作業療法士(OT)は給料が安いといわれますが、実際に自分が受け取っている給料が、普通なのか、低いのか判断しづらいのではないでしょうか。

ただ、金銭に関わる会話は、親しい友人や同僚にもなかなか話しづらく、他者と比較しづらいものですよね。

この記事では、OTの平均年収や具体的なOTの生活、年収アップの方法について、ご紹介します。

1.作業療法士(OT)の給料が安いと言われる4つの理由

OTの給料が安いといわれるには、いくつか理由があります。その中でも、主に考えられる理由を4つご紹介していきます。

理由①.診療報酬の影響を受ける

OTの給料は診療報酬の影響を受けますが、この部分がOTの給料が安いとされる部分に大きく影響しているため、少し詳しく解説していきます。

病院などでOTがリハビリを実施すると、「リハビリテーション料」として診療報酬を受け取ることができ、医療保険か介護保険かで、リハビリテーション料の区分も異なり、受け取れる診療報酬の金額も異なります。

医療保険を例にすれば、急性期や手厚いリハビリを提供する回復期では、「疾患別リハビリテーション料」を受け取れます。この「疾患別リハビリテーション料」は、「脳血管疾患等リハビリスタッフ料(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)」のように、諸条件を満たすか否かによって、受け取れる額が段階づけられています。

また、リハビリによる回復が期待できるとされる「標準的算定日数」を超えてしまうと、同じリハビリを提供しても得られる報酬がガクンと下がることにも注意が必要です。

私が勤めていた病院では、「標準的算定日数」内で、慢性期の病院に転院したり、この期間までに自宅に退院できるよう目標にしたりしていました。(もちろん、「標準的算定日数」を超えてもリハビリを継続することにより状態の改善が期待できる場合は、「疾患別リハビリテーション料」を延長されることもあるので、一概にはいえません。)

病院は利益のために、診療報酬に基づいて患者さんの入退院を調整します。そのため、患者さんのリハビリをひたすらたくさん実施すれば、病院の収益が増やせ、自分の給料にも反映されるといった簡単なものではないのです。

これらの理由から、OTの給料が自分の努力次第で大幅に増やせるものではなく、年収アップするには基本給にコツコツと昇給を積み上げて年収を増やしていくのが大半となり、「OTの給料は安い」というイメージにつながっているのではないでしょうか。

なかには、手厚いリハビリテーションの提供を病院のアピールポイントとして掲げている施設もあるでしょう。そんな病院では、より質の高いリハビリを実施できる経験豊富なOTを求め、賞与を高くしているケースもあります。

反対に、高齢者施設などによっては、OTはいてもいなくてもOK(ほかのリハビリ専門職がいればOK)という施設もあります。そういったところでは、リハビリの給料は低めに設定している場合もありますので、自分の希望する給料がもらえる職場を探すときには、「リハビリの需要が高い職場」を探すのも一つです。

理由②.職種の特性上、夜勤などがなく、給料が固定化されている

基本的に、リハビリは夜間に実施することがありません。

回復期リハビリテーション病院のように、起床後の整容や食事場面での日常生活動作(ADL)介入を目的とした早番制度を取り入れている病院はありますが、施設数全体で見ればその数は多くないでしょう。

また、近年では働き方改革の流れを汲み、残業を推奨しない職場も多く、OTは時間外手当の加算が少ない職種であるといえます。そのため、給料はある程度毎月固定化されつつあり、給料を増やしづらい背景があります。

理由③.OTの有資格者が増えたことで、給料の高い職場の空きが出づらい

近年、少子高齢化の進行に伴い高まるリハビリ需要に対応すべく、OTの養成校が増設され、OTの有資格者は年間4,000〜5,000人のペースで増え続けています。

その結果、OTの需要自体は現状も高く、求人は多くあるものの、「給料が高い」「残業が少ない」など福利厚生の整った人気の求人は、すぐに埋まってしまうという現象が起きているのです。

OTの傾向として女性が多いことから、結婚に伴う転勤や、出産・育児などによる退職者も一定数います。そのため、人気の高い職場でも求人が出ないということはありませんが、一人の求人枠に複数の求職者が応募してくるために、「採用が勝ち取れなかった」という人も出てきてしまうのです。

