理学療法士(PT)の活躍の場として、人気がある現場の一つが訪問リハビリです。

その人気の理由としては、退院した患者さんのその後を見届けることができる現場であることや、インセインティブ制度などで病院よりも給与水準が高いことなどが挙げられます。

一方で、訪問の現場では、病院やクリニックとは異なった視点での役割がPTに求められることもあり、病院よりもシビアなスキルが必要になってくる場合もあり、興味はあるけど踏み出せないという方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、訪問リハビリの特徴や訪問の現場でPTに求められる能力、働き方などを紹介させて頂きます。是非参考にされてみてください!

1.理学療法士(PT)からみた訪問リハビリとは

訪問リハビリとはセラピストが利用者の自宅や入所している施設等に訪れ、心身の機能の維持や回復、日常生活の自立を支援するためにリハビリテーションを行うサービスです。

2020年に厚生労働省が発表した第193回社会保障審議会の資料によると、訪問リハビリの受給者数は年々増加しており、中でも要支援者の利用が2015年以降大きく増加しています。この背景には、在宅医療を必要とする方の増加や、リハビリが医療機関内だけで完結しなくなっていることなどが考えられます。

病院で行うリハビリと大きく異なる点は、リハビリを提供する環境でしょう。なんでも揃っているリハビリ室ではなく、利用者が住み慣れた環境が舞台となりますので、そこにある限られた資源でリハビリを提供することになります。

また、病院で行うリハビリは対象者の症状を「改善」させ、能力を「向上」させることが大きな目標となってきます。しかし、訪問リハビリの対象者は維持期〜終末期にあたる方が大半です。

身体機能の向上を図れる方も一部存在しますが、多くの場合、能力を維持すること、または低下していく能力に対し対応策を講じることがリハ職としての役割となってきます。利用者や家族のニーズや価値観も幅広く、それぞれのケースで柔軟に対応することも求められます。

加えて、病院と比べると、関わる必要のある職種も広がります。一人の利用者に対し、ケアマネージャーや各種相談員、医師、看護師、介護士、施設職員、場合によっては市区町村の役場の職員など、多くのスタッフと情報共有をする必要もあるため、訪問リハビリに関わるPTには幅広い取り組みが求められます。

2.訪問リハと訪問看護リハの違い

訪問リハビリは派遣している施設形態の違いから便宜上、そのままの言葉である「訪問リハ」と「訪問看護リハ」の2つに分けられます。病院や診療所、老人保健施設などからセラピストが派遣されるのが「訪問リハ」であり、訪問看護ステーションからセラピストが派遣されるのが「訪問看護リハ」です。

どちらも訪問リハビリと表現されることもありますが、この2つの違いについてみていきましょう。訪問リハビリに携わる転職を考える際に、参考にしてみてください!

訪問リハビリ(訪問リハ)の特徴

訪問リハビリの場合、利用者が入院している病院が訪問部門を持っていることも多く、回復期や地域包括ケア病棟から退院してすぐにリハビリを開始できるケースが多いです。

医療機関によっては院内でのリハビリと訪問リハビリを兼務しているスタッフがいる場合もあり、入院中〜退院後まで一貫して対象者に関わることができることもあります。このような場合、一人の利用者の経過をしっかり追えるのは、PTとしても興味深いことだと思います。

老人保険施設等からの訪問リハビリでも、対象となる利用者が同じ法人のデイサービスや入所施設を利用している場合が多く、自分が関わっている時以外の利用者の状況を確認しやすい環境にあるため、訪問時の介入にそういった情報を取り入れやすいのがメリットです。

また、訪問リハビリ事業所で働いている場合、万が一訪問リハビリが合わないと感じた際に、入院リハ部門や通所リハ部門への異動を希望することができるのもメリットの一つとなってくるでしょう。

訪問看護ステーション(訪問看護リハ)の特徴

訪問リハビリと業務内容が大きく異なることはありませんが、訪問看護リハでは事業所の特性上、医療依存度が高い利用者が多くなってきます。

例えば、気管切開をして人工呼吸器が装着されていたり、人工肛門や胃瘻が造設されていたりといった、特別な管理が必要な方は医療依存度が高い利用者といえるでしょう。

医療依存度が高い方の場合、リスク管理としてPTにも看護師と同程度のフィジカルアセスメントの技術や医療デバイスの知識が求められることがあります。

こういった方のリスク管理は急性期に近いものがあり、呼吸器や循環器リハの経験が活きてくる場面もあるため、そういった経験を訪問の場で活かしたいPTは訪問看護ステーションの方が向いているかもしれません。

