「作業療法士(OT)を目指そうと思うけど、それぞれのリハビリ専門職の違いがいまいち分かりづらく本当に間違いないだろうか」と不安を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特にリハビリ職について調べ始めたばかりの方にとっては、分かりにくい部分だと思います。

そこで今回は、作業療法士(OT)の視点で各職種との違いについて整理してみました。

まだ職種は決めていないものの「将来患者さんへリハビリをする仕事に就きたい」と考えている学生の方や、社会人になって改めてこうした仕事に興味を持っている方もぜひ参考にしてみてください。

1.作業療法士(OT)と他のリハ職の基本的な仕事や役割の違い

厚生労働省が定めている各職種の違いに着目し、実際の業務なども踏まえてOTと他のリハビリ専門職の違いについて見ていきましょう。

各職種の定義の違い

まずは厚生労働省が定めている作業療法士(OT)と理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)の定義をご紹介します。OTとPTは比較されることが多いだけあり近しい言葉が使われていますが、STは大きく異なる印象を受けると思います。ちなみにOTは「Occupational Therapist」の略、PTは「Physical Therapist」の略、STはSpeech Therapistの略です。

各職種の違いについては次の節から詳しく解説していきます。

OTの定義

体や精神に障害のある人がその心身機能を回復し、日常生活・社会生活に復帰できるように、食事、歯みがきなど日常生活の動作、家事、芸術活動、遊び、スポーツといった生活の中における作業や動作などを用いて訓練・指導・援助を行う医療技術者

厚生労働省「作業療法士-職業詳細」

PTの定義

身体に障害がある人等の身体運動機能の回復や維持・向上を図り自立した日常生活が送れるよう、医師の指示の下、運動の指導や物理療法を行う医療技術者

厚生労働省「理学療法士-職業詳細」

STの定義

ことばによるコミュニケーションや嚥下に困難を抱える人を対象に、問題の程度、発生のメカニズムを評価しその結果に基づいて訓練、指導等を行う

厚生労働省「言語聴覚士-職業詳細

作業療法士(OT)と理学療法士(PT)の違い

まず対象者ですが、PTが「身体障害を持つ方」を対象としているのに対し、OTは「身体に障害を持つ方」だけでなく「精神に障害を持つ方も対象」となります。

精神科領域での作業療法もOTにとっては大きな役割であり、精神科領域では作業活動などを取り入れ精神症状の改善や社会性の回復を図ります。そのほかにも、認知症の方に対しても作業活動を活かしてリハビリをすることもあります。

次にリハビリ内容の違いですが、PTは「身体運動機能の回復のために、運動の指導や物理療法を行う」との記述があるように、具体的には立位や歩行、階段昇降などの粗大的な動作に焦点を当て訓練をして改善を図っていきます。

それに対し、OTは改善を促すのは運動機能にとどまらず、食事、歯みがきなど日常生活の動作や家事動作の改善を促し、結果として自宅での生活や社会生活を送れるようにつなげていきます。

OTはPTよりもさらに生活場面に着目し、日常生活での介助量が減ったり自立を図ったりできるように運動機能訓練と並行して日常生活動作訓練をしたり、環境を調整したりすることが大切になります。

また、リハビリ内容も筋力強化訓練やバランス訓練といった運動機能訓練だけでなく、芸術活動、遊び、スポーツなどさまざまな手法を用いて総合的に機能回復を図れる点もOTの強みであるといえます。

作業療法士(OT)と言語聴覚士(ST)との違い

OTとSTは患者さんに対するアプローチの仕方が大きく異なります。

例えば、脳卒中などの成年の患者さんにおいては、STが嚥下機能の改善に焦点を当ててアプローチするのに対し、OTは上肢や体幹の機能改善、食べる姿勢のポジショニング、スプーンやお皿などの食べる道具などの環境調整などにアプローチをしています。

