理学療法士(PT)の勤務先には、病院やクリニックのほかに介護老人保健施設などの福祉施設などがあります。

福祉施設の中には、老人ホームも含まれていますが、「PTが常駐しているイメージない」という人や、「リハビリテーションを積極的に行うイメージがない」という人も少なくありません。

しかし近年では、健康寿命という言葉も注目されており、介助の有無にかかわらず運動機能を維持できるようリハビリテーションに力を入れている老人ホームも多くあります。

今回は、そんな老人ホームに焦点を当て、PTの仕事内容や魅力について紹介していきます!

1.理学療法士(PT)の老人ホームでの役割

老人ホームでは、病態が落ち着き、施設で日常生活を送る方を対象としたリハビリテーションを提供します。PTとしては、身体機能の維持だけでなく加齢に伴う身体機能の変化に合わせた福祉用具の選定など環境整備をすることも重要な役割となります。

そのほかにも、ケアスタッフへの介助方法の指導や、リハビリテーション指導などを行い、入居者とスタッフ双方の負担を軽減することも老人ホームにおけるPTの重要な役割です。

リハビリ職がPTしかいないケースも珍しくないため、認知機能や嚥下機能など、病院では作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が担当する分野についての見解を求められる場合もあります。

2.老人ホームの種類

老人ホームと一言でいっても、その種類は多岐にわたります。入居条件や費用なども施設の形態によって様々である上に、運営主体によっても特徴が大きく異なります。

数多くある老人ホームの種類は、主に国や自治体などの公的団体が運営する「公的施設」と民間企業が運営する「民間施設」に分類され、どちらの施設でも理学療法士(PT)の活躍が求められています。

公的施設

国や地方自治体が運営する公的施設は、介護保険施設とも呼ばれ、民間施設よりも入居費用を安く抑えることができる点が特徴です。

そのため人気も高く、入居待ちが長くなってしまう傾向にあります。公的施設の中で、理学療法士が関わる施設は主に4つあります。

特別養護老人ホーム(特養)

特養は、寝たきりや認知症など、介護度の高い人が身体介護や生活支援を受けて居住する施設です。

介助量が多く自宅へ帰ることが難しい人が入居対象となるため、体位交換や移乗動作の介助量軽減、褥瘡予防のポジショニングなどの知識が多く求められます。

また、介護スタッフの負担軽減を促すため、介助者への負担が少なくなる介助方法の検討及び指導を行うことも重要な役割となります。

個別リハビリを行わない日には、集団リハビリでフォローすることもあるため、あらゆる身体機能を持つ利用者たちが参加しやすいプログラムを立案し、集団リハビリをまとめていく力も求められます。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、病院を退院後に自宅で生活することが困難な人へ、医療ケアやリハビリテーションを提供する施設です。

原則3か月とされる入居期間で、自宅で生活できるレベルまでADLを向上させるとともに、同居されるご家族の負担を軽減できるよう介助量の軽減を目指します。

また、自宅退院した際に必要となる介助をご家族に共有し、介助方法の指導を行うこともPTの重要な役割です。常に自宅での生活を視野に入れた訓練を行い、場合によっては福祉用具の選定など自宅介護に向けてのアドバイスを行うこともあります。

介護医療院

介護医療院は2018年の介護保険事業計画により法定化された施設で、医師や看護師が常駐し長期入所や終身利用ができる施設です。

すでに廃止されている介護療養型医療施設に変わり、長期的な医療ケアと介護を提供する施設となっています。介助量が多く、1日の大半をベッド上で過ごす入居者様も多いため、褥瘡予防、ROMの維持に向けて介入を行うケースが多い傾向です。

他の福祉施設と比べて、カテーテルや胃ろうなどの医療措置が必要な入居者様も多い傾向にあるため、ライン管理なども必要な場合があります。

ケアハウス

ケアハウスには、介護度や医療依存の低い高齢者が入居できる一般型と、介護サービスが提供される介護型の2タイプがあります。

一般型では、PTは外部サービスとして利用する形になりますが、介護型ケアハウスでは理学療法士による機能訓練が提供されています。比較的自立度の高い入居者様もいるため、ADLの維持や廃用症候群の予防などへ介入をしていきます。

民間施設

民間施設は、公的施設に比べると費用は高くなりがちですが、充実したサービスが魅力でもあります。

それぞれの施設ごとに力を入れている分野が異なるため、多種多様な設備やサービスの中から自分に合った施設を見つけることも可能です。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、食事介助や入浴介助などの介護サービスが受けられる有料老人ホームのことをいいます。介護保険法上の基準を満たし、特定施設入居者生活介護の指定を各都道府県から受けている施設のみ介護付き有料老人ホームを名乗ることが可能です。

入居者様の残存機能に合わせて、リハビリプログラムを立案していきます。人によって異なる機能を正しく評価し、残存機能を長く維持できるようにROMエクササイズや筋力強化トレーニングなどを行います。

