作業療法士(OT)として働くなら、より良い労働環境で、なおかつ理想とする収入で働きたいと感じる方も多いでしょう。

キャリアアップを目標とすることで、自分の理想とする働き方を実現できるかもしれません。この記事では、OTがキャリアアップする方法について具体的にご紹介します。

1.キャリアアップとスキルアップは違う

キャリアアップとスキルアップは似たような意味で使われていますが、厳密には意味合いが異なります。ここでは、二つの言葉の違いにも着目しながら、キャリアアップとは何かということを解説していきます。

スキルアップは、日々の業務や自己研鑽により知識や技術を磨き、「『個人』が作業療法士(OT)としての専門性を高めていくこと」を指します。資格取得などもスキルアップの方法の一つです。

キャリアアップもスキルアップと同様に、OTとしての専門性を高めていくことは共通しています。それに加えて、キャリアアップはスキルアップで高めた専門性を活かしつつ、昇進や転職で「自らの置かれた『環境』や『立場』を向上させること」を指します。

具体例でいえば、昇進によるキャリアアップで、現場での業務だけなく、後進の育成指導を任されたり、組織運営や改革に携われたりと仕事の幅が広がることで、スキルや給料の向上につなげることも含まれます。

そして、現在の職場では昇進が難しいかもしれない、自分のしたい仕事ができないかもしれないと感じる方にとって、転職をして新たな知識・技術を増やし、結果的に立場を向上させることもキャリアアップの一つなのです。

2.作業療法士(OT)におすすめのキャリアアップ方法

キャリアアップの方法は複数ありますが、自分に合った方法を見つけることがキャリアアップの最大の近道です。ここでは、具体的なキャリアアップ方法を紹介します。

まずは担当できる領域を広げることが大切

OTでは就職する職場によって、ある程度の分野や職域は決まってきます。そのため、自分の担当する疾患・分野についてはスペシャリストになりやすいですが、それ以外の分野ではわからないことも多いという方が大半です。

そんな中で、さまざまな分野の知識に長けている方は、職場でも大変重宝されます。ほかのOTに比べて、多くの知識や技術を習得するために、担当領域を広げることはキャリアアップに大変有利です。

特に、キャリアアップで管理職を目指したい方は、さまざまな知識を持って後進の指導に当たることが必要です。一つの分野を極めるというのも、スキルアップとしては非常に効果的ですが、キャリアアップをしたいのならば、幅広い知識を習得し、知見を広げることをおすすめします。

担当領域を広げる方法は異動や転職などさまざま

所属する組織で、担当する疾患・患者は概ね決まります。例えば病院であれば、主に担当するのが高齢者なのか小児なのか、それとも精神疾患を患った方なのかなど、ある程度絞られてきます。

その中でも、比較的大きな規模をもつ総合病院では、OTが多く勤務しており、「整形疾患を担当するチーム」「呼吸器疾患を担当するチーム」「脳血管疾患を担当するチーム(その中で、さらに急性期や回復期に分けられることも)」などと細かくチーム分けすることもあります。

そのような職場の場合、自らがどこのチームに属するかによって、深められる知識と技術が変わってきます。新しく知識や技術を習得したい場合は、まず職場のチーム編成の変更を希望するとよいでしょう。

そういった職場ではない場合は、系列の事業所があれば、そこで新たに学べることはないかを考え、異動願を出してみるのも一つです。それも難しい場合は転職を考えてみてもいいかもしれません。

現在の職場で昇進を目指す場合

今の職場で昇進を目指したい場合、上記のように部署内異動や系列事業所の異動を申し出ることで、自らの知識や技術を増やしていくことがおすすめです。

しかし、系列事業所がない場合など異動が難しい場合もあるでしょう。そんな時は、無理に職域を広げようとせず、その分野でのスキルアップを図り続けることが昇進の近道です。

ここで、OTの昇進で重要視されるものを確認しておきましょう。昇進するために特に求められるものは、以下の通りです。

  1. 勤続年数、またはOTになってからのキャリア年数
  2. 集団をまとめられるリーダーシップなどの資質や仕事への姿勢
  3. OTとしての知識・技術の豊富さ

これら3つを踏まえたうえで昇進させる人材を検討します。OTを含め、医療業界は年功序列社会であるため、この3つの中でも、①の「勤続年数、OTとしてのキャリア年数」が最も重要視されます。

そのため、現在の職場でのキャリアアップを望みたい場合は、その職場で真摯に働き続けることが大切です。

「真摯に働き続ける」ことの具体例として、積極的に自己研鑽を積む姿勢が評価されることが大いにあります。

学会発表、勉強会への参加、資格取得など、その方法はさまざまですが、具体的に形に示すことで周囲(特に上司)からの評価を高め、チームリーダーや部長などに抜擢されることにつながります。日々の努力の積み重ねを意識してみてください。

