理学療法士の給料は安い?理由と年収の上げ方を紹介

理学療法士(PT)は専門性が高く、病院や福祉施設でも重要な役割を担っている職種ですが、同じ医療専門職である看護師、薬剤師などと比べて給料が安いと言われています。

この記事では、PTの給料が安いと言われる理由やPTの生活について、そして年収を上げるための具体的な方法について解説します。PTの給料が安いと言われることに不安がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

1.理学療法士(PT)の給料が安いとされる4つの理由

同じ医療福祉業界で活躍する職種であるにも関わらず、なぜPTの給料は看護師や薬剤師に比べて安い傾向にあるのでしょうか。

その理由についてご紹介していきます。

① 基本給が安く手当がつきにくく

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると基本給や手当などを含めた給与額が、看護師で34.4万円、薬剤師で40.3万円、診療放射線技師で37.2万円のところPTは29.6万円であり、医系他職種と比べてPTの給与の低さがうかがえます。

厚生労働省の同調査における、各職種の手当などを除いた所定内給与額を見てみると、看護師が31.2万円、薬剤師が37.2万円、診療放射線技師が34.2万円、PTが28.4万円となっています。他職種は手当などが3万円程度あるなか、PTは1.2万円にとどまっており、手当の付きにくさも給与が安くなる要因といえるでしょう。

②.若い世代の理学療法士が増えた

PTの数は近年急激に増加しており、若い世代になるほど同年代のPTが多い状況です。

昔はPTだけでなくリハビリテーション専門職全体の人数が少なかったため、科内の役職につくことで給料が上がるPTも多くいましたが、リハビリ専門職の総数が増えたことにより役職につける人も限られてきます。

また、多くのリハビリテーション専門職を抱える施設では、昇給に対して慎重にならざるを得ない場合もありそれらもPTの給料が安い一因といえるでしょう。

③.診療報酬による限界

PTは1単位20分ごとに診療報酬を得ていますが、診療報酬は1人当たり1日24単位、1週間 108単位までと上限が定められています。

医師や看護師は処置に対して報酬が出るため、PTの稼働時間より短い時間で高い診療報酬を得ることもできますが、PTはどんなに成果を出していても、1人20分以上のリハビリテーションを行わなければ報酬を得ることができません。

例えば、歩くことを目的にした一人の患者様を診た際に、楽に安全に見た目も違和感なく歩けるようにできるPTと頑張って何とか歩かせているPTがいても、診療報酬は同額になります。

現在は、経験や技術の有無で報酬に差をつけることができないため、一定の診療報酬となっている点も給料が安い要因といえるでしょう。

④.評価基準が確立されていない

大手企業などは昇格や昇給に対しての評価基準が確立されていますが、PTの場合は昇給に対する評価基準が明確ではないことも要因のひとつです。

リハビリテーションは、高い技術や豊かな経験をもっていても、それを数的に明確に評価することが難しい職種です。例えば同じ患者様を診た時に、ベテランPTは歩行訓練まで進めても、新人のPTでは車いす乗車までしか進めないなど、結果に差が出ることは珍しくありません。

しかし、多種多様な症例に対するリハビリテーションの可否を一律で評価することは難しく、個々の働きが数値化しにくい点はPTの特徴ともいえます。

そのため各施設で査定の評価基準は設けられているものの、リハビリテーションそのものの成果というよりも、院内や科内での働きが評価対象になることが多く、専門職としての頑張りが給与に反映されにくい点も給与が安い要因といえるでしょう。

2.理学療法士(PT)の年収と生活

PTの給料が安い要因について紹介してきましたが、安いといっても真面目にPTとして働き散財することがなければ生活に困窮することは、ほぼ考えられません。

結婚をしてマイホームを持つ人も多くいますし、複数のお子さんを持つパパやママも多く活躍していますし、海外旅行や車などお金のかかる趣味を楽しむ人もいます。

PTの仕事だけでセレブのような贅沢な暮らしをすることは難しいですが、計画的にお金を使うことで十分に安定した生活を送ることが可能です。

国税庁の令和3年分民間給与実態統計調査によると一般労働者の賃金は30.7万円となっており、PTの給与と大きな乖離は見られません。そのため一般的な生活水準で暮らすことができるはずですので安心してください。

