作業療法士(OT)は、養成校を卒業しても国家試験に合格しなければOTとして働くことはできません。
そのため、OTを目指している方は、国家試験を受験するための資格や具体的な試験方法、内容について事前に知っておく必要があります。
こちらの記事では、直近の国家試験情報をお伝えすると共に、実際にOTの国家試験を一発合格した私が国家試験の実状をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.作業療法士(OT)の国家試験の受験資格について
OTの国家試験は誰でも受けられるわけではなく、受験資格が定められています。
まずは、事前に受験資格や試験を受けるための手続きについて知っておきましょう。
作業療法士の国家試験受験資格について
作業療法士の国家試験を受験できるのは、厚労省によって以下のいずれかの資格を満たす方とされています。
・大学を受験できる資格を持ち、文部科学大臣が指定した学校もしくは都道府県知事が指定した作業療法士養成施設で3年以上、作業療法士に必要な知識や技能を修得した方。もしくは、受験する年度において卒業する見込みの方(大学受験資格とは高等学校を卒業または卒業見込みの方もしくは、高等学校卒業程度認定試験を取得した方に認められています)
・外国の作業療法関連の学校や養成施設を卒業した方、あるいは外国で作業療法士の免許を得た方で、厚生労働大臣が1の条件を満たす者と同等以上の知識と技能を有すると認定した方。
・1965年(昭和40年)8月28日時点、文部大臣もしくは厚生大臣が指定した学校や施設において作業療法士に必要な知識と技能を修行中で、その後、当該学校や施設を卒業した方。
つまり、高校以上を卒業し、作業療法士の知識や技能を修得できる学校で3年以上学び、所定の単位を修得した方が、作業療法士の国家試験を受験できます。ちなみに、所定の単位は作業療法教育の最低基準によって101単位以上と定められています。
また、OTは大卒の方や社会人を経験した方であっても、改めて養成校に通うことで国家試験を受験することができます。その場合、一部履修が免除になる既修得単位認定制度を設けている学校もありますので、各養成校に問い合わせてみてください。
全国のOT養成校はこちらをご覧ください。
【一般社団法人 作業療法士協会 作業療法士養成校一覧(2023年度)】
試験を受けるための手続きについて
作業療法士の国家試験を受験するためには、定められた受付期間中に受験願書、写真、返信用封筒、卒業見込証明書等を提出する必要があります。
また、受験手数料は10,100円で、受験手数料分の収入印紙を受験願書に貼り納付する形となります。
基本的には、記載ミスや書類の不備がないよう養成校にて教員の指示の元願書を作成していくことが多いです。大切な手続きであるため、複数の目で確認するようにしましょう。
2023年2月19日、20日に行われた第58回作業療法士国家試験の詳細については厚生労働省の以下のサイトを参照ください。
手続きというわけではありませんが、私が通っていた養成学校は試験会場から遠かったため、養成校の受験生全員で前日にバス移動し、試験会場近くのホテルに泊まることが定例となっていました。2月末は雪の心配などもありますので、ゆとりをもって会場に行くことも大切な準備といえるでしょう。
2.2023年の国家試験の日程と今年の合格率
作業療法士(OT)の国家試験は毎年1回行われます。2023年の国家試験日程に触れながら、私が受験した時の情報と合わせてOTの試験合格基準についても詳しくお伝えしていきたいと思います。
2023年2月19日.20日が試験日
私の時もそうでしたがOTの国家試験は毎年2月の末に行われており、第58回作業療法士国家試験は2023年2月19日(日)と2月20日(月)に行われました。
2日間の日程になっていますが、一般の方は2023年2月19日(日)が試験日で、一般問題と実地問題の筆記試験を行います。重度視力障害者の方は、口述試験及び実技試験として2023年2月20日(月)の日程が設定してあります。
この順番も基本的に前後しないため、1日目が一般の方、2日目が重度視力障碍者の方になります。
2023年は合格率83.8%
作業療法士国家試験の合格率は、ここ数年全体の80%前後を推移しており、2021年は81.3%と平均的な結果となりました。私が受験した2012年時の合格率も79.7%でしたので、難易度は大きく変わってないと思います。
ただ当時を振り返ってみると、作業療法士が国家資格となった1966年以降作業療法士が増加してきたため、国家試験合格率を少しずつ下げていくのではないかという話が出ていました。
実際、2006年の91.6%以降は合格率が90%を超えることはなくなっていましたので、年々厳しくなるんだろうなと感じていましたが、ここ5年間では2019年の71.3%が最も低く、2020年の87.3%が一番高い点を踏まえると、合格率はこの水準が続きそうな印象を受けます。
2023年作業療法士国家試験の合格率の詳細に関しては、下記の厚生労働省のページを参照してください。
【第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について】
作業療法士の試験合格基準は?
