呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は、包括的チームアプローチで行われるものであり、OTは日常生活動作(ADL)の専門家としてチームの中で重要な役割を果たします。

この記事では、そんな呼吸リハに携わる機会の多い呼吸器内科や呼吸器外科でのOTの仕事内容や求められる役割、働く魅力などについて解説します。

呼吸器内科や呼吸器外科での勤務や呼吸リハに興味を持っている方の参考になれば幸いです。

1.作業療法士(OT)と呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)とは、病気や外傷によって呼吸器に障害が生じた患者さんに対して、機能を回復・維持することによって症状を改善し、患者さんが自立した日常や社会生活を送れるように継続的に支援する医療のことです。

呼吸リハは呼吸ケアとも呼ばれますが、呼吸ケアは人工呼吸器管理や酸素投与、薬剤調整など包括的な治療のことを言い、その中に呼吸リハが含まれるといったイメージになります。

また、呼吸リハと言うと腹式呼吸練習や呼吸介助手技、排痰練習などのイメージが強いかもしれませんが、OTが行う呼吸リハはエネルギー消費量の少ない効率的な動作、呼吸に合わせた動作を指導・訓練し、応用的動作能力の改善を図ることも重要なアプローチ方法です。

次章から詳しく見ていきましょう。

2.呼吸器内科・呼吸器外科で求められる役割

呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)で主に対象となるのは、肺炎・無気肺など急性発症した呼吸器疾患、肺腫瘍・胸部外傷などの手術後、もしくは慢性閉塞性肺疾患・気管支喘息・気管支拡張症など慢性の呼吸器疾患により、一定程度以上の重症の呼吸困難や日常生活能力の低下を来している患者さんです。

診療報酬上は「呼吸器リハビリテーション料」として算定し、原則として治療開始日から90日間算定可能ですが、近年は早期退院、入院期間短縮を目指す傾向にあり、急性期の状態が落ち着いたら訪問リハや通所リハなど地域でのリハビリに移行するケースが多いようです。

呼吸器内科では、肺炎や無気肺、慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息などの内科的治療中の患者さん、呼吸器外科では肺腫瘍・胸部外傷などの手術後の患者さんのリハビリを担当します。

呼吸リハにおいて、OTは日常生活動作(ADL)の評価と介入の専門家として、出来るだけ楽にADLが行えるよう支援していく役割が求められます。

また、呼吸器疾患の患者さんは排痰を促したり運動時の息切れを軽減させたりするために、吸入療法後にリハビリを行うと効果的なので、時間帯の配慮が必要となります。息切れを増強させやすい入浴や食事前後のリハビリ介入は避けるなど、患者さんの疲労感や負担にも配慮した方が良いでしょう。

慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息などの慢性呼吸器疾患では、体重減少が起こりやすく低栄養状態の患者さんも多いことから、管理栄養士と連携して栄養管理にも注意を払う必要がある点も知っておいた方が良いでしょう。

3.作業療法士(OT)の呼吸器内科/外科での仕事

呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)では、多職種からなる呼吸ケアチームでの活動が基本となり、チームの中でも日常生活動作(ADL)のエキスパートであるOTが専門性を発揮できる分野だと言えます。

ここでは、呼吸器内科・呼吸器外科でのOTの仕事内容について解説していきます。

患者さんの特徴

呼吸リハの対象となる患者さんは、安静時や労作時の呼吸困難感が生じやすく、全身の炎症を伴う場合が多いためエネルギー消費量が増大し、栄養障害、体重減少、嚥下障害を合併するケースが多いなどの特徴が挙げられます。

特に慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎などの慢性疾患では、身体活動性の低下によって加齢性筋肉減少症(サルコペニア)を引き起こす可能性が高いため、運動療法や栄養療法などを組み合わせてチームで取り組む包括的な呼吸ケアが重要となります。

呼吸器内科/外科で行う作業療法

呼吸リハの目的は主に次のようなものが挙げられます。

①呼吸機能障害による労作時の呼吸困難感の緩和
②呼吸困難によるADL低下の改善
③気道感染などによる急性増悪の予防

OTはADLのエキスパートとして、呼吸困難感を生じているADLの評価から始め、姿勢や動作の工夫によって出来るだけ楽に動作が行なえるように生活指導を行う役割を担います。

状況によって、排痰練習や呼吸介助、運動療法も併用しながらADLにおける呼吸困難感を軽減させてQOLの向上に繋がるようアプローチしていきます。

慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎などで、在宅酸素療法(HOT)を導入する患者さんに対しては、酸素濃縮器や携帯用酸素ボンベなどの取り扱いの指導や、生活動線に合わせた配置の提案などに関わることもあるため、HOTにおける機器操作や安全管理方法についても知っておく必要があるでしょう。

また、専門性を高める手段として「3学会合同呼吸療法認定士」という資格があります。

呼吸療法認定士は、呼吸療法を習熟し呼吸管理を行う医療チームの構成要員を養成し、そのレベルの向上を目的に作られ、呼吸療法の目的、理論、治療の実際などの専門知識を身に着ける必要があります。

