急性期や回復期、個人のクリニックなど理学療法士(PT)として働ける病院には様々な種類がありますが、介護保険分野をはじめ医療機関以外にも活躍の場は広がっています。

ただ、新人のうちは病院で経験を積もうと考えている方にとっては、病院以外の就職先のイメージが湧かず、選択肢を広げるのが難しいといったお声もよく聞きます。

そこで今回は、PTの転職先の選択肢とそれぞれの特徴についてまとめてみました。これから就職先を検討される方は、是非参考にしてみてください!

1.病院以外で働く理学療法士(PT)は約3割

日本理学療法士協会によると、医療施設で働くPTは66.1%ほど。つまり33.9%程度のPTは医療機関以外で働いていることになります。

ただ、医療機関以外で働いているPTは日本理学療法士協会に所属していないこともあるため、実際はもう少し多いのではないかと推測できます。

では、次の章から病院以外の転職先について詳しく見ていきましょう!

2.医療機関以外の主な職場一覧

日本理学療法士協会が調査した理学療法士(PT)が勤務している職場から、数や人気の高い職場をピックアップしてみると、以下の通りです。

  • 介護老人保健施設
  • 訪問看護ステーション
  • 理学療法教員
  • デイサービス
  • 地域包括センター
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護サービス/リハ関連企業
  • 肢体不自由児施設
  • スポーツ関係施設
  • フィットネス施設

今回は、これらの病院以外の施設や機関でPTが働くメリット・デメリットを病院と比較する形で簡単に紹介させて頂きます。同時に給与面に関しても触れますが、一般的なPTの年収を約400万円として言及させて頂きます。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、対象となる人の状態が安定していることが多く、病院と比べると理学療法を提供する上でのリスク管理にそれほど神経質になる必要はありません。また、在宅復帰を目標とする方が多いので、施設にいながら多様な疾患の方のリハビリを担当できる点が魅力です。

一方で、介護業務など専門性と違った分野の働きを求められることもあり、人によっては苦労することがあるかもしれません。

給与面では、PTの平均年収よりも少し高めに設定されている施設が多いです。

訪問看護ステーション

訪問看護ステーションでは、病院という特殊な環境ではなく、対象となる方の住み慣れた環境でリハビリを提供できるため、一人一人の利用者様に時間をかけてじっくりと関われる点が大きなメリットです。

また、祝日稼働は多いですが、土日休みであることが多く、定期的な休日を確保できる点も嬉しいポイントではないでしょうか。

デメリットとしては、車やバイク、自転車の運転が業務に含まれ、書類業務も意外と多いということです。

給与面では病院勤務よりも高めに設定されていることが多いですが、ステーションの業績にも影響されるため、業績が落ちればその分年収も減額となることが多いです。

理学療法教員

理学療法教員としてPTが働くメリットは、学生の指導がメインになってくるため、プレゼンや資料作りが上達する、論文などを読み解く力がつく、学校などの組織経営について学べる、などが挙げられます。

デメリットとしては、臨床に出る機会が減少し臨床観が鈍くなることや、業務量の多さからくる残業時間の長さが考えられます。また、大学等であれば自身の研究力も問われるため、成果を求められることがストレスになることもあるようです。

給与面については、機関によっては一般的なPTの年収よりもかなり高い額(約600~800万円)が設定されることも多いですが、それ相応の業務と成果が求められることになります。

デイサービス

デイサービスは、業務内容がしっかりと定まっていることがほとんどですので、残業が少ないことがメリットです。また、土日休みが多いことも魅力です。

デメリットとしては、集団を対象にしたレクリエーションなどが主な業務になり、個別リハを実施できないことや、利用者さまの送迎、排泄・食事介助など、専門的なこと以外の業務もこなす必要がでてくることです。

給与面に関しては、一般的なPTの年収と比較して、高めに設定してあることが多いですが、施設によって大きく異なるため、気になる場合は事前に確認した方が良いでしょう。

地域包括センター

働く立場にもよりますが、地域包括センターでは介護予防事業等を通して地域のコミュニティに関わることができ、病院での臨床とはまた違った環境の中で仕事ができることがメリットです。

