作業療法士(OT)は世界中におり、国際的な職業です。しかしながら、それぞれ国の環境や特徴が異なるため、国によって教育システムや資格取得にも違いがあります。

養成校が世界作業療法士連盟(WFOT)の認定校である場合、世界の作業療法事情を学ぶ授業もあり、海外での作業療法について感化され、海外ボランティアとして活動してみたいと思う人も少なくはないでしょう。

OTとして海外で活動するためには条件やデメリットもありますが、日本で働く中では経験できない貴重な経験を得ることもできます。

今回の記事では、OTが海外ボランティアとして活動するためにはどうすればよいのか、メリット・デメリットも踏まえてご紹介していきます。

1.作業療法士が海外ボランティア(海外インターンシップ)として活動する方法

作業療法士(OT)の資格を活かして海外で活動したいと考えた場合、JICAもしくはインターンシップを利用する方法が主になります。

いずれの方法も対象としている国が限られていたり、国によって免許取得や働ける条件は異なるため、どの方法を選択するか、どのような国で活動していきたいかを考えて選ぶことになります。

また、いきなり長期間海外で活動していくのは不安という方も多いと思います。私の在学していた養成校では、夏休み期間を利用して海外の医療やリハビリについて現地で実際に見学し、学ぶことができるツアーがありました。そのような機会を利用し、一度実際に見てみるというのも良い経験になるのではないでしょうか。

独立行政法人国際協力機構(JICA)の海外協力隊として活動する

OTとして海外で活動したいと考える場合に、一番メジャーなのはJICAの海外協力隊として活動するという選択肢です。

JICAの海外協力隊は満20歳から満45歳までを対象とする青年海外協力隊と、46歳以上を対象としたシニア海外協力隊の2つに分かれます。派遣期間は原則2年間と決められていますが、往復の渡航費用や現地での生活費、住居費などはJACAが負担してくれて、事前研修や活動中など様々な点でサポートを受けられるのです。

応募条件は、作業療法士の国家資格及び3年程度の臨床における実務経験が必要とされています。

作業療法の海外インターンシップに参加する

もう一つの方法は、大学生や社会人を対象として短期もしくは長期の実践型海外インターンシップを募集しているところに応募し、参加する方法です。

このインターンシップでは、現地のOTを視察したり、その地域の医療事情やリハビリを学びながら実践的に関わる機会もあります。

海外のOTを学びながら体験するとともに、様々な国の外国人インターン生とも関わることで多くの刺激を得ることができるのです。

海外インターンシップは参加費用がかかってしまいますが、比較的参加するためのハードルは低いため、興味があってまずは一度経験してみたいという方におすすめと言えます。

2.ボランティア(インターンシップ)として働くメリット

作業療法士(OT)として海外で活動するということは、日本では得られない多くのメリットがあります。ここでは主に3つのメリットについてご紹介していきたいと思います。

貴重な体験ができ、自信につながる

日本で働いているだけではわからない海外事情や、環境や道具が整っていない中で作業療法を提供するための知恵や工夫、海外の最先端の医療や作業療法事情を目の当たりにすることができるというのは、多くの作業療法士が経験できるものではありません。

海外で作業療法士として活動し、自分のスキルや経験にするということは唯一無二の糧となり、必ず自分の自信に繋がります。

さまざまなスキルが身につく

海外で活動していくためには、OTとしての知識や経験だけではなく、語学力をはじめ、適応能力やコミュニケーション能力、マネジメントスキルなど様々なスキルが必要となり、それらを向上させる絶好の機会となります。

それらのスキルは日本に帰ってきてからも必ず活きるものとなり、あなたの強みとなるでしょう。

キャリアアップに役立つこともある

海外でOTとして活動した経験は、その後の進学や就職、さらに海外で働く場合にも役立ちます。

例えば、海外で活動した経験をきっかけに講師依頼として養成校に呼ばれたり、より海外でのOTについて知識を深めたいと大学院に進学する方もいます。

3.ボランティア(インターンシップ)として働くデメリット

海外で活動する場合には、もちろん日本とは環境が異なり不安な点やデメリットというものも存在します。デメリットをよく理解した上で、事前によく考え、備えをすることも大切になってくるのです。

健康や治安の心配がある

活動する国によっては、治安が悪い、感染症にかかるなどのリスクがあります。特にJACAの海外協力隊でOTとして活動する場合には、発展途上国でまだ十分な医療が提供されていない地域に行くことも多いです。

その場合には、事前に感染症予防の注射を打つ、講習を受けるといった自分の身を守るための準備をしてから渡航することになります。

派遣先の国についてよく調べて、自分の身は自分で守るという意識が大切なのです。

日本の情報取得が難しい

海外にいると、日本の情報を取得する機会が減ってしまいます。日本の学会や勉強会に参加できなくなるため、日本の作業療法事情に関しては少し遠ざかってしまうのは仕方がないことです。

また、長期間海外で活動する場合には、簡単に帰国することができなくなるため、家族や友人と疎遠になってしまうこともデメリットの一つと言えるでしょう。

費用がかかることがある

海外協力隊で活動する場合には、ボランティアになるため給料は発生しません。しかし、現地の生活費や居住費、往復渡航費、現地の業務費に関しては支給され、さらに別途手当が支給されます。

しかしながら海外で活動する場合には、準備費、滞在費など、何かとお金がかかります。

短期間であれば、仕事を辞めず休職という形でも行ける可能性がありますが、長期であればそうもいきません。

海外でOTとして活動していきたいと考えている方は、金銭面においてもゆとりを持った貯蓄計画を立てる必要があるかもしれません。

4.まとめ

海外で活動したいと考えた場合、OTの資格を取得していることは一つの武器になります。

また、世界各国の作業療法では、地域情勢も異なれば、作業療法を提供する環境や手法もことなります。

OTとして成長できるだけではなく、様々なスキルや経験を得られる海外での活動は、日本のOTの中でも必ず貴重な存在になるでしょう。

ぜひ、具体的な方法やメリット・デメリットを理解した上で前向きに挑戦してみてください。

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【参考サイト】
JACA海外協力隊 作業療法士
一般社団法人 日本作業療法士協会
作業療法の海外インターンシップ | Projects Abroad