また、訪問看護ステーションの大きな特徴の一つとして、同じ事業所内に看護師が在籍しており、同じ利用者を一緒に担当することです。利用者についての情報交換を密に行え、時には看護師に同行し、看護業務を直に見ることも可能であるため、看護師の意見や視点をリハビリに反映させやすい環境にあります。

3.訪問リハビリで理学療法士(PT)に求められるスキル

訪問リハビリではPTとしての専門知識以外にも様々な能力が求められる場面に出くわします。その中でも大切な能力をいくつか紹介していきます。

コミュニケーション能力

訪問リハビリの利用者の中にはこだわりが強く、医療者側の意見をなかなか取り入れることができない方も見られます。

そのような場合、対象者の価値観やニーズをヒアリングした上で折り合いをつけながら最適な提案を行うことが必要です。この際に利用者のニーズを聞き出す力と、上手に伝える力の二つの能力が求められます。

フィジカルアセスメントスキル

訪問リハビリでは利用者の元へPT単独で赴きます。バイタルサインを測定して利用者の状態を把握するのも一人で行わなければなりません。

利用者それぞれが抱える疾患や障害に対してしっかりと把握し、緊急対応を要する場合、看護師の判断を仰ぐのか、救急搬送をするのか自身で判断する必要がでてきます。

そのため、些細な変化にも気づけるようなフィジカルアセスメントの技術を日々磨いておくことが重要です。

タスク管理能力

前章でも記載しましたが、訪問リハビリに携わっていると、多くの職種と関わる必要が出てきます。聴取した情報をしっかりと整理し、的確に伝えるのはもちろん、サービス提供体制を滞らせないために、できるだけ迅速に処理をする必要が出てきます。

書類業務も病院で働くよりも多くなってくるため、タスクに優先順位をつけて処理できる能力が必要です。

4.訪問リハビリの業務内容

こちらの章では訪問リハビリの分野での理学療法士(PT)の働き方について具体的に見ていきましょう。訪問リハビリを行なっている事業所で業務スケジュールに大きな違いはないため、今回は訪問看護ステーションを例として紹介していきます。

時間業務内容
09:00~09:20業務開始 利用者の情報確認 申し送り等
09:30~1件目の訪問
10:30~2件目の訪問 1件あたりの介入時間は40~60分。そのため、午前中の訪問件数は大体2~3件程度になります。
12:00~13:00休憩
13:30~17:00午後の訪問 3~4件訪問をして、17:30くらいに事務所に帰ることが多いです。
~18:00カルテ記載 退社

こちらの表に挙げた以外にも、月締め業務として、一人一人の利用者の報告書や次月の訪問看護計画書の作成、その他の書類業務などを行うことがあり、残業が必要な日も少なからず出てきます。

業務量や、残業に関しての規定は各事業者によって異なってくるので、転職を検討する際は事前に確認をすることをおすすめします!

5.まとめ

今回は、訪問リハビリの特徴や訪問の現場で理学療法士(PT)に求められる能力、働き方などを紹介させていただきました。

訪問リハビリの現場では利用者のニーズや価値観を理解し、家族との関係なども捉えた上で、他職種と連携を図りながら介入を行う必要があり、PTとしての専門的な知識や技術はもちろんのこと、円滑に介入を行っていくために様々なスキルが求められます。

また、介護保険や医療保険の改正によって、大きく影響を受けやすい分野でもあり、制度によって働き方が大きく変わってしまう可能性もでてきます。

しかし、病院や施設での勤務では経験できないことを通して、多くを学ぶことができ、自身の人としての成長にも繋げられる魅力的な業務形態の一つであると言えます。

転職を考える際には、候補の一つとして参考になさってください!

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【参照サイトU R L】
厚生労働省H P
第193回社会保障審議会
参考資料15 訪問リハビリテーション