作業療法士(OT)の活躍の場は、急性期から在宅ケアまで多岐にわたります。その中のひとつに「精神科病院・病棟」があり、精神疾患で苦しむ患者さんに対し、作業療法士(OT)としてさまざまな訓練・サポートを行っています。

精神作業療法に興味はあるものの、実際の仕事内容がイメージできず、自分に適性があるのか・やりがいはあるのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、「精神科に興味があるけれど、実際にどんな職場なのか知りたい」「精神疾患のある患者にどのような精神作業療法を行うのか知りたい」という方に向けて、精神科作業療法士の仕事内容・役割についてご紹介します。

1.精神科で働く作業療法士(OT)は他の病院と何が異なるのか

まず、一般病院と精神科病院における作業療法士(OT)の仕事は、どのような点が異なるのでしょうか?

一般病院での作業療法

一般病院で作業療法の対象となるのは、主に脳血管・神経内科・脊髄疾患・手外科など「身体的な障害」を持つ患者です。「脳梗塞の後遺症で入浴や排泄動作に不安がある」「手先がしびれて細かい作業がむずかしい」など、生活の中で困難を感じている動作を中心に、より生活しやすい状態に近づけるための訓練を行うことが主な役割です。

精神科病院での作業療法

一方で精神科病院における作業療法の対象は、鬱病・統合失調症・不安神経症・認知症などにより、「社会での生きづらさ」「生活のしづらさ」を抱えている患者です。精神疾患で苦しむ患者の多くは、極度の緊張や不安から他者との交流が難しかったり、単純な生活動作も十分に行えなかったりします。

そのような患者に対して、生活リズムの安定化・生活動作の獲得・自信の回復・社会参加などを目指した訓練・サポートを行うことが、精神科における作業療法士の役割となります。

このように、対象となる領域によって仕事内容は若干異なりますが、「作業療法を通じて生活動作を獲得し、その人らしい生活が送れるようにする」という考え方はどの領域でも共通することです。

2.精神疾患に苦しむ患者さんに作業療法士(OT)ができること

精神疾患に苦しむ患者に対して、作業療法士(OT)ができることは多くあります。作業療法が患者にどのような変化をもたらすのか、具体的な例をいくつかご紹介します。

心身機能の改善・維持

体を動かしたり、目の前の作業に集中したりすることによって、精神症状の安定化・身体機能の回復を目指します。

生活リズムを整える

患者の回復過程に応じて、少しずつベッドから離れて体操や作業に取り組むよう促し、規則的な生活リズムが獲得できるようサポートします。

生活スキルの獲得

食事・排泄・入浴・更衣などの生活動作をはじめ、金銭管理・火元の管理・道具の使い方など生活に即した訓練を行います。これらの作業療法によってセルフケア能力を高め、社会復帰に向けた意欲・自信につなげることを目指しています。

他者との交流・自己表現を促す

集団での作業療法を通じて、対人関係の不安を取り除き、共同作業や他者との交流に楽しみを見いだせるようサポートします。また、人の話を聞く・自分の気持を表現するなど、対人関係をスムーズにするためのスキルを身につけられるよう関わります。

自信の回復

作業療法を通じて、生活動作や対人関係の不安を徐々に解消し、自信を取り戻せるようにサポートします。

3.鬱などの精神疾患に必要なリハビリとは

実際に、精神疾患の患者に行われるリハビリにはどのようなものがあるのか、一般的な内容をご紹介します。

基本的動作能力の訓練

基本的動作能力とは、運動・感覚・心肺機能・認知機能のことです。身体機能を改善するための運動が中心で、簡単な体操・ウォーキング・キャッチボール・風船バレーなどが代表的です。

応用的動作能力の訓練

応用的動作とは、食事・排泄・入浴・更衣などの日常生活動作で、より生活に即した訓練を行います。料理・掃除・洗濯など、家事動作の習得を目指した作業療法も行います。

社会的適応能力の訓練

社会復帰した際に、基本的動作・応用的動作と同じくらい重要なのが、対人関係・公共交通機関を利用しての外出・書字・計算といったスキルです。また、余暇を充実させるための趣味を見つけたり、就労を視野に入れた就業前訓練なども行ったりします。

このほか、鬱病の患者によく見られる認知の偏り(こだわり・思い込みなど)を軽減し、リラクゼーション法を指導するといった心理教育的な関わりや、病気の再発防止・家族支援・就労支援なども作業療法士(OT)の役割に含まれます。

精神科領域における作業療法士(OT)の仕事内容は非常に幅広く、専門性をより深められる職場です。精神作業療法に興味のある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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