超高齢化社会を迎えた日本において、「理学療法士(PT)の資格があれば、仕事に困ることはない」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。

実際にPTは将来性のある仕事と認識されていますが、現在は毎年1万人程度の資格保有者が誕生するなどPTの数が増えてきており、今後は競争化が進むことも懸念されています。

PTは専門性の高い仕事ですので、資格を取得するまでにはたくさんの時間とお金が必要です。努力して手に入れたPTの資格に対する将来性についての不安は払拭しておきたいですよね。

今回はあらゆる視点からPTの将来性について解説していきますので、不安を持っている人はもちろんPTの将来性が気になる人はぜひ最後までお読みください。

1.理学療法士(PT)の将来性は十分にある

理学療法士(PT)は、病院や介護施設などでリハビリテーション業務に就く人が多くを占めます。リハビリテーションの対象者の多くは高齢者であるため、高齢者の割合が多くなるほど需要は高まるといえるでしょう。

また、近年では病院や介護施設以外の療養施設やフリーランスなどで活躍するケースも増えてきており、活躍の場は広がりをみせています。

このようにPTの将来性は十分にあるようにみえますが、なぜ将来性を不安視する声があがっているのでしょうか。もう少し詳しくみていきましょう。

2.理学療法士(PT)の将来性が不安視される2つの理由

まずは、PTの将来性が不安視される具体的な理由について、主なものを2つご紹介していきます。

PTが増え飽和していく

PTの養成校増加に伴って数が増えており、2011年では約9万人だった有資格者が2021年では約19万人まで増加するなど、わずか10年で2倍にも膨れ上がっています。

こうした背景もあり、PTが飽和していくのではないかという不安がささやかれるようになりました。

実際に厚生労働省の資料によるとPTの供給数は、2040年に需要数の約1.5倍になると推測されています。この情報だけをみるとこの先大丈夫なのかと心配になるのも仕方ありません。

しかし、2007年に高齢者の割合が21%を超え「超高齢化社会」を迎え、翌年からは人口減少、さらに2065年には人口の約25%が後期高齢者となり、高齢化も38%を超えると推測されるなど医療介護業界の需要が低くなるとは考えにくい数値が出されています。

人口が減少していく日本ではどの業種も競争が激化することが予想されるため、人口比率の高い高齢者をターゲットにでき健康産業にも介入できるPTの需要は、高まることはあっても途絶えることはないと考えられます。

機械化によって仕事が奪われる

近年の人工知能(AI)の発展は目覚ましいものがあり、人間が担っていた業務がAIに奪われるAI失業があらゆる職種で懸念されています。リハビリテーションにおいても例外ではなく、すでにリハビリテーションを担うロボットが導入されている事例も出てきています。

例えば、機能訓練を行う際に適切な出力で運動をサポートする機能が備わっているなど、PTが臨床で行うことを高度に再現しているだけでなく、リハビリテーションプログラムも短時間で作成できるようになることも予想されています。

また、画像分析などにも応用しやすいため、AIを取り入れていく施設は今後さらに増えていくと予想できます。

しかしながら、AIの導入により仕事内容が減少したとしても、PTそのものが不要になるということは起こりにくいと考えられます。

AIを導入することで、PTが時間をかけて作っていたリハビリテーションプログラムや実施計画書、サマリーなど直接患者様に関わること以外の仕事を任せることができ、リハビリテーションにかける時間を増やせることはもちろん、新たな仕事も生まれるはずです。

しかし、リハビリテーションにおける患者様とのコミュニケーションは必要不可欠です。病気やケガにより身体だけでなく、心にもダメージを受けている患者様やご家族に対してAIがフォローできる範囲には限りがあります。

AIで代用できるものが増えることでPTの負担が減り、より良いリハビリテーションを提供できるように共存していくようになるのではないかと予想されます。

3.これからの理学療法士(PT)に求められること

理学療法士(PT)は今後も需要の高さを維持することが予想されますが、有資格者は増加し続けているため競争率が高くなることには変わりありません。

競争が激しくなったとしても必要とされるためにできることは、どんなことか詳しく紹介していきます。

他人に負けない得意分野

やはり、他のPTと違いが明確にあることは重要です。自分の得意分野や時間をかけて勉強をしてきた分野、研究をしている分野などがあると大きな強みになります。

ただ流れに身を任せて経験年数だけが経過していくのではなく、他のPTと差別化できる自分なりの強みを身につけていくことを意識しましょう。

呼吸療法認定士や糖尿病療養指導士、心不全療養指導士など各学会が認定している資格や、理学療法士協会によって認定される認定理学療法士や専門理学療法士などの資格を保有していると資格への信頼度も高いため安心です。

社会の中での理学療法士を理解する

社会情勢は目まぐるしく変化するため、求められる役割も時代とともに変わっていきます。分かりやすいものだと、診療報酬や介護報酬の改定によってPTの仕事内容や病院や施設の方針が変わるといったことが挙げられます。

そのほかにも、時事問題や社会の流れから、病院内ではなく社会の中でPTがどのような立ち位置にいるのかを理解し、どのようなことが求められていくのかを分析することも重要です。

国の方針や社会のニーズに応えていく視点を持ちながら日々の仕事に取り組むことで、客観的な視点を持って仕事をみる力を養うことにもなります。

1歩先をみながら知識や経験を積むことで、より広い視野で仕事を進める習慣ができていきます。時代や社会の変化に対して、今後どのようなことが重視されていくのかを考えることは将来を考えたときの大切な視点であると考えます。

PTに関する社会情勢については、厚生労働省や日本理学療法士協会からの情報、医療報酬、介護報酬の改定の情報などを小まめにチェックし、今後の動向を視野に入れる習慣をつけましょう。

病院や介護施設などの組織に属している場合でも、組織の方針に従うだけでなく、国の方針や社会のニーズにはアンテナをはっておくようにすると安心です。

職域維持と新しい領域へのニーズの開拓

PTの多くが病院やクリニックなどの医療機関や介護福祉施設などで勤務しています。訪問リハビリテーションなど地域にも活躍の場が広がり、以前よりもPTがどのような形で力になれるのか周知されてきています。

しかしながら、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などと混同されやすく、実際に職域をすみわけしている部分ではありますが、PTが主だって活躍している場が数年後には他の資格にすり替わっている可能性もゼロではありません。

需要を保つためには、現在の職域を守ることは重要な課題でもあります。そのためには、患者様や他職種のニーズをくみ取り、協調しながら目標を達成していくことが大切です。

また、現在の職域だけでなく新しい領域にPTが満たすことのできる潜在ニーズが隠れている場合もあります。

そのような視点で物事をみていくことで、PTの新しい働き方を示していくことができるかもしれません。

4.まとめ

毎年増え続ける理学療法士(PT)の数に不安を抱きがちですが、まだまだ高齢化率が高い数字で推移していくことが予想されており、PTの需要がなくなることは考えにくいといえます。

ただ、将来における競争化がなくなるわけではなく、PTとしての自分だけの強みを持っていることは大切です。

新型コロナウイルスの感染拡大のように、急激に変化を強いられる可能性もあるため、どのような情勢になっても対応できるように引き出しを用意しておくとことをおススメします。

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