このように、OTとSTは同じ患者さんの食事場面でも違った視点で訓練をし、より患者さんの食事動作が改善するように協力し関わり合います。

また、小児の患者さんにおいてはSTはコミュニケーションの問題を中心に関わっていくのに対して、OTは遊びなどを通して感覚統合や運動機能の改善を図っていくといった違いが挙げられます。

リハビリ専門職が目指すところは変わらない

OTはPTとSTと同じ患者さんを担当することもあり、リハビリの着目点やアプローチする部分は異なっていても、患者さんの身体機能の回復や社会性の獲得などの最終目的は一緒です。

そのため、それぞれが専門性を持ち関わり情報交換をしながら協力体制を組むことで患者さんを総合的な視点で評価し、患者さんの改善につなげていくことができるのです。

2.人口や働く場所、将来性、給料の違い

基本的な職種の違いは先ほどご紹介した通りですが、ここからはもう少し踏み込んだ視点でそれぞれの職種の違いをみていきましょう。

人口や働く場所の違い

はじめに、人員配置や勤務先などの観点から作業療法士(OT)とその他の職種の違いをみていきます。

・理学療法士(PT)との違い

まず従事者人口ですが、作業療法士協会によると2023年3月時点において会員数は6万4,468人となっているのに対し、理学療法士協会では2023年3月時点において会員数は13万6,357人と約2倍の人口になっています。

あくまで協会の会員数ですので総数とはずれるかもしれませんが、大まかな人数差は近しいものがあると感じています。例えば総合病院などではPT、OTともに勤務をしていますが、勤務している人数はPTの方が多い場合がほとんどです。

つぎに勤務する科についてもみてみると、OTは日常生活動作の低下を引き起こす脳や神経の疾患である脳外科や神経内科などを中心に患者さんを担当することが多いです。

手のけがなどで整形外科の患者さんにリハビリをしたり、廃用症候群などで呼吸器科、循環器科などに関わったりすることもありますが、その数はPTに比べると少ないでしょう。

また、就職先を考えてもPTの方が間口は広い印象があります。例えば、小規模のクリニックなどはOTしかいないというケースはあまり聞きませんが、PTしかいないという職場はよくある印象です。

・言語聴覚士(ST)との違い

日本言語聴覚士協会によるとSTの人口は2023年3月時点において3万9,896人となっており、OTはSTと比べると倍とはいかないもののそれなりの人数差があります。

これにはSTの法律が最近できたことが大きく影響しており、OTが関係する「理学療法士及び作業療法士法」が1965年6月29日に公布されているのに対し、「言語聴覚士法」は1997年12月19日に公布されておりまだ25年程度しか経っていません。

そのため、必然的に国家試験の回数自体も少なく、免許取得者も少なくなります。また、勤務先も、嚥下障害を引き起こしやすい、内部障害や脳や神経疾患に関わる診療科での勤務が中心となるため、勤務先もOTの方が多い傾向にあります。

ただ、以前はPTとOTは複数名勤めていてもSTは一人しか勤務していないなど一つの職場でSTの人員が少ないことが多かったのですが、近年はそれが見直され、ST人口が増えるにつれSTの人員が増えている病院が多くなっていると感じています。

リハビリ専門職の将来性で見る違い

基本的にリハ職の将来は明るいですが、各職種によって注目すべきポイントは異なります。ここではPT・STそれぞれの特性を踏まえてOTの今後を考えてみたいと思います。

・理学療法士(PT)との比較でみる作業療法士(OT)の将来性

内閣府が公表している「令和5年版高齢社会白書」によると、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が3653万人に達すると見込まれています。

超高齢社会の日本において「理学療法による身体機能の維持」の重要性に加えて、「作業療法による認知機能の低下予防」もとても大切であり需要は高まると思われます。

例えば、高齢者向けの施設では入居者さんが自分らしく健康を維持するためにPTは運動指導などを通し、筋力の維持といった廃用症候群の予防を図り身体機能の維持を中心に関わっています。

