超高齢化社会を迎え、更なる活躍が期待されている職業のひとつが理学療法士(PT)です。

医療の最前線から介護、スポーツ分野など様々な場所で活躍している注目の職業ですが、PTになる方法が分からない人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、PTになるために必要なことやPTとして働くための方法を詳しく紹介していきます。

養成校のことや、国家試験、PTに向いている人などについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.理学療法士(PT)とは

理学療法士(PT)は、病気やケガなどにより身体に障害がある人や、障害が発生することが予測される人に対して、座る、立つ、歩くなど基本動作能力の回復や維持および障害の悪化防止を目的に運動療法や物理療法などを用いて治療を行う専門職です。

自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションを担い、対象者ひとりひとりについて医学的・社会的視点から目標に向けて適切なプログラムを作成、実施することが主な仕事です。

2.理学療法士(PT)になるには国家資格が必要

理学療法士(PT)として働くには、厚生労働省が実施する理学療法士国家試験に合格し、国家資格である理学療法士免許を取得する必要があります。

理学療法士国家試験を受験するためには、高校卒業もしくは高卒認定を取得した後、文部科学大臣または厚生労働大臣の認定を受けた養成校で3年以上学び、国家試験の受験資格を獲得しなければなりません。

養成校を卒業もしくは卒業見込みとなることで理学療法士試験を受験することができ、試験に合格することでPTとして働く資格を得ることができます。

理学療法士養成校には、4年制大学や3年制短大、3年制もしくは4年制の専門学校などが全国にあり、昼間部とともに夜間部を併設している学校もあります。

3.学校は特色が違うため自分に合ったものを選ぶ

それでは、理学療法士(PT)になるために通う養成校の大まかな特徴について解説していきます。それぞれ違いがあるため、自身のタイプに合わせて選ぶようにしましょう。

まずは高卒資格を手に入れる

養成校に入学するためには高校を卒業していなければなりませんが、高卒認定を取得できれば高校を卒業していなくても養成校へ入学することができます。

何らかの事情で高校に入学できなかった方や卒業ができなかった方でも高卒認定を取得できれば高校卒業者と同程度の学力があると認められます。

高校を卒業していない方は、まずは高卒認定を取得し、養成校への入学を目指しましょう。

短期大学はカリキュラムがタイト

短期大学は3年で養成校を卒業することができますが、全国的にみても学校数はかなり少ない傾向です。

大学に比べて早く卒業することができる反面、在学期間が短いためカリキュラムがタイトになっていますが、4年制大学より1年も早く現場に出て働き始めることができる点は大きな魅力といえるでしょう。

また、在学期間が1年短いため、4年制の学校に比べて在学時の総額学費は安くなります。理学療法士は就職後の大卒との待遇の差があまり大きくはないため、経済的な面からみるとメリットが大きいと言えるかもしれません。

大学はじっくり時間をかけて学習

理学療法士の養成大学は2000年代前半にかけて学校数が大幅に増えており、昔に比べると大学へも入学しやすくなっています。

大学では専門学校に比べて、教養科目が充実しており、専門的な知識だけではない幅広い視野で多くのことを学ぶことができます。

理学療法士になることだけではなく、理学療法に関する学問の発展を目的とした研究も行われており、理学療法への知識をより深めたい人にも向いているといえます。実際に医療機関で使用されている機械が完備されていることも多く、より効果的な実習を行うこともできます。

短期大学や3年制専門学校に比べると現場で働き始めるのが1年遅くなりますが、その分、しっかりと土台となる知識や技術を習得する時間を作ることができる点が大きな魅力といえるでしょう。

専門学校は即戦力に期待

専門学校には3年制と4年制の学校があります。大学や短期大学と比べると学費が高くなりやすいというデメリットはありますが、特色のある学校も多いです。

3年制の場合、最終学年で臨床実習に出るため2年生までの間に知識と技術を学んでいくため短期大学と同様にカリキュラムがタイトになります。

4年制の専門学校では3年間かけて知識や技術を学ぶことができるとともに、卒業後は大学卒業とみなされるため、卒業後に大学院へ進学することも可能です。大学と同程度の学校数があるため、自分に合った学校を見つけていきましょう。

高卒者におすすめの学校は?

高校卒業後の進学先には、前述したように大学、短大、専門学校と養成校があり、さらに4年制、3年制、昼間部、夜間部などに分かれるため、あらゆる選択肢のなかから学校を選ぶことができます。社会人と異なり制約なく、学ぶ年数や時間帯を選ぶことができる点は高卒者の特権です。

なかには経済的な理由などで、夜間部を選択せざるを得ない人もいるかもしれませんが、現役でも夜間部に進学する人もいるので安心してください。

それぞれの特色をみて、4年制で余裕を持ったカリキュラムで学ぶのか、より早く臨床に出るために3年制で学ぶのか、社会経験を積むために夜間部に通い働きながら学ぶのか、自分にあった方法を選択し、それをかなえられる学校を探しましょう。

社会人におすすめの学校は?働きながらめざせる?

