理学療法士(PT)として海外で活躍したいという方の中には、ボランティア(またはインターンシップ)という選択肢を検討している方もいるのではないでしょうか。

PTとして海外で働くよりも制度や手続き面でのハードルが低いこともあり、挑戦はしやすいかもしれません。一方で、それなりの注意点もでてきます。

今回はPTが海外ボランティアとして活動する方法やメリット、デメリットなどについて紹介していきます。

1.理学療法士(PT)が海外ボランティア(海外インターンシップ)として活動する方法

まずは理学療法士(PT)が海外ボランティアとして活動する方法について紹介します。

青年海外協力隊について

海外ボランティアと聞いたら、まず思いつくのが青年海外協力隊(以下、J O C V)ではないでしょうか。PTが海外でボランティアとして活動したい場合、まず選択肢に上がってくる制度となってきますので、こちらについて詳しく紹介していきます。

概要

J O C Vは独立行政法人国際協力機構(以下、J I C A)が派遣するボランティアのことです。ボランティアの派遣先は開発途上国であることが基本で、そこで現地の人々と共に生活し、同じ目線で課題解決に貢献する活動を行うことが目的とされています。

PTとして派遣される場合は、派遣先の国の要請によっても役割は異なりますが、現地の病院や保健施設などに配属となり、同僚や患者さんに対して自身の経験や知識、技術を還元していくことが主な活動内容となってきます。

ボランティアという身分ですが、現地への渡航費や生活費についてもJICAが負担してくれるので、金銭的な面についてもそれほど心配しなくて良いもの魅力です。

参加方法について

JOCVとして活動したい場合は基本的にJICAが年2回行う募集に応募して、選考試験に合格する必要があります。PTとして参加する場合は条件として3年以上の臨床業務経験が課されることがほとんどですが、それをクリアできれば難しい条件はあまりありません。

選考は書類による一次選考と2つの面接による二次選考があります。書類選考はPTとしての経験や知識が幅広い観点から問われ、面接では人物面と技術面をそれぞれみられます。時に厳しい面接官もいるのでしっかりと自分の意見を述べられるように練習しておくと良いでしょう。

また、派遣にあたって健康面はかなり重視される項目になってきます。参加を検討される場合は健康面に気をつけて生活するように心がけてください。何らかの持病がある場合でも参加は可能ですが、事前にJICAや主治医に相談が必要です。

活動について

選考に通り、晴れてJOCVとしての派遣予定となった場合は派遣前に70日間の語学訓練に入ります。活動先の国の言語は多岐にわたるため、集中的に学習をすることで基本的な事項を身につける必要があります。

その後、すぐに出国となり、活動先の国へ渡航するとそこから2年間のボランティア活動が始まります。活動内容はある程度は定まっていますが、予定通りに進まないのが普通です。その都度現地の人々とコミュニケーションを取りながら、自身で課題を見つけ解決に向けて取り組んでいく姿勢が重要となってきます。

派遣期間終了後について

派遣期間が終了すると帰国し、それぞれの進路に進みます。元々の職場に戻る方もいれば、違う職場に就職する方もいます。中にはPTとしてではなく、国際協力の分野で活躍するために大学院に進学する方や、J I C AやN G Oなどで働くことを選択する方もいます。

ここまでJOCVとして活動するための流れについて紹介してきました。派遣国は応募時期によってかなり違いが出てくるので、行きたい国や活躍したい分野がある場合はこまめにチェックしておくことをおすすめします。

青年海外協力隊以外の選択肢について

ボランティアではないですが、インターンシップとして海外の医療現場へPTの派遣を斡旋している団体もあります。それがプロジェクト・アブロードという団体で、年間を通して数カ国へのPT派遣を行なっています。

対象となるのは理学療法に興味のある大学生や社会人となっており、厳密な参加条件は課されていません。活動言語も英語が基本となっており、必要な語学レベルも設けられていないようです。

渡航費や生活費なども含めて費用がかかってくること、活動期間も最低2週間からと短くなってくることがJOCVとの大きな違いになってきます。費用はかかりますが、英語ができて、短期間で少しだけ海外の理学療法に触れてみたいといった方にはおすすめのプログラムかもしれません。

