます。

1問3点と配点比率も大きく、実地問題に関しては40問中の3割程度(12問)は正答していなければ不合格となってしまうため、しっかり対策をする必要があるでしょう。

5.理学療法士(PT)国家試験の勉強方法

国家試験の勉強方法は、人によって適している方法が異なります。また、勉強に充てられる時間も変わってくるため一概にこういった勉強法が良いというものはありませんが、一般問題、実地問題それぞれについて私の経験も含めて勉強法の例をご紹介します。

一般問題

まずは過去問を一通り眺めてみてどのような問題が出されるのか把握します。現在の知識で解けるもの、解けないものに分類すると自分の得意分野と苦手分野が分かってくると思うので、できるだけたくさんの過去問にあたってみましょう。

得意と苦手の傾向がわかったら、苦手なところを中心に問題を解いていきましょう。間違えたところは解説を読みながら要点をまとめていきます。問題集や参考書は解答の解説がしっかりしているものを選ぶのが良いと思います。 大切なのは解答を暗記するのではなく、一つ一つの問題の選択肢を見たときになぜ間違いなのか、正解なのかが理解できるようになることです。自分自身でしっかり説明できるくらいに解説を読みこみましょう。間違えた問題の解説は読むだけではなく、ノートにまとめた方が整理しやすいという人もいますので、自分に合った勉強方法を早めに見つけましょう。

実地問題

実地問題もまずは傾向を知るために過去問を見てみましょう。問題数はそれほど多くないため、過去5年分くらい遡ってみるとどういった問題が出題されやすいか分かってくると思います。

特に専門科目の問題は出題頻度が高く、関節可動域測定や徒手筋力テストの検査方法、症例に合わせた治療法の選択、また評価結果の解釈などはしっかりおさえておくと良いでしょう。

時々、一般問題と実地問題のどちらかに重点を置いて勉強をしようとする人がいるようですが、どちらも重要ですので一方に絞るのは大変危険です。どうしても時間がない場合は、両方に重なる分野の理解を深めることに重点を置き、両方の問題に対応できる力をつけましょう。

苦手と感じている人が多い科目について

一般問題・実地問題ともに、臨床実習で活用できるような科目については比較的頭に残っていることが多いと思います。私の印象ですが、小児の理学療法や発達、各種計算問題(METsや力学モーメント)や精神障害と臨床医学などの内容は苦手な学生が多く、勉強に時間を割く必要があった記憶があります。

苦手分野についてはたくさんの問題集や参考書に手を出すよりも、同じものを何周もする方が頭に入りやすいこともあるので、個人的にはおすすめです。

最近ではアプリやSNS、ブログなどで国家試験の対策が発信されていることも目にします。苦手と思っている人が多い分、それに応じて対策方法が多く紹介されている可能性もあるので、そのような情報を活用するのも選択肢の一つかと思います。

今回紹介したのはほんの勉強法の一例ですので、自分に適した方法を見つけるために色々な勉強を試してみるのも良いでしょう。勉強をたくさんしたから国試に受かるということはないですが、早めに始めると対策も立てやすいので、計画的に勉強を進めていった方が良いでしょう。

6.2024(令和6)年度以降の変更点

厚生労働省の発表によると令和6年の理学療法士作業療法士国家試験より出題基準が改定されるようです。

これまでの出題基準と比べて大きく変わる点は専門科目に理学療法管理学が追加されることです。理学療法管理学の中には職業倫理や職場管理、教育や介護保険・医療保険を含めた法規・関連制度といった大項目が含まれています。

これまではPTとして臨床実践に活かすために必要な知識が問われていましたが、臨床だけでなく、就業上のコンプライアンスやマネジメントなどに関することも出題範囲に含まれることになります。

他にも、専門科目の基礎分野では物語に基づいた医療(narrative-based medicine:NBM)や地域包括ケアシステムなどの項目が追加されており、細かい項目まで見ると全てを列挙できませんが、近年のリハビリ業界を取り巻くトピックスに基づいて出題範囲が改定されているのだなと感じる内容でした。

新しい分野が出題範囲に含まれると聞くと、不安を覚える方もいるかもしれませんが、基本的には教育カリキュラムに則って定められているため、養成校で教わらないことは出題されないはずです。

従って、新しく出題範囲に含まれる分野については養成校で学んだことを一つ一つ振り返りながら学習を進めるのが国家試験合格への一番の近道だと思います。

7.まとめ

今回は理学療法士(PT)の国家試験について受験方法や試験内容、勉強方法などについて紹介させていただきました。

国家試験は養成校での勉強や大変な実習を乗り越えた先にあるいわば最後の関門、プレッシャーを感じる学生も多いと思います。

まずはどのような問題が出題されるかを知ることから初めて、早め早めに対策を立てていきましょう。取り掛かりが早いに越したことはないです。苦手な分野は一つ一つ潰していき、解るまで何度も復習をしましょう。

勉強すればするほど不安になることもあるかと思いますが、身につけた知識は国家試験に合格するためだけでなく、PTとして仕事を始めた時に何より役に立つはずです。将来の自分や患者様のためにも自信を持って頑張ってみてください!

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【参照サイト】
日本理学療法士協会 理学療法士養成校一覧
第58回理学療法士国家試験、第58回作業療法士国家試験の問題および正答について
【第58回理学療法士作業療法士国家試験 試験委員名簿】
理学療法士国家試験の施行
令和6年版理学療法士作業療法士国家試験出題基準について
出題基準と試験科目の対応表(理学療法士国家試験)
厚生労働省 第51回理学療法士国家試験及び第51回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第52回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第53回理学療法士国家試験及び第53回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第54回理学療法士国家試験及び第54回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第55回理学療法士国家試験及び第55回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について