PTとしての役割を超えて、組織でのマネジメント等の業務を求められることがデメリットと言えなくはないですが、捉え方によってはやりがいであり、病院とは全く違った働き方と言えるかもしれません。

ただ、給与面では一般的なPTの年収よりも低い額が設定されていることが多いです。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームで働くメリットとしては、介護老人保健施設と同じように、時間に追われて診療業務を行わなくても良いこと、残業などが少ないことが挙げられます。

デメリットは、重症度が高く在宅復帰が難しい方が多いため、リハビリ業務がマンネリ化してしまうことや、土日祝日稼働により休日が不定期になってしまうことなどです。

給与面では、一般的なPTの年収よりも高めに設定されているところが多いですが、その代わりに当直や介護業務のヘルプなど不規則な勤務時間となる場合もあります。

介護サービス/リハ関連企業

関連企業に転職するメリットは、なんといっても営業やマーケティングなど、PTとして病院や施設では経験できない業務に従事できる点です。診療やそれに関連した業務以外の経験を詰めることは大きな魅力でしょう。

その分、働き方によっては臨床現場にほとんど関わることができなくなり、専門職としての腕を鈍らせてしまうことが考えられます。

給与に関しては、平均的なPTの年収よりも高いことが一般的ですが、初めての試みなどでは待遇があまり良くないこともあり得ます。

肢体不自由児施設

肢体不自由児施設においてPTとして働くメリットはリハビリの対象がほとんど小児となるため、子供の発達や神経難病について、より専門的なスキルや知識を身につけることができることです。

逆を言えば、対象領域が小児に固定されますので、成人や高齢者のリハビリに携わる機会がほとんどなくなってしまうのがデメリットとして挙げられます。

給与面に関しては病院勤務のPTとそれほど差はみられないことが多いです。

フィットネス・スポーツ関係施設

フィットネス・スポーツ関係施設で働くと、スポーツ分野の業務についてより専門的に学ぶことができ、個人の努力次第で独立などのキャリア形成を行える点が大きなメリットでしょう。

デメリットとしては、医療業界とは大きく異なる分野になってくるので、再び医療業界に戻りたくなった際にブランクが生まれてしまうことや、営業など顧客獲得業務
を課せられる可能性があることです。

給与に関しては、就職先企業や個人の能力によるところが大きく一概には言えませんが、努力次第で一般的なPTの年収を大きく上回ることも可能です。

3.理学療法士(PT)が医療施設以外で働く意義

病院というフィールドで何れかの分野の専門性を突き詰め、患者様の身体機能の回復を促し、自宅や社会への復帰を支援するのがリハビリテーションに従事するセラピストの役割であることは変わりません。

ただ、近年では介護分野にとどまらず、予防医学やクオリティ・オブ・ライフ、社会における生産性向上にも注目が集まっており、PTを巻き込みながらこれらの分野でサービスを展開する企業も増えてきています。

そうした病院外の施設や企業においては、利用者様に選んでもらうためにサービスの質を担保する必要があり、PTに対しては、専門性に加え、接遇面や組織経営・人材マネジメント等、医療機関とは違う観点からの知識・技術を身につけることが求められています。

病院かそれ以外の施設や企業で働くか悩む際は、そうした視点で自己実現について考えてみてはいかがでしょうか。

PTOT人材バンクでは、キャリアパートナーが転職先の選択のお手伝いもさせて頂きますのでお気軽にお問合せください。

4.まとめ

今回は理学療法士(PT)の病院以外の勤務先と特徴についてメリットやデメリットも踏まえながら紹介させて頂きました。

紹介させて頂いた内容についてはあくまで一例なので、職場環境や業務内容、待遇についてはそれぞれの施設や機関でしっかり確認して頂くのをおススメします。

PTとして働くことのできる転職先の選択肢は病院以外にもたくさんあります。あなたが仕事を選ぶ上で、一番大切なことは何かをしっかりと考えて頂き、この記事がより良い選択の一助になることを願っています。

迷った場合は、PTOT人材バンクのキャリアパートナーにぜひご相談ください。
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【参照サイト】
統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会