それに対してOTは、機能訓練だけでなくレクリエーションや手芸などの趣味活動を介した関わりを通して認知機能改善や情緒の安定にアプローチできます。

さまざまな活動を介して、身体機能の改善と併せて認知機能の低下予防や改善を図れる点においてOTならではの大きな強みを持っているといえます。

・言語聴覚士(ST)との連携でみる作業療法士(OT)の将来性

これまではSTとOTがともに働く職場として、脳卒中の方などが入院する病院に焦点が当たりがちでしたが、近年では「発達障害」について着目されるようになってきました。

この背景には「なんとなく社会になじめない」「自分が他人と違うと感じてもそれがなぜだかわからない」と漠然と感じている人たちが、実は発達障害によるものであったということがわかってきたことが考えられます。

実際に療育などの早期の介入の重要性がとなえられるようになり、2012年には発達障害などを持つ児童を対象とした放課後等デイサービスも整備され、小児分野でのリハビリ専門職の需要が一層高まっています。

特に発達障害を持つ児童では、日常生活動作や社会性を向上させるためにOTとSTとの協力がなくてはならないものとなりつつあります。

具体的にはSTのコミュニケーションに対するアプローチに加え、OTによる感覚統合などの視点を活かし、遊びや体の使い方、日常生活動作をスムーズにするためのアプローチを行っていきます。

しかし、まだまだ小児の分野で働くリハビリ専門職は少ないのが現状です。今後小児の施設が増えていくことで、OTとST(さらにはPTも)の小児施設での活躍の場が増えていくでしょう。

給料の違いはない

PT、OT、STの仕事自体に大きな給料の違いはありません。職種が変わっても同じ職場の同じ勤続年数のスタッフ同士であれば、給料は一緒であるといえるでしょう。

違いがあるとすれば、専門学校卒であるか、大学卒であるかでわずかに違いが出ることがあります。

ほかには、非正規雇用(パート)で働く場合は、病院などで働く場合よりも訪問リハビリで働く方が時給は良い傾向にあります。しかし、同じ訪問リハビリで働くのであればPTであろうとSTであろうと給料は変わらないのが現状です。

またOTに関していえば、身体障害を対象とする病院や施設に比べると、精神障害を対象とする病院の方が給料は高くなる場合が多い印象があります。

3.どの職種で働こうか悩んでいる方へ

一見同じリハビリ専門職でも、それぞれに「強み」があります。自分は患者さんにどのように関わりたいのか、どの診療科で働きたいかなどと考えてみるのも職種の選択に役立つかもしれません。

例えば、歩行などの基本動作を中心にアプローチしたい方、診療科でいえば整形外科やスポーツ医学に関心がある方は理学療法士(PT)を選ぶのもよいかもしれません。また、嚥下機能やコミュニケーション機能に特化してリハビリをしたい方には言語聴覚士(ST)が向いているでしょう。

しかし、日常生活により密着した関わりを行いたい方や身体機能面はもちろん、心理面にも着目し関わっていきたいと感じる方は作業療法士(OT)をおすすめします。精神科に興味がある方や作業活動を介した関わりをしたい方もOTは向いているでしょう。

自分がリハビリ専門職としてどのような働き方がしたいのかを考え、自らに合った職業選択ができるといいですね。

4.まとめ

現役の作業療法士(OT)の視点で見た、理学療法士(PT)や言語聴覚士(ST)についてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。

この記事を読んだ方が「リハビリ専門職としてどのような仕事をしたいのか」「どのような患者さんに関わりたいのか」というセラピスト像が明確になり、職業選択をしやすくなれば幸いです。

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【引用サイト】
厚生労働省「理学療法士-職業詳細」
厚生労働省「作業療法士-職業詳細」
厚生労働省「言語聴覚士-職業詳細」

【参照サイト】
日本理学療法士協会「統計情報」
日本作業療法士協会「2019 年度 日本作業療法士協会会員統計資料」
日本作業療法士協会「協会について」
日本言語聴覚士協会「会員動向」
厚生労働省「児童福祉法の一部改正の概要について」
内閣府「令和5年版高齢社会白書」