そのため、収入を増やすために転職をしたくても、自分の希望する職場の採用が得られず、思うように収入アップにつながらないという方もいます。

理由④.管理職の席に限りがあり、昇給だけでは給料を増やしづらい

OTの業界では、年1回程度昇給がある職場が多いですが、その額は高いものではありません。経験年数をコツコツとつみ、少しずつ収入を増やすのも一つの手ではありますが、管理職を目指し、管理職手当を増やすというのも、収入アップには効果的です。

しかし、OTの人数が多い職場では10~20名の中からOT科長は一人というところも珍しくありません。科長に昇進するためには、チームリーダーなどを経て経験・勤続年数を積み、その中で適正も踏まえて科長が選ばれます。私の知っている職場では、チームリーダーは給料に加算が付かないところもありました。

収入をアップするために管理職につきたいと思っても、OTの人員数や職場規模によっては、時間がかかったり、なること自体が難しかったりする職場もあるでしょう。

2.作業療法士(OT)の年収相場

それでは、具体的にOTの年収はどの程度なのかみていきましょう。

最新のデータである令和3年の「賃金構造基本統計調査」をもとに計算すると、残業代や交通費なども含めた2021年の平均年収は4,265,400円です。月給にすると平均296,000円、残業代を除いた月給は284,800円となり、決して高いとはいえないでしょう。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、会社員の平均年収は433万円であり、会社員に比べると若干低いことも年収が低いと言われる理由だと考えられます。OTの年収は景気に左右されにくく、転職をしたとしても安定的な収入を維持できる強みはあるものの、年収を見ると低い方かもしれません。

ただ、年収と同じくらい重要な福利厚生まで加味すると、OTの生活水準は悪いものではありません。働く方も多い総合病院や規模の大きい医療法人が運営する施設などでは、福利厚生も充実しており、資格職として男女関係なく活躍できるなど、金額だけでは計れない魅力もあるのです。

給料自体はサラリーマンの平均年収と比べて低いことは事実ですが、しっかり業務に取り組みスキルやキャリアを積み重ねていくことで、安定した収入が得やすいこともOTの特徴といえるでしょう。

詳しいOTの年収事情については、「【2023年版】作業療法士(OT)の年収~月給や給与UPの方法を総まとめ~」に載っていますので、ぜひ参考にしてみてください。

3.年収が低いと言われる作業療法士(OT)の生活実態

ここからは、OTの給与だと実生活はどういったものになるのかを具体的に紹介していきます。

私や友人の状況を見ても、贅沢な暮らしは難しいかもしれませんが、共働きをすれば十分に子育てもできる職種だと感じています。

単身者は生活に困らない

年収が426万なので、独身で生活する分には困ることはありません。

特に、総合病院や経営規模が比較的大きい高齢者施設などでは、単身者向けに職員寮があることもあり、寮に入ることで生活費をかなり抑えることができます。

結婚しても働きやすい環境が整っているので、共働き夫婦が多い

私の経験や、職場の同僚などの情報を踏まえてですが、夫婦二人での生活なら専業主婦(夫)が可能で、子どもを養っていくと共働きが必要な世帯年収という印象です。

ただ、共働き夫婦が多いので家庭環境への理解はもちろん、産休や育休も取得しやすく、退職した後に退職前の経験が活かせる職場を見つけやすいため、あえて退職する理由がないことから夫婦二人であっても共働きを選ぶことが多いです。

また、OTは、理学療法士、言語聴覚士、看護師、薬剤師、医師、介護士など、男女を問わず多くの職種のスタッフと関わるため、ときには飲み会などの交流会もあり、そこから仲を深め交際に発展することも珍しくありません。

OTの恋愛事情として、職場結婚は比較的多いのです。医療職同士、互いの仕事に理解が得られやすく、結婚しても共働きしやすいのかもしれません。

子育てしながら働きやすい環境は女性にとって大きな魅力

育休・産休を経て、OTとして働き続ける女性も多いです。ブランク明けでもそれまでのキャリアに近い仕事(職域)で働けるため、生活のために嫌々という形ではなく、再びOTとして活躍する女性が多いイメージです。

子育ての面に着目すると、OTの職場は保育所付きの職場が多いのが特徴です。総合病院や高齢者施設、場合によっては放課後等デイサービスなどでも保育所付きの職場がそろっているので、家庭を持っても復職しやすいです。夏休みや土曜も働けるので、求人の幅も広がるのが特徴です。

