理学療法士(PT)の就職先は病院だけではありません。公益社団法人日本理学療法士協会のデータによると、2026年時点でPTの約38%(約4割)が病院・クリニック以外の職場で働いています。
病院以外の代表的な就職先には、訪問リハビリ、介護老人保健施設(老健)、デイサービス、整形外科クリニック、一般企業などがあり、給料相場や休日、求められる役割が大きく異なります。
「病院勤務の慌ただしさから解放されたい」「自分に合った新しい働き方を知りたい」という理学療法士の方に向けて、本記事では病院以外の就職先一覧と待遇(給料・土日休み・残業)の比較表、それぞれのメリット・デメリット、転職成功のコツを解説します。
ご自身に合う理想のキャリアを見つける参考になれば幸いです。
目次
1.病院以外で働く理学療法士の割合と背景
理学療法士(PT)の活躍の場は、従来の病院や診療所といった医療機関だけにとどまりません。公益社団法人日本理学療法士協会の最新データによると、医療施設(病院・診療所)で働くPTの割合は約62%であり、全体の約38%〜4割近くのPTが医療機関以外の領域で勤務しています。

(出典:統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会)
近年、病院以外の選択肢が急速に広がっている背景には、高齢化に伴う「地域包括ケアシステム」の構築や、在宅復帰・予防医療へのニーズの高まりがあります。病気の治療を行う急性期・回復期リハビリから、住み慣れた地域で生活を支える在宅リハビリ、さらには要介護化を防ぐ予防分野へのシフトが進んでいるためです。
また、PT自身の働き方に対する意識の変化も大きな要因です。「土日祝日のシフト勤務から解放されたい」「残業を減らしてワークライフバランスを整えたい」「一人ひとりの利用者様と長期的にじっくり向き合いたい」といった理由から、介護保険領域の施設や訪問リハビリ、さらには一般企業やスポーツ分野へキャリアチェンジを果たすPTが増加しています。
PTOT人材バンクのキャリアパートナーのもとにも、「近年、働き方の多様化やワークライフバランス重視で病院以外を希望するPTからのご相談も増えている」のが現状です。
2.【比較表】理学療法士の病院以外の就職先一覧|給料・休日・働き方の違い
」を天秤や図解で比較しているインフォグラフィック-6aaca5311a664-1024x577.jpg)
理学療法士の病院以外の具体的な就職先について見ていきましょう。
一目でわかる!病院以外の職場比較マップ
理学療法士の病院以外の就職先について、平均年収、休日・残業の傾向、主な対象者、および向いている方の特徴を一覧表にまとめました。
ご自身の希望条件や理想のキャリアプランと照らし合わせながら比較検討してみてください。
| 職場形態 | 平均年収イメージ | 土日休み・残業 | 主な対象者・業務 | こんな方におすすめ |
| 訪問リハビリ | 高め(450〜600万程度) | 土日休み多い/残業少 | 在宅の利用者/個別リハ | 1人ひとりとじっくり向き合いたい・高収入を狙いたい |
| 介護老人保健施設(老健) | やや高め(400〜500万程度) | シフト制/残業少 | 高齢者/在宅復帰リハ・介護補助 | 安定した環境で多様な疾患を診たい |
| デイサービス・デイケア | 平均的(380〜450万) | 土日休み多い/残業少 | 通所の高齢者/集団リハ・送迎 | ワークライフバランス重視・夜勤や残業を避けたい |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 平均的〜高め | シフト制/残業少 | 要介護度の高い高齢者/生活維持 | ゆったりとしたペースで長期的に関わりたい |
| クリニック(整形外科等) | 平均的(350〜450万) | 日祝休み(木・土半日)/中抜け有 | 外来患者/消炎術後リハ | 外来の症例数を多く経験したい |
| 児童・障害福祉施設 | 平均的(350〜450万) | 土日休み多い/残業少 | 小児・障がい児(者)/発達支援 | 小児リハや福祉領域に特化したい |
| スポーツ・フィットネス | 振れ幅大(300〜600万程度) | 不定期/シフト制 | 健常者・アスリート/トレーニング | スポーツ分野や自費リハで挑戦したい |
| 一般企業・リハ関連企業 | 高め(400万〜) | 完全週休2日/残業時期による | 企業の社員・顧客/営業など | 医療以外のビジネススキルを磨きたい |