転職でキャリアアップを目指す場合

現在の職場では、自分が思うように昇進できない、給与面や業務面で不満があるといった方もいるかもしれません。特に、OTの人数が多い職場では、必然的に管理職になれる確率は下がります。

そんな時には、思い切って転職をしてみることが一つの方法です。OTとしてキャリア年数が比較的長めの方は、管理職候補を募集している求人を中心に転職活動を進めると、キャリアアップがよりスムーズに進みます。

特に、規模が小さくOTが少ない事業所や、規模が小さくても徐々に事業所を増やしている施設などでは、管理職候補を募集していることも多いです。チームリーダー経験者や管理職経験者は後々の就職に有利に働くこともあるので、現在の職場より規模の小さい職場に転職することが必ずしもキャリアダウンにつながるわけではありません。

もし、現在の職場に不安があるようならば、一度自分の条件に合った職場を探してみてはいかがでしょうか。

PTOT人材バンクはキャリアアップを考慮した上での転職サポートも行っておりますので、お悩みの方はキャリアパートナーに遠慮なくご相談ください。
作業療法士(OT)の求人・転職情報はこちら

3.よくあるキャリアアップの失敗例

キャリアアップは本来ならば喜ばしい出来事のはずですが、無理なキャリアアップで心身のバランスを崩してしまったり、転職によってかえってキャリアダウンすることになってしまったりする事例も少なからず存在します。

ここでは、そうならないように、昇進や転職に伴う失敗例を解説していきます。

キャリアアップをした後の生活イメージができているかどうかが成功のカギ

現在の職場でキャリアアップした場合、心配なのは給料が上がったものの、仕事が忙しすぎてプライベートに支障が出てしまうといった事態が起こることです。

管理職になることで収入が上がると同時に、業務量も増えることが予想されます。その増え方が自分の想像以上だと、最悪の場合、自らのキャパシティを超え、心身の不調につながることもありえます。

そうならないためには、職場の管理職やチームリーダーの人の様子をよく観察し、可能であれば、リーダーとしての実情を聞いておくことです。そうすることで、昇進した後の生活をイメージしやすくなり、自分に向いているかどうかを事前に判断しやすくなるでしょう。

キャリアアップしたばかりは特に負担が大きいため、周囲の協力も必要不可欠

管理職になれば、多くのスタッフを統括し、場合によっては作業療法士(OT)以外の他職種との窓口になることもあるでしょう。当然、働く中で辛いことや悩むことも出てくることでしょう。

そんな時、自分が困った時に助けてくれる仲間がいることがとても大切です。相談に乗ってくれたり、自分を補佐してくれたりする同期や後輩がいれば、辛いことがあっても職務を全うできるでしょう。

さらに、家族の理解もとても大切です。昇進をすれば、給料が上がる分、少なからず仕事は忙しくなり、心身ともに疲労することは避けられません。実際、本来は喜ばしいはずの昇進をきっかけに精神や体調の不調を訴えるようになってしまった方も中にはいます。

キャリアアップに伴い家庭が疎かになる可能性があることや、疲れた時にはサポートしてほしい旨を家族に事前に相談しておくことで、環境の変化に対しても、柔軟に対応しやすくなるでしょう。

転職のし過ぎはイメージダウンにつながることも。労働条件をしっかりチェック!

転職を伴うキャリアアップにはいくつか注意が必要です。転職自体は決してマイナスではないですが、目的意識のない転職は面接官にも良い印象を与えません。その職場で自分なら何ができるのか、したいことは何なのかというビジョンをもって、面接に臨みましょう。

特に、短期間で職場を転々とすることは面接官の評価を下げてしまいます。前項で「担当領域を広げる方法」として、転職も手段の一つとして挙げました。転職後は、可能であれば3年程度は勤務し、その職場でメインとなる患者層・疾患についての知識や技術を深めるといった気持ちが大切です。

もちろん、自分に合わない職場であった時は転職する方がいいこともあります。しかしながら、1年程度で複数の職場を転々としている場合は、面接官に「本人に問題があって、職場が長続きしないのではないか?」と邪推されてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、転職をする場合は、自分の求める業務ができそうか、休日や収入などの労働環境が整っており、ある程度長く勤められそうな職場かをしっかりと見極めてから行うようにしましょう。

4.まとめ

これまでキャリアアップについての具体的方法や、起こりうる失敗例などを挙げてきました。キャリアアップをすることで自分の収入アップはもちろん、働きやすい職場づくりなどの自己実現が可能になります。

キャリアアップのメリットはもちろん、デメリットも把握することで、キャリアアップの具体的なイメージが付き、キャリアアップ後にさまざまな場面に対峙した時に、柔軟に対応できるようになります。ぜひ参考にしてみてください。

関連記事

作業療法士(OT)のキャリアに関するおすすめ記事をご紹介。