実際、私も出産で一度OTを辞めましたが、保育所付きの職場に転職し、子育てと仕事を両立しています。現在、小児分野で働いているので、子育て経験をリハビリに活かせることも。OTは正職員だけでなく、パートの求人も多いので、自分のライフスタイルに合わせて働けるのは、とても魅力的です。

転職しやすい点は作業療法を極めていきたい男性にも魅力的

転職をしやすいという点は、男性にとっても大きな利点です。OTの平均年収としては決して高くはないですが、求人が豊富であることから、キャリアアップを図るための転職が可能です。

また、OTとして働く中で、「さらに知識を深めたい」「研究をしたい」と感じ、大学院に進学したり、ダブルライセンスを取得したりする方もいます。学業と仕事の両立の難しさから一時的にOTを辞めたとしても、再び就職しやすいので、新たな挑戦をしやすくなるのが魅力です。

一時的に収入は途絶えたとしてもやっていけるだけの収入はありますので、他者にはない知識やスキルを備えることで、結果的に条件の良い職場に転職でき、生涯賃金を増やすことにつながります。

PTOT人材バンクは年収を考慮した上での転職サポートも行っておりますので、キャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。

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4.作業療法士(OT)が年収を上げる方法

OTの平均年収は低いと述べましたが、自らの努力次第で年収を上げることが可能です。その具体的な方法をいくつかご紹介します。

給料が高い職場を選ぶ

年収を上げるには、給料が高い職場へ就職することが一番の近道です。あくまで傾向ですが、回復期リハビリテーション病院などのリハビリに力を入れている職場、精神疾患を取り扱う病院、経営規模が大きい高齢者施設などでは、給料が高いことが多いです。

ただし、一般論として給料が高い職場は、施設の発展のために、学会発表や外部に向けた講習(健康講座)の開催、職場内の自己研鑽の推進(勉強会の実施)などを積極的に取り入れています。

また、質の高い人材の確保のために、後進育成(実習生の受け入れなど)にも意欲的で、リハビリ業務以外の仕事を任されたり、日々の自己研鑽がより求められたりするという傾向があります。

安定した収入が見込める職場を選ぶ

入職した時点での給料は低くても、継続して働き続けることで昇給し、徐々に給料が上がってくる職場もあります。国公立病院や保健所、国公立のリハビリテーションセンターなどの公的機関に就職することで、安定的な収入が見込めます。

公的機関は福利厚生が安定しているのも特徴で、例えば、国立病院機構では育児休暇が3年間取得できるなど、給料以外の魅力があります。

副業ができる職場を選ぶ

近年では、コロナ禍の影響で在宅ワークが増えたり、収入減を補うために副業を許可する業界も増えてきたりしています。副業を支援するツールも増えてきており、世間の流れとして、副業自体が珍しいことではなくなっているのです。

医療業界においては、以前は副業がNGの職場が多かったと思いますが、施設の発展につながるものであれば副業OKという施設も増えてきています。例えば、母校のリハビリ養成校の講師として働く場合、就職を控えた学生に対する広報活動につながる、人員確保に貢献するとして許可されているケースもあります。

また、家庭の事情や心身の事情などで、非正規でしか働けないという方も、副業を取り入れることで、収入をアップすることが可能です。

OTのスキルを活かしたものはもちろん、OTとはかかわりのない活動でも副業が可能です。本業と両立できる、自分に合った副業を模索してみるのもいいかもしれません。

5.まとめ

この記事では、作業療法士(OT)の給料にまつわることについて解説をしてきました。平均年収だけに着目すると、OTの年収は決して高くはないですが、それ以上の魅力があるということが分かっていただけたでしょうか。

実際、私自身、新卒からOTとして働く中で、結婚・出産・子育て(幼稚園の入園、小1の壁…)と、ライフステージが変わって働き方に悩む場面がいくつかありました。

しかし、OTは求人が豊富で、自分に必要な福利厚生(私の場合は保育所付きで夏休みも働ける・休みが取りやすいが条件でした)がそろった施設を探すことで、納得のいく働き方ができています。

確かに年収の高さは重要ではありますが、自らの働きやすい職場選びができることもOTの魅力の一つだと感じています。OTを目指す方に、金額だけにとらわれないOTの良さを知ってもらえると幸いです。

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【参照サイト】
令和3年 賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」