2.海外ボランティア(インターンシップ)として活動するメリット

理学療法士(PT)が海外でボランティア(インターンシップ)として活動することで得られることはたくさんあります。それらのことをこちらの章で少しだけ紹介していきます。

さまざまなスキルを習得できる

海外で活動することで日本語以外の言語をはじめ、現地の人とのコミュニケーションスキルや生活力や環境への適応力、問題解決能力など多くの能力を身につけることができます。

特に多様な価値観を持つ多くの人と関わることで、視野が広がり、一つの課題について色々な観点から捉えることができるようになります。これはPTとして仕事をしていく上でも大きなメリットになってくると思います。

貴重な体験ができ、自信がつく

海外で生活するというだけで、日本では経験できないような出来事に遭遇することができます。日本では食べられない物、見ることができない景色、触れることができない考え方など全ての経験が貴重なものになってきます。

想定外のことが起こることは日常茶飯事で、サポートがあるとは言え、様々なことを自身の力で解決しなければなりません。一つ一つ困難を乗り越えた経験は自信に変わり、ちょっとしたことでは動じないような強い精神力を身につけることができるかもしれません。

その後のキャリアアップに役立つ

海外で活動した経験がその後のキャリアにもつながります。

医療やヘルスケアの分野で国際協力の分野に進んだり、JICAに就職してボランティア事業の発展に従事したり、NGOを立ち上げて社会課題の解決に取り組んだりと歩むことができる道の選択肢は広がってくると思います。

もちろん帰国後にPTとしてのキャリアを歩むのも一つの選択肢です。海外での生活を経験し、多くの価値観に触れた後なので、日本にいた頃とは違った患者さんへの関わり方ができるようになっているかもしれません。

3.海外ボランティア(インターンシップ)として活動するデメリット

海外でボランティア(インターンシップ)として活動する上では、もちろん注意しなければならないこともでてきます。どんなことに気をつけなければならないか一緒に見ていきましょう。

安全や衛生面で問題がある場合が多い

海外ボランティアで派遣される国は開発途上国であることがほとんどです。衛生面や安全面では日本ほど安心できる状況ではなく、かなり注意が必要となってきます。

特に飲み水や食べ物については鮮度が保たれているかしっかり確認しなければなりませんし、夜間や人通りの少ない場所では犯罪に遭うリスクも高くなってくるので、行動範囲についても気をつける必要が出てくるでしょう。

また、医療体制も十分でないこともあるため、極力病気や怪我をしないように努めることも重要です。万が一受診が必要になった際に、治療を受けられる病院をあらかじめ探しておかなければならないでしょう。

言語の習得に苦労をすることがある

基本的に、活動する国の言葉でコミュニケーションを取らなければなりません。英語以外の言語であることも多く、初めて触れる言語だと訓練があるとはいえ、習得に時間を要します。

そのため、活動序盤は現地の人とコミュニケーションを取るのに苦労することも多いです。また、国によっては地域ごとに話される言葉が違ったりするので、場合によっては国の公用語と現地語といったように複数の言語習得が必要となってきます。

いずれにせよ言語を習得できないうちはしっかりとしたコミュニケーションを取ることが難しいので、この点については努力が必要となってくると思います。

専門的な知識や技術の向上は望めないことが多い

先進諸国への留学と異なり、ボランティアやインターンシップでの活動となると、その経験が自分自身の専門性を向上させることに直接は繋がらないことが多いです。

その理由としては、ボランティアといえど立場上、活動先の同僚たちの知識や技術の向上を図る、課題解決を行うといったことが目的となってくるので、専門知識や技術を吸収することが目的とならないからです。

それでも、一人の人間として、また医療人としては素晴らしい経験ができる可能性は高いので、あまりネガティブに捉えなくても良いかもしれません。

4.まとめ

今回は理学療法士(PT)が海外ボランティア(インターンシップ)として活動するための方法やそのメリット、デメリットについて紹介しました。

PTとして海外で活躍することを検討している方はJOCVが最も効率的かつ現実的な手段となってくると思います。自身の能力ややる気次第では派遣期間終了後に現地に戻って働いたり、継続して社会課題の解決に向けた活動を続けたりすることも可能です。

長期間海外で生活し、活動することはハードルが高いように思われますが、どんな環境であれ、慣れてくると楽しめるようになってきます。少しでも興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

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【参照U R L】
JICA海外協力隊
プロジェクト・アブロード