| 行政機関(地域包括等) | 公務員基準 | 土日祝休み/残業少 | 地域住民/予防事業・ケアマネ連携 | 地域全体の保健・福祉に関わりたい |
| 教育・研究機関(教員) | 高め(400万~) | 土日休み(イベント有)/残業有 | 学生/授業・研究・論文 | 教育や研究実績をキャリアにしたい |
※当社調べ
3.病院以外の主な職場と仕事内容・メリット・デメリット
病院以外の主な職場と仕事内容・メリット・デメリットについて見ていきましょう。
1. 訪問看護ステーション・訪問リハビリ
訪問看護ステーションや訪問リハビリ事業所では、PTが利用者の自宅を直接訪問し、住み慣れた在宅環境の中で日常生活動作(ADL)の向上や環境調整を行います。
1日の訪問件数は4〜6件程度が一般的です。事業所によっては、基本給に加えて訪問件数に応じた「インセンティブ(歩合給)」制度を導入しているところも多く、担当件数を増やすことでPTの平均年収(約430万円)を大きく上回る500万〜600万円程度の高収入や年収アップを目指すことが可能なケースもあります。
病院での一括管理されたリハビリとは異なり、利用者様一人ひとりの生活スタイルや家族の要望に合わせた個別リハビリをじっくり提供できる点、給料面での還元が大きい点が最大のやりがいと感じる方も多いです。
一方で、移動手段として車・バイク・自転車の運転が必須となる場合が多いほか、訪問先で急変が起きた際には自分一人で迅速かつ的確な初期判断を下す責任が生じます。また、計画書や報告書といった書類作成業務の負担が比較的重い点にも注意が必要です。
【実際の転職事例:病院から訪問リハビリへ(経験1年半・20代男性)】

急性期・回復期病院で1年半勤務後、「訪問分野で挑戦したい」「常勤として働きながら将来のための副業許可を得たい」という条件で転職活動を開始。
訪問経験はわずかでしたが、熱意と人柄が評価され、土日祝休み・副業OKの訪問看護ステーションへ即日内定・着任。経験年数が浅くても、条件交渉や求める働き方に合った事業所を選ぶことで、理想のワークライフバランスとキャリアアップを実現したケースです。
2. 介護施設(老健・特養・デイサービス・デイケア)
介護施設においてPTは、主に「機能訓練指導員」というポジションでリハビリテーションや機能訓練を担当します。施設の種類によって目的や業務内容が大きく異なります。
- 介護老人保健施設(老健):
在宅復帰を目標とする施設です。状態が安定している利用者が多く、疾患の種類も多岐にわたるため、リスク管理の負担を抑えつつ多様な臨床経験を積めます。給与も病院より高めに設定されているケースが多い傾向にあります。 - 特別養護老人ホーム(特養):
要介護度が高く長期的に利用されるご利用者様が中心です。身体機能の維持や減退予防、ポジショニングや看取りリハがメインとなり、ゆったりとしたペースで一人ひとりと関われます。 - デイサービス・デイケア:
通所型の施設です。デイケアでは専門的な個別リハを行い、デイサービスでは集団体操やレクリエーションが中心となります。土日休みが多く残業も少ない場合が多いですが、送迎業務や食事・排泄介助などの介護ヘルプ業務を兼任することが多くなります。
どの介護施設においても、医師主導の病院とは異なり、看護師・介護職・ケアマネジャー・管理栄養士といった多職種連携の中心となってリハビリ方針を提案するスキルが求められます。
【実際の転職事例:病院から介護施設へ(経験5年・20代女性)】
回復期・療養病棟で5年間勤務する中で、「病院の枠組みの中では患者様やご家族の生活・外出支援、看取りの希望に寄り添いきれない」と痛感。
ご利用者・ご家族個別の要望に柔軟に対応する介護施設へ転職。病院勤務時代の月収・手取り額をキープしたまま、本来やりたかった「家族に寄り添うリハビリ」の実現と法人理念への共感を果たしました。
3. 整形外科クリニック・診療所
整形外科クリニックや個人の診療所では、主に入院ベッドを持たない外来患者に対するリハビリテーションを行います。
急性期を過ぎた術後患者や骨折・変形性関節症、スポーツ障害などの消炎鎮痛・機能改善が主な業務です。1日の担当患者数が20名を超えることも珍しくなく、多種多様な整形外科疾患の症例数を短期間で効率よく経験できます。病院と違って当直や夜勤がなく、日祝が休みである場合が多い点がメリットです。
ただし、午前診療と午後診療の間に2〜3時間程度の「中抜け時間(長い休憩時間)」が設定されていることが多く、拘束時間が長くなりやすい点や、土曜日の半日勤務がほぼ必須となる点には留意しておく必要があります。