3.理学療法士(PT)が年収を上げる方法

できればPTとして働き続けるなかで、給料も上がっていけるとうれしいですよね。ここからは、年収を上げるための方法を簡単にご紹介します。

スキルアップをする

日本理学療法士協会が定める「認定理学療法士」や「専門理学療法士」などの資格や、各学会が定める「心臓リハビリテーション指導士」や「3学会呼吸療法認定士」といった関連する資格を取得することで手当や昇給につながる場合があります。

診療報酬の認定を受ける際に上記の資格が必要となる場合もあるため、施設としても取得を進めていることもあります。

登録理学療法士制度などPTの質を担保する制度も誕生しており、今後はスキルに応じた診療報酬の増減が加わる可能性もあるためスキルアップをしておくと安心です。

職場によっては昇給や手当がない場合もありますが、これらの資格の有無はキャリアアップを目指して転職時に有利に働くことがあるため、早めに取得をしておくのも良いでしょう。

給与の高い・手当が充実している職場に転職する

PTが働く施設でも、給与は施設ごとに大きく異なります。やはり給与が高く手当や福利厚生が充実している職場に就職できると結果的に収入を増やすことにつながるので、早く年収を上げたい人はそのような職場を選びましょう。

ただし、就職先を選ぶ際には給与の額面だけはなく、しっかりと内訳もみることが大切です。

基本給が安くても資格手当が高く設定されている職場も多くあり、年収に換算するとかなりの金額になります。ただし基本給は昇給しますが、資格手当は経験年数でも同額の場合がある点は注意が必要です。

PTOT人材バンクは年収を考慮した上での転職サポートも行っておりますので、キャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

年収アップが可能か気になりませんか

管理職になる

現在の職場で給料を上げたい場合、最も確実な方法が昇進することです。昇進して管理職に就くことで基本給の昇給や役職手当などの給料アップが期待できます。

管理職になることで、残業代が支給されなくなり給料が減るという話を聞いたことがあるかもしれませんが、近年は働き方改革により残業を減らす方向に社会全体が動いているため、よほど残業時間が長い場合を除いて心配する必要はないでしょう。

また、管理職になることで各種法制度の知識が求められたり、マネジメント業務や他部署との調整役を依頼されたりなどPTとしての知識や技術以外のスキルが求められます。

スタッフが多い場合は管理職になれる人の数も限られてくるとともに、管理業務の負担も大きくなりがちなので施設規模や職場の状況に合わせて検討しましょう。

副業・起業をする

近年は一般企業でも副業が認められており、副業をすることも珍しくなくなってきました。

副業は現在働いている施設と病期の異なる施設で働くこともお勧めです。視野が広くなり、PTとしての引き出しを増やす良い機会にもなるでしょう。

その他にも整体やリラクゼーションの分野など保険診療枠外で起業をする人もいます。経営の知識が必要になり容易ではありませんが、経営がうまくいけば施設勤務時よりも収入が大幅にアップさせる可能性を秘めています。

4.まとめ

現代では終身雇用という概念が崩れ、どの仕事も将来的な安定が確約されているわけではありません。理学療法士(PT)は、国家資格を保有し、専門性の高い仕事を請負う重要な役割を担っており、これからも続く超高齢化社会において益々活躍が期待されている職種でもあります。

給料は高いとは言えませんが、一般平均と同程度の収入を得ることができ、社会情勢の変化に対しても比較的影響を受けにくい安定した職業である点は大きな安心にもなるのではないでしょうか。

また、若く給与が安い世代が大きな割合を占めており、今後若い世代が年齢を重ねるなかで平均年収が上がる可能性も秘めています。

給料が安いという理由で迷っている人もいるかもしれませんが、一般労働者平均と同程度の給与で安定した職に就ける魅力的な仕事ですので、安心してチャレンジしてください。

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【参照サイト】
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