活動度の高い入居者様用に、スポーツジムのような機械を常備するなどパワーリハビリテーションに力を入れている施設もあります。入居者の能力を把握し、1人ひとりに適したプログラムを立案することが大切です。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームでは、介護やリハビリサービスは自宅と同じように必要に応じて外部サービスを利用することになります。

そのため、住宅型有料老人ホームにPTとして勤務してリハビリテーションを提供するということはなく、居住している方のリハビリを行う場合は、訪問リハビリテーションとして介入することになります。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

60歳以上の方が入居できる、バリアフリーの賃貸住宅のことをサ高住いいます。基本的に生活を自由に送ることができ、施設としては安否確認などを行うことが義務付けられています。介護サービスについては外部サービス利用しますが、併設されている事業所から介護サービスを受けることができる施設もあります。

併設する事業所に勤務し、利用者のご自宅で訪問リハビリテーションを行うほか、施設内にリハビリテーション室などの機能訓練施設が常設されている場合は、それらの施設を利用して介入することもあります。

全体的には、自立度の高い人が入居する傾向のため、ADLの維持や転倒リスクの軽減などに介入することが多くなるでしょう。

グループホーム

65歳以上の認知症を持つ方が入居できる施設です。専門スタッフのサポートのもと自宅にいる延長上で日常生活を送ることができる施設であるため、医師や看護師、理学療法士などを配置する人員基準はありません。

PTが関わる場合には、「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」と同様の関わり方となります。

3.老人ホームで求められる理学療法士(PT)のスキル

老人ホームでは、常駐している医療スタッフが少ない場合が多々あります。人員基準を満たすために看護師が常駐している施設は多いものの、病院に比べると利用者に対しての数は決して多くありません。

そうした背景もあり、リハビリテーション中に起こる急変など、あらゆるアクシデントに対して自身で対応する場面も出てきます。急性期で勤務経験のあるPTであれば慣れていることも多いですが、福祉施設の経験しかない場合には難しい場合もあります。

そのため、病態が落ち着いている方にリハビリテーションを提供する際にも、あらゆるリスクに対して対応できるよう日頃から意識を高めておくことが重要です。

また、リハビリ職がPT1人体制の施設も多い傾向にあります。介入頻度の判断やゴール設定、スケジュール管理、書類作成などの管理も1人で行わなければならないため、マルチタスクに対応できるスキルも必要になってきます。

4.タイプ別!理学療法士(PT)におすすめの老人ホーム

数ある老人ホームの中で、自分にはどのような施設があっているのか判断するのが難しい方も多いのではないでしょうか。こちらでは、タイプ別におすすめの老人ホームをご紹介していきますので、参考にしてみてください。

限られた期間で自宅復帰のサポートをしたい人には介護老人保健施設がおすすめ!

介護老人保健施設は病院から直接自宅へ帰ることが難しい人を対象にリハビリテーションを提供します。期間延長となするケースはあるものの、入居できる期間は原則3か月とされているため、その期間に入所者さんの身体機能を高めていく必要があります。

急性期や回復期に比べてADLを高めることが難しい病期であるからこそ、真の問題点を見つけだしアプローチする能力が求められます。病院に比べると介入時間も少ない中で結果を出さなければならないことに、やりがいを感じる人には介護老人保健施設がおすすめです。

生活に寄りそったリハビリテーションをしたい人は介護付き有料老人ホームがおすすめ!

介護付き有料老人ホームでは、入所者さんの生活の場でリハビリテーションを提供するため、実際に日常生活の動作を観察することで問題点を見つけ、訓練内容が暮らしやすさに直結しやすい点が大きな魅力の1つです。

また、ケアスタッフへのリハビリテーション指導や、生活リハビリの提案など他職種と連携して入所者さんの暮らしをサポートしていくことができる点も特徴です。

入所者さんの生活が豊かになるように、1人ひとりに寄りそったリハビリテーションをしたいというPTにおすすめの職場といえるでしょう。

リハビリテーションを通じて入所者さんが暮らしやすい環境を作りたい人には特別養護老人ホームがおすすめ!

特別養護老人ホームは終身利用が可能であるため、身体機能の維持を目的とした介入が多くなります。しかしながら、加齢や病期の経過とともに障がいが重くなるケースも珍しくありません。

その時に、少しでも入所者さんが楽に過ごせるポジショニングをしたり、介助者の負担を減らせる介助方法を伝達したりすることで、保たれている身体機能の中で入所者さんが少しでも暮らしやすくなるような環境を作ることは可能です。

限られた条件の中で入所者さんをサポートしていきたい人や、暮らしやすい環境を作るためのアイデア生み出していきたい、活かしていきたい人におすすめの職場です。

5.まとめ

数多くある理学療法士(PT)の職場の中でも、老人ホームはより生活に寄りそったリハビリテーションの提供が可能な環境です。

PTとして入所者さんが暮らしやすくなるような環境づくりや体づくりをサポートしていくことにより、生活の質を高めていく、やりがいのある仕事といえるでしょう。

PTOT人材バンクは老人ホームでの求人情報も多数掲載しております。
理学療法士(PT)の求人・転職情報はこちら

関連記事

理学療法士(PT)の勤務先に関するおすすめ記事をご紹介。