徒手療法を業とする国家資格保有者の中には、開業してマッサージを提供いる人も多くいます。理学療法士(PT)もリハビリテーションの中で、マッサージを用いた施術をすることがあります。

そんな経験を活かし、マッサージ店の開業を検討している人もいるかもしれませんが、実際にはPTを含めあん摩マッサージ指圧師以外の人がマッサージ店を開業することは違法になります。

リハビリテーションではマッサージをするのに、なぜ開業すると違法になるのか、またマッサージを専門とするあん摩マッサージ指圧師とは何が違うのか、分かりやすく解説していきます。

ぜひ参考にしてみてくだい。

1.開業できない!?医師の指示がないマッサージは違法

理学療法士(PT)が行う施術の中にはマッサージも含まれていますが、PTがマッサージ師として開業することはできません。

日本では理学療法士及び作業療法士法で次のように定義されているため、医師の指示なく理学療法(マッサージ含む)を提供することは違法になります。

医師の指示の下に、理学療法を行うことを業とする者

また、独自の判断で治療としてマッサージを行うことが認められているのは医師とあん摩マッサージ指圧師のみとされており、それ以外のセラピストがマッサージ師を名乗り開業することは違法です。

そのため、PTは医師の指示の下であればマッサージを含む理学療法を提供できますが、独立してマッサージ店を開業することができないのです。

2.マッサージで開業するにはあん摩マッサージ指圧師を取得する

前述したように、現在の法律では理学療法士(PT)がマッサージを提供するために独立開業することはできません。

マッサージをメインに開業することが認められているのは、あん摩マッサージ指圧師という国家資格のみになります。

あん摩マッサージ指圧師の資格を得るためには、厚生労働省が実施する国家試験に合格する必要があり、受験するためには文部科学省や厚生労働省が指定する医療系学校において3年以上専門課程を学ぶ必要があります。

PTとして法律を遵守しマッサージ店を開業するには、PTの資格を取得後、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し開業権を得ることが求められます。

3.あん摩マッサージ指圧師と理学療法士(PT)の違い

両者にはどのような違いがあるのでしょうか?

PTはケガや病気などによる身体的な障がいのある人や、障がいが発生する可能性がある人に対してリハビリテーションを実施し、生活の自立支援や生活の質の向上を目指す専門家です。

医師の指示下であればPTもマッサージを行えますが、医師の指示がない場合は、マッサージを含め理学療法全般を自分の判断で提供することはできません。

一方、あん摩マッサージ指圧師は、あん摩やマッサージ、指圧の各手技(なでる・押す・叩・揉むなどあらゆる行為を用いて)、人体の変調を改善する東洋医学に基づいた専門的な治療を行う専門家です。

慢性病であるとともに医師による適当な治療手段がない症状に対して、独立した判断でマッサージを行うことが許されています。

医師の指示がない場合でも独立して業務を行えるため、自費であれば医師による診察を受けていない人に対しても独自の判断でマッサージをすることが可能です。また、医師の同意があれば医療保険での施術も可能であり、開業するにあたり自由度の高い専門職といえます。

4.理学療法士(PT)がマッサージ師として開業するメリット・デメリット

PTがあん摩マッサージ指圧師免許を取得し、マッサージ師として開業したときに、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

メリット

最大のメリットは、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得することにより、開業権を得るとともに医師の指示がない場合でもマッサージを提供することができる点です。

PTの資格だけでは違法行為となってしまう施術も、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得すれば、法律を遵守してマッサージを提供できます。

また、医師の同意に伴い保険診療ができるため、PTの資格のみで開業した場合に比べて、仕事の幅が広がるでしょう。

PTとして培ってきた技術や経験をマッサージ師としての活動に活かすこともできるため、
広い視野で症状を捉え、施術をすることができる点は大きな強みとなるのではないでしょうか。

デメリット

大きなデメリットとしては、PTになった後に再び専門の教育機関へ入学し、国家試験を受験しなければならない点です。

PTになるために3~4年以上かかったのち、あん摩マッサージ指圧師になるために更に3年以上かかるため、両方の資格を保有するために最低でも6年もの期間が必要になります。

時間だけでなく学校へ通うための資金も必要になり、金銭的にも負担が大きくなる点は大きなデメリットと言えるでしょう。

その他にも教科書などの教材、国家試験に向けての勉強に関する参考書なども必要になるため、授業料以上の費用がかかることは覚悟しておく必要があります。

5.理学療法士(PT)が開業する方法

PTが独立開業するためには、大きく分けて2つの方法があります。

まず1つめは、開業権を持つ類似した資格を取得することです。PTと同じように徒手的に施術を行うことを業とする国家資格には開業権を持つ資格が多くあります。

ただし、開業権を保有している国家資格での開業になるので、PTとして理学療法を提供することは引き続き違法となるため注意しましょう。

そして2つめは、理学療法を提供しないで開業する方法です。

整体院やヒーリングサロンなどは無資格者でも施術ができることから、そのような業態で開業しているPTもいます。

また、予防事業において診療の補助に該当しない範囲の業務であれば「理学療法士」と名乗ることが認められていることから、予防事業分野で開業するPTもいます。

障がいのない人への転倒防止指導など診療の補助に該当しない範囲であれば問題なく「理学療法士」を名乗ることができるため、開業する上での大きな強みになるでしょう。

開業については、こちらの記事で詳しく解説しています

6.まとめ

あん摩マッサージ指圧師は独自の判断でマッサージができる点が大きな魅力です。

開業するにあたりPTの資格だけではできることが限られてしまいますが、新たにあん摩マッサージ指圧師の資格を取得することで堂々と開業してマッサージができます。

しかし、1つの国家資格を取得するだけでも大変なため、2つの国家資格を取得するには高いモチベーションが必要です。

開業を目指している人にとっては、資格の有無は大きな問題になりますので、覚悟を持って時間とお金を有効に使い、スキルアップを図れると良いのではないでしょうか。

2つの資格を持つことは、他店との差別化ができるなど大きなメリットになりますので、開業を考えている人は是非検討してみてください。

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【引用サイト】
理学療法士及び作業療法士法