理学療法士(PT)の養成校には夜間部が併設されている学校もあります。夜間部の場合は、夕方から21時頃までが授業時間となるため、日中はアルバイトなど仕事をしながら通うことができます。

臨床実習や就職後のことを考え、日中の仕事はリハビリ助手をしている人もいますが、リハビリ助手は求人が少ないため、全く異なる業種の仕事をしている人も多くいます。

日中に働けることは学費などの金銭面を考慮するとメリットも大きいですが、昼間部よりも授業日数が少ないなか、規定のカリキュラムや臨床実習を終えなければならず、仕事との調整が難しい場合もあります。特に、正規職員として働きながらの通学は、勉強時間のやりくりや実習に行くための長期休み(最終学年は8週間以上の実習×2回)などが必要になるため職場の理解がないと難しいでしょう。

昼間部は現役の学生が多いため、社会人経験者は夜間部の方が同じ境遇の人と切磋琢磨できる点は魅力ですし、PTになるための最低限のカリキュラムで構成されていることが多いので、効率的に卒業できる点はメリットといえるでしょう。

4.各学校の学費について

医療系の大学や専門学校は、高額な医療機器を使用することや病院での実習を行うなどの理由から、学費が高額になることが多い傾向です。

理学療法士養成校の学費も一般の大学や短大、専門学校と同様に、在学年数だけでなく国公立か私立か、昼間部か夜間部かによっても金額が異なります 。

4年制より3年制の方が1年分、学費が安く抑えられるとともに、私立より国公立の学費の方が安く抑えられます。その代わり学費が安い学校は倍率も高くなりやすいため、受験勉強のハードルが高くなる点も忘れてはいけません。

また昼間部に比べて夜間部の方が、授業数が少ないことから学費を抑えられますが、授業数が少ないということは、臨床実習や国家試験に向けた勉強が昼間部よりも大変になる点も理解しておく必要があるでしょう。

また、理学療法士養成校では、年間で支払う学費のほかに、教科書代やユニホーム代、実習に際して実習費用(遠方の実習地の場合の滞在費用など)を別途徴収するところもあります。このような雑費も学費に含まれている学校もあるので、記載されている金額の内訳や、それ以外の支払いの有無は事前に確認しておくと安心です。

学費については以下の記事でも触れています。学費も含めどんな養成校を選べばよいのか詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

理学療法士を目指す大学・短大・専門学校の違いと選び方~PTの養成学校について~

5.理学療法士の国家試験は合格率約80%

理学療法士国家試験の合格率は80~90%台を推移しており、年度により合格率が大きく変わることもあります。

現役の受験生だけでなく養成校を卒業したものの国家試験に不合格となった既卒生も試験を受けており、両者の合格率は異なります。現役の受験生に比べて既卒生の合格率は低い傾向です。

2023年の第58回理学療法士国家試験の結果

2023年の理学療法士国家試験の結果は、全体では第57回と同程度の合格率でしたが、新卒者の合格率は94.9%とかなり高い数字になりました。

不適切問題は、第57回が12問と例年以上の多さでしたが、第58回は例年と同程度の7問となっています。不適切問題は採点除外等の扱いになるため、合否への影響は昨年より少なかったことが予想されます。

受験者数新卒者合格者(合計)合格率(新卒)合格率(合計)
2023年(第58回)12,948人10,824人11,312人94.9%87.4%

合格率は80~90%を推移

2016年以降の合格率をみると全体では最低が74.1%、最高が90.3%、新卒者では最低が82.0%、最高が96.3%となっています。

年度によって難易度や不適切問題の数が異なり、試験を受けた年度によっては、多くの受験者が苦戦することもあります。過去の合格率をみても新卒者では80%を切ることはありませんが、問題の傾向が前年の問題から大きく変わることもあり、油断はできません。

また、理学療法士の数は年々増え続けているため、今後の試験も難しくなることはあっても、大きく易化することは考えにくいといえます。

受験者数新卒者合格者(合計)合格率(新卒)合格率(合計)
2022年(第57回)12,685人10,549人10,096人88.1%79.6%
2021年(第56回)11,946人10,522人9,434人86.4%79.0%
2020年(第55回)12,283人10,749人10,608人93.2%86.4%
2019年(第54回)12,605人10,608人10,809人92.8%85.8%
2018年(第53回)12,148人11,520人9,885人87.7%81.4%
2017年(第52回)13,719人10,721人12,388人96.3%90.3%
2016年(第51回)12,515人10,562人9,272人82.0%74.1%

国家試験の勉強法や過去問の活用法については、こちらの記事でもご紹介しています。詳しく知りたい方は参考にしてみてください。

理学療法士(PT)国家試験の受験方法と試験対策を現役PTが解説!