筆記試験は、午前に100問(問1~100)、午後に100問(問1~100)の計200問あります。
100問のうち問1~20まで、午前午後合計した40問を「実地問題」と言い、1問3点で計算されます。一方、実地問題以外の問題(各問21~100の合計160問)は1問1点で計算されます。
実地問題は35%以上の正答率、総得点は60%以上が合格基準になることが一般的です。しかし、合格基準点はその年によって微妙に変わりますので、実地問題は40%以上の正答率、総得点は70%以上を目指して学習に励むと良いでしょう。
3.作業療法士(OT)の国家試験の内容と勉強方法
最後にOTの国家試験に出される具体的内容やどのように勉強していくと良いのかをご紹介していきます。
こちらを参考に、事前の心構えや試験対策に取り組んでいきましょう。
国家試験の内容
一般問題の出題科目は「解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要、作業療法」、実地問題は「運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要、作業療法」と幅広いです。
試験はマークシート式で行われますが、合計200問と非常にボリュームがあり、午前と午後に100問ずつを2時間40分かけて解答することになります。1問に時間をかけるのではなく、次々に解答していかなければなりません。
国家試験の勉強方法
OTの養成学校では最終学年時に一番大切な臨床実習を行うことが多いです。それに加え国家試験の勉強もしていかなければならないため、いかに効率よく勉強していくかが重要になるでしょう。
私の卒業した養成学校の場合は、4年生になると国家試験対策が始まり模擬試験などを受け始めますが、臨床実習が12月初旬まで詰まっていましたので、本格的な国家試験の勉強を行ったのは12月から2月末の試験当日までの約3ヶ月間でした。
その3ヶ月間はみな朝から晩までほぼ休日も関係なく学校に籠り、ひたすら参考書や過去問を使って勉強する日々です。少しでも時間効率を上げるために、自分の得意分野と苦手分野を分析や、過去問の出題傾向の確認など、得意分野で出題の多い分野から勉強を始めるなど、各々が工夫して取り組みます。
また、一般問題と実地問題のどちらを重点的に勉強するかですが、基本的にはボリュームが多い一般問題は広く網羅できるように、複数科目をスピード感もって勉強していかなければなりません。
実地問題は問題数こそ少ないですが、配点が高くOTとして重要な問題が出されますので、ここでしっかりと点が取れるように、応用問題に対応できるよう重要なポイントは深く理解する必要があります。
いずれにせよ、同期とともに切磋琢磨しながら学んでいくことや、長年国家試験対策には励んでいる教員の方々と共に国家試験の勉強を進めていくことが、プレッシャーに耐えながらも一発合格するための秘訣になると私は思います。
4.まとめ
作業療法士(OT)は国家試験に合格しなければ、4年間養成校に通っても、就職先が決まっていてもOTとして働くことができません。
その重圧はとても大きく、私自身も国家試験対策の時期は人生の中で間違いなく一番勉強していたと言えるくらい必死に勉強に励んでいました。
しかし、それくらい国家資格というものは重い責任をもって働いていく職業である証ですし、合格すれば誇りをもって一生働いていくことのできる資格です。
大変な道のりではありますが、やりがいと対策方法は必ずありますので、ぜひ自分の目指すOTになるために頑張っていってほしいと思います。
不明点があれば、是非PTOT人材バンクのキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
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【参照サイト】
厚生労働省 作業療法士国家試験の施行
作業療法教育の最低基準
一般社団法人 日本作業療法士協会 作業療法士養成校一覧(2023年度)
厚生労働省 第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について