呼吸器疾患に携わる機会が多い方や呼吸ケアチームがある病院に勤務する方におすすめの資格です。

チーム医療の中で求められる役割

2010年から「呼吸ケアチーム加算」として診療報酬が算定できるようになり、チームアプローチの重要性は益々高まっています。

呼吸ケアチームは、OTの他に医師・看護師・臨床工学技士・薬剤師・理学療法士(PT)・言語聴覚士(ST)・管理栄養士などから構成され、それぞれの専門性を発揮しながら連携して患者さんの呼吸ケアを行います。

医師は呼吸器および全身状態の検査・診断・治療、看護師は呼吸機能の観察・評価や日常生活のケア、臨床工学技士は人工呼吸器の専門家として操作や動作確認を行い、適切な換気状態を維持する役割があります。

OTは呼吸に合わせたADLの指導を行いますが、医師や看護師と連携して適切な呼吸法や酸素流量の調整などを行っていきます。

呼吸リハでは低栄養状態の患者さんが多いため、管理栄養士や言語聴覚士と連携を取り、適切な食事量の確保や食事動作の獲得にもアプローチしていく必要があります。

4.呼吸器内科/外科で働くスケジュールや勤務イメージ

ここでは、呼吸器内科・呼吸器外科で働く作業療法士(OT)の業務内容やタイムスケジュールについて解説していきます。下部に呼吸器内科・呼吸器外科を有する総合病院の呼吸ケアチームに所属するOTのスケジュール例も示しています。

出勤したらまず高度治療室(HCU)の朝のカンファレンスに参加し、医師や看護師から人工呼吸器管理中や肺腫瘍・胸部外傷などの手術後の患者さんの情報収集を行い、リハビリの進め方について検討します。

カルテで情報収集を行ったら、病棟へ行きその日の担当看護師と情報共有を行い、患者さんの状態や安静度に応じてベッドサイドや病棟内、リハ室での個別リハビリを行います。

週1回、呼吸ケアチーム回診が行われ、人工呼吸器管理中や術後の呼吸状態が不安定な患者さんの呼吸ケアについてチームで検討を行い、今後のケアの方針を診療計画書に記載する必要があり、OTも状況に応じて日常生活動作(ADL)評価などの情報提供のため参加します。

患者さんの昼食時間には実際の食事場面を観察し、息切れが増強していないか、姿勢に問題はないかなどの評価を行い、必要に応じて動作指導や環境調整を行います。

また、入浴も実際の入浴場面で評価を行うことが多く、息切れの起こりにくい動作の指導や休憩のタイミング、酸素流量の調整など、看護師と連携して指導を行う必要があります。

在宅酸素療法を導入する患者さんに対しては、業者さんの機器説明に同席し、理解度の確認を行い、退院前には退院前訪問指導として患者さんの自宅へ訪問し、酸素濃縮器の配置や生活動線の確認、環境調整を支援することもあります。

退院や転院される患者さんの情報提供書を作成し、ケアマネージャー、訪問看護、リハビリスタッフに対して入院中のリハ状況や指導内容、今後も続けて欲しい呼吸ケアについて情報共有を行うことも大切な役割です。

時間業務内容
08:30~08:45HCUカンファレンス参加
08:45~09:00リハビリテーション科朝礼・リハ室環境整備
09:00~09:30カルテ確認、情報収集
09:30~10:30個別リハビリテーション対応
10:30~11:00呼吸ケアチーム回診参加
11:00~12:00個別リハビリテーション対応
12:00~12:30食事動作評価
12:30~13:30昼休み
13:30~14:00カルテ記入、計画書作成など
14:00~14:30入浴動作評価
14:30~16:30個別リハビリテーション対応
16:30~17:00在宅酸素導入時の説明に同席
17:00~17:30カルテ記入、情報提供書作成など

5.作業療法士(OT)が呼吸器内科や外科で働く魅力

呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)に携わる職種として、理学療法士と比較するとまだOTの関わりが十分ではないのが現状ですが、日常生活動作(ADL)の評価や介入で必要とされる場面が多くOTが専門性を発揮できる分野だと言えます。

近年は在院日数の短縮により、早期に在宅や施設での呼吸ケアに移行するケースも多く、訪問リハビリや通所リハビリで呼吸器疾患を抱える患者さんを担当することも多くなってきており、地域での呼吸リハにおけるOTの関わりも重要となってきています。

実際の患者さんの生活場面でADL指導や呼吸指導を行えるため、効果を発揮しやすく、家族や介護スタッフへの指導にも携わることができることで、専門性を発揮できる点が魅力と言えるでしょう。

6.まとめ

今回は、呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)に携わる機会の多い呼吸器内科や呼吸器外科での作業療法士(OT)の仕事内容や求められる役割、働く魅力などについて解説しました。

今後は呼吸リハにおいてOTの積極的な関わりが期待されており、キャリアアップやキャリアチェンジにもおすすめの分野だと言えます。
呼吸器疾患や呼吸リハに興味がある方は、転職を検討してみてはいかがでしょうか。

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【参照サイト】
厚生労働省第7部リハビリテーション