6.合格後は免許の登録申請を行う

国家試験に合格したあとは、住所地の保健所(一部の地域では県庁)へ書類を提出し免許の申請手続きをします。

申請には、所定の免許申請書、診断書、住民票の写しなどのほか、登録免許税として9,000円の収入印紙が必要になります。免許証が届くまでに2~3か月ほどかかるため、就職先で提示を求められた人など希望者には登録済証明書の発行もしてもらえます。

7.大半が合格発表前に就職先を決めている

理学療法士国家試験は2月中旬ごろに実施され、合格発表が3月下旬頃となっています。そのため多くの学生が国家試験の受験前に就職先を決めています。

合格発表が遅いと感じる人もいるかと思いますが、私が就職した頃は就職してから合格発表があったため、職場のパソコンで同期や上司と合否を確認していました。その頃に比べると発表が早くなり、万が一資格を取得できなかった場合の対応がしやすくなったといえます。

学生の多くは、臨床実習が終わった後に就活を本格的に始めている印象ですが、中には臨床実習が始まるころには既に就職先を決めている人もいます。

最終学年では、国家試験の勉強と同時に就職活動をしなければならないため、最終の臨床実習が始まる前から情報収集を進めておくと安心です。実習先で就職する人も多いほか、実習での経験により希望する就職先が変わる場合もあります。そのため、実習が終わってから国家試験の勉強が本格的になる前に就職先を決める方が効率的なように感じます。

8.万が一国家試験不合格になってしまった場合

万が一、国家試験に不合格になってしまった場合は就職先により対応が異なります。就職先でリハ助手として働かせてもらいながら国家試験の勉強を進めるケースもあれば、就職が白紙になるケースもあります。

前述したように以前は就職後に合格発表があったため、不合格でもリハ助手として働きながら勉強できるケースも多かった印象ですが、国家試験の結果が就職前に分かるようになってからは不合格の場合は就職を断られるケースも増えている印象です。 学校によっては国家試験に落ちた卒業生へのフォローをしてくれるところもあります。国家試験が近くなると在校生と一緒に模試を受けたり、国家試験対策の授業を受けたりできる場合もあるので入学の際にはチェックしておくと安心です。

9.理学療法士(PT)になる際の気になるポイント

理学療法士(PT)になるまでには、基礎医学だけでなく理学療法などの専門性の高い勉強をしていきます。養成校では幅広い知識を身に着けていきますが、具体的にどのような点に注目していくと良いのでしょうか。

学生時代にもっとも勉強しておいた方がよいのは解剖学

学生時代には解剖学、運動学、生理学などの基礎的な勉強のほかにも評価方法や治療方法についても学びます。学年が上がるにつれて応用的な知識が必要となる科目が増えてくるため、基本となる解剖学、運動学、生理学についてはしっかりと知識を付けておくことが重要です。

特に解剖学はあらゆる応用科目で必要となる知識であるとともに、国家試験でも必ず出題される範囲ですので、理解を深めるようにしましょう。

最大の難関は臨床実習

養成校を卒業するためには、実際の現場に出て実習を行う「臨床実習」をクリアする必要があります。実際にPTが働いている現場にて、指導者(バイザー)に付いてもらい、患者様のリハビリテーションを行わせてもらう実習です。

学校によって指定された施設へ単身で実習へ行くことになるため、多くの学生にとって不安の大きなイベントとなっています。

評価実習、前期臨床実習、後期臨床実習など少なくとも2~3回は異なる施設で実習を行わなければならず、実習に向けて必要な知識や技術を身につけていることが在学中のひとつの目標になります。

10.理学療法士(PT)に向いている人は?

理学療法士(PT)は、ケガや病気により障害を負った方やそのご家族などの介護者を支える職業です。自分が経験したことのない障害を抱えている人に対して、相手を尊重しながら必要なことを冷静に判断していく力が求められます。

対象者の気持ちに寄り添える高い共感力、的確にリハビリテーションを進めるための洞察力や判断力、そしてプログラムを遂行する実行力などが必要です。いずれも学校での勉強や実習での経験を積む中で培うことができますが、決して容易ではありません。

共感力や洞察力、判断力、実行力が高い人はPTに向いていると言えますが、実際には、PTになりたい気持ちの強さが大切になります。なぜ自分がPTになりたいのか、明確なビジョンを持っていることが大切ではないでしょうか。

11.まとめ

理学療法士(PT)になるための道のりは、知識だけでなく技術や応用力も必要となるため、決して簡単ではありません。

しかし、活躍の場は広がっており、PTを希望する人も年々増えてきています。今後は、需要のバランスが逆転するともいわれていますが、市況に応じたスキルを身に着けることで、活躍し続けることができるでしょう。

とても魅力的な仕事ですので、ぜひ候補として検討いただきたいと思います。

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【参照サイト】
厚生労働省 第51回理学療法士国家試験及び第51回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第52回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第53回理学療法士国家試験及び第53回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第54回理学療法士国家試験及び第54回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第55回理学療法士国家試験及び第55回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省 第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について