4. 障害福祉施設・児童発達支援(小児分野)
肢体不自由児施設や児童発達支援事業所、放課後等デイサービスなどの障害福祉施設では、小児から成人までの障がいをお持ちの方を対象にリハビリを提供します。
特に小児分野(発達支援)では、子どもの成長・発達段階に合わせた運動療法や日常生活動作の獲得を目指し、遊びを取り入れたリハビリを実施します。保護者や学校、保育士と密に連携を取りながら、子どもの成長を数年単位の長期的スパンで見守ることができる点に唯一無二のやりがいがあります。
専門性が極めて高い一方で、対象が小児や特定の障がいに固定されるため、成人・高齢者の臨床スキルからブランクが空いてしまう可能性がある点はデメリットと言えるかもしれません。給与水準は概ね病院と同等です。
5. 一般企業・スポーツ施設・行政機関
臨床以外のフィールドでも、理学療法士の知識と資格を存分に活かせる選択肢が存在します。
- 一般企業(リハ関連・ヘルスケア):
医療機器メーカーや福祉用具専門商社、ヘルステック企業での製品開発・マーケティング・営業職など。PTとしての臨床知識に加え、ビジネスマナーや企画力が身につき、成果次第では高年収も狙えます。 - スポーツ関係施設・フィットネスジム:
アスリートのトレーナーやパーソナルトレーナー、自費リハビリ施設でのコンディショニング。実力主義の世界ですが、将来的な独立開業やパーソナル契約による高収入を目指せる可能性があります。 - 行政機関(地域包括支援センター等):
自治体の保健センターや地域包括支援センターでの公務員・嘱託職員としての勤務。住民向けの介護予防事業の企画やケアマネジャーへのリハビリ助言など、地域全体の予防医療・福祉に貢献できます。土日祝休みで安定した待遇が魅力です。
4.理学療法士が「病院」と「病院以外」で働く際の違い・徹底比較
理学療法士が「病院」と「病院以外」で働く際の違いについて解説します。
仕事内容・対象者(患者と利用者)の違い
病院と病院以外の職場における最も根本的な違いは、「目的」と「接する対象者」にあります。
病院でのリハビリは、病気やケガの「治療・回復」が最優先目標であり、対象者は治療を必要とする「患者様」です。医師の指示のもと、疾患リスクを厳密に管理しながら短期間で集中したリハビリを行います。
一方、病院以外の職場(介護施設や訪問など)では、「現在の身体機能の維持・生活の質の向上(QOL)」が主目的となり、対象者は住み慣れた地域で暮らす「利用者様」となります。医療的なアプローチだけでなく、日常生活の動作指導、福祉用具の選定、家族への介護指導、住宅改修のアドバイスなど、生活全般に踏み込んだ多角的なサポートが求められます。
給料・年収・待遇の違い
理学療法士全体の平均年収は約430万円前後ですが、勤務先の種類によって給与体系は大きく異なります。
病院勤務の場合、基本給は比較的安定しているものの、昇給幅がゆるやかで大幅な年収アップは難しいのが現状です。
これに対し、訪問リハビリや老健、一般企業では、病院時代の年収を上回るケースが多数存在します。訪問リハビリでのインセンティブ手当や、老健での手当・賞与、一般企業での業績反映など、個人の頑張りや事業所の業績が給料に直結しやすい構造になっているためです。
※出典:令和7年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
働き方(土日休み・残業・夜勤)とワークライフバランスの違い
病院勤務では、土日祝日の365日リハビリ体制やシフト制、不定期な残業が発生しやすく、プライベートの予定を立てにくいという悩みがつきまといます。
病院以外の職場の多くは、年間休日数が増加し残業時間が削減されるなど、ワークライフバランスを改善できる環境が整っている場合が多いです。
例えばデイサービスや訪問リハビリ、行政機関、一般企業では「年間休日120日以上」や「完全土日休み」を確保できる求人もあります。また、時間外の緊急受診対応が少ないため、定時退社しやすく残業時間を月数時間程度に抑えられるケースも。「家族との時間を増やしたい」「夜勤や休日出勤のストレスから解放されたい」というPTにとっては、病院以外の職場は魅力的な選択肢といえるでしょう。
5.自分に合った「病院以外」の就職先の選び方
自分に合った「病院以外」の就職先の選び方について見ていきましょう。
1. リハビリで「誰を・どう支援したいか」目的を明確にする
自分に最適な職場を選ぶ第一歩は、PTとしてどのような関わり方をしたいのか原点に立ち返ることです。
- 疾患の急性期治療や症例数を重視したいのか
- 在宅生活に密着し、看取りや家族支援まで含めて寄り添いたいのか(→訪問リハ・老健)
- 予防事業や集団へのアプローチで地域全体を元気にしたいのか(→デイサービス・行政)
- アスリートやスポーツ愛好家のパフォーマンスを高めたいのか(→スポーツ施設)
軸を明確にすることで、転職後の「イメージと違った」というミスマッチを防止できます。
2. 譲れない条件(給与・土日休み・残業時間)を整理する
ライフスタイルに合わせた労働条件の優先順位付けも不可欠です。
「月収・年収を落とさずに転職したい」「子供がいるため土日休み・残業なしが良い」「副業をして将来に備えたい」など、自分の中で絶対に譲れない「必須条件」と、妥協できる「希望条件」を明確に整理しておきましょう。
3. 臨床スキルの維持と将来のキャリアプランを考える
将来的なキャリアの方向性を考慮しておくことも重要です。
将来的に再び病院に戻る可能性がある場合は、臨床知識やリスク管理能力を維持できる老健や整形外科クリニック、訪問リハが適しています。一方で、現場の臨床から離れてマネジメント職やビジネス領域への転身を狙うのであれば、デイサービスの管理者候補、関連企業の営業・企画職、行政機関などを視野に入れると良いでしょう。
6.理学療法士の「病院以外への転職」でよくある質問(FAQ)
「病院以外への転職」でよくある質問について見ていきましょう。

Q1. 新卒や経験1〜2年目の若手PTが病院以外に就職するのは難しいですか?
A. 就職可能な場合もありますが、職場の教育・フォロー体制の事前確認は行うことをおすすめします。
従来は「最初の数年は病院で勉強すべき」と言われていましたが、現在は人手不足や事業拡大に伴い、若手PTを歓迎する訪問リハ事業所やデイサービス、老健も増えています。
実際に病院経験が1年半で訪問分野に転職し、土日祝休みと高待遇を叶えた成功事例も存在します。大切なのは経験年数そのものよりも、指導係の有無や研修制度が整っているか見極めることです。
Q2. 病院以外に転職すると、給料や年収は下がりますか?
A. 転職先によって異なりますが、適切な求人選びを行えば年収維持・アップが可能なケースもあります。
一般的に、デイサービスや一部の福祉施設では病院より若干下がることがありますが、インセンティブのある訪問リハビリや老健、リハ関連企業へ転職した場合は、病院時代よりも高収入(年収500万円以上)を得られるケースも見られます。
手取り額を減らしたくない場合は、事前に基本給・手当の内訳を確認し、条件交渉を行うことがポイントです。
Q3. 病院以外で働くと、PTとしての臨床スキルが落ちませんか?
A. 「病院特有の急性期治療スキル」は鈍る可能性がありますが、代わりに「生活期リハ・地域連携・生活支援スキル」という強みが身につきます。
病院のような医療機器に頼ったリハビリとは異なり、限られた環境下で身の回りの物品を工夫して行うリハビリ能力や、ケアマネジャー・介護職・家族とのコミュニケーション能力、リスク管理能力を磨くチャンスとなります。スキルの種類は変わりますが、PTとしての価値が落ちるわけではないと考えています。
7.まとめ:病院以外の選択肢を広げて自分らしいキャリアを描こう
今回は理学療法士(PT)の病院以外の就職先と特徴についてメリットやデメリットも踏まえながら紹介しました。紹介した内容はあくまで一例なので、職場環境や業務内容、待遇についてはそれぞれの施設や機関でしっかり確認して頂くことをおすすめします。
理学療法士の活躍の場は病院だけに限定されず、訪問リハビリ、介護施設、福祉施設、一般企業など、多様な選択肢が存在します。病院以外の職場への転職で、収入アップや残業・休日面でのワークライフバランス改善、そして一人ひとりの生活に深く寄り添う新しいやりがいを手に入れることも可能です。
しかし、病院以外の求人は「実際の残業時間」「介護業務のヘルプ比率」「人間関係や職場風土」といった内部情報が外から見えにくく、個人での条件交渉も難しいというハードルがあります。
自分に合った理想の職場を失敗なく見つけたい方は、ぜひ「PTOT人材バンク」の無料転職サポートをご活用ください。
PTとして働くことのできる転職先の選択肢は病院以外にもあります。ご自身が仕事を選ぶ上で、一番大切なことは何かをしっかりと考えて頂き、この記事がより良い選択の一助になることを願っています。

PTOT人材バンクへのよくあるご質問
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