言語聴覚士(ST)は言葉や嚥下に関するリハビリの専門職です。就職先は病院や介護施設、ことばの教育など多岐にわたり、少数ですが一般企業に就職するという人も居ます。

STはリハビリという専門性や、大学卒業直前に国家試験を控えているなど、通常の就活とは異なる点がいくつかあります。今回はSTが就職活動で失敗しないために、押さえておきたいポイントについて解説します。

1.言語聴覚士(ST)の就活スケジュール

STの就活は多くの場合、最終学年になってから始めます。最終学年であってもテストや実習、卒業論文、国家試験などで多忙なため、一般的な就活に比べると短期であり、スケジュール管理がポイントになります。

特に重要な国家試験は、毎年2月に実施されます。試験直前は勉強時間の確保が最優先ですので、新卒者募集が開始される5月から夏までに、希望する施設をピックアップし、10月~11月までには就職先を決めておくと良いでしょう。

STは必要数に対して人材が少ない、いわゆる「売り手市場」ですが、好待遇の人気病院などは競争率が高くなります。早めにターゲットを絞り、動き始めるようにしましょう。

国家試験に不安がある場合は試験後に就活するという方法もありますが、希望の就職先が残っているとは限りません。さらに合格発表は3月末で新年度のスタートまで時間もないため、満足のいく就職先選びができない可能性があります。

2.就職活動で失敗しないために

言語聴覚士(ST)が就活をする上で、少ない時間の中で、自身が希望する条件にできるだけ近い施設に就職するために、しておいた方が良いこと、確認しておきたいポイントをみてみましょう。

自分の希望する分野の決定

STの専門分野は大きく分けて成人・小児の2つがあります。大学病院のような大きな施設では両方の分野を扱っている場合もありますが、それぞれ別の施設に分かれていることが多いです。

また、成人分野でも医療施設と介護施設では治療と機能維持で目的が異なっていたり、訪問リハや通所リハへの関わり方、対象疾患に差があるなど違いがあります。小児分野でも同じように医療施設や教育施設などで違った役割をもっています。

そのため、在学中の得手不得手や実習で見つけたやりたいこと、自身の将来のST像などを考慮して、まずは自分にあった専門分野を見つける必要があります。

働いてみて「思い描いていたのと違う」「もっと違うこともしてみたい」など出てきた場合には転職もできますが、初めての職場で学ぶことはSTとしての基礎にもなります。試験へのモチベーションをあげるためにも自分のやりたいことと向き合う時間を作りましょう。

自分が「STとして何をしたいか」「どんな風になりたいか」などビジョンが明確になっていると、履歴書の作成や面接の際にも役立ちますので就活の第一歩になります。

施設に求める希望の条件

自分がどんな分野に進みたいかが決まったら、希望の条件に合いそうな施設をいくつかピックアップしていきます。その際に注意しておきたいポイントは条件にこだわりすぎないことです。

求人サイトなどを見るとたくさんの施設が掲載されており、つい給与などの待遇に目がいってしまいます。しかし、記載されている内容ばかりを比較して施設を絞り込むと、イメージと異なっていたり、実際の職場の雰囲気が合わないなどの失敗につながります。

待遇などの条件も大切ですが、ある程度幅をもたせ、様々な角度から検討すると良いでしょう。

必ず施設見学をする

気になる施設を絞り込んだら、応募する前に必ず施設の見学に行くことをおすすめします。

ホームページに記載されている情報だけでは、職場をよく知ることはできません。職場を見学することで、雰囲気や患者さんの表情なども体感できます。納得できる就職先を探すためにも、見学をしてから面接に臨むようにしてください。

面接の際、あなたの答える内容から、実際に職場見学をしたのかどうかがかならず面接官に伝わります。「どうしてもここに就職したい」という熱意を表現するためにも、一度は職場を見学しておきたいものです。

また、できれば職場で働いている先輩たちの話も聞かせてもらいましょう。STの話だけでなく、看護師や介護士などの他のコメディカルの話も参考になります。

給与や福利厚生

給与や福利厚生に固執しすぎるのはあまりよくありませんが、生活に直結してくるため確認しておくべき項目であることは間違いありません。

給与とは基本給以外の資格手当や残業代なども含めた賃金の総額(額面給与、総支給額)のことを指します。実際には給与から保険料や税金が引かれるため、受け取る額は求人に記載されている額とは異なります。

また、昇給制度は施設により異なりますが、経験年数に応じて一定額上がっていく場合や、毎年スタッフそれぞれの業務目標などを設定し、達成度に応じて昇給していく場合など様々です。可能であれば初任給だけでなく、昇給のしやすさにも目を向けることをおすすめします。

福利厚生には賞与や休暇手当、資格取得支援手当、育児休暇の取得などがあり、施設によってかなりばらつきがあります。福利厚生によっても収入やスキルアップ、ライフプランにも関わってきますので確認が必要です。

通勤時間や周囲環境

忘れてはいけないのが施設までの通勤手段です。自宅から通う場合は問題ありませんが、就職と同時に一人暮らしをスタートするという方も多いと思います。

その場合、周辺地域の治安や家賃相場、生活環境なども一緒にみておくと給与に見合った部屋が借りられるのか、生活は成り立つのか、ある程度の見通しを立てることができます。

自宅から通うつもりで就職したものの、通勤時間を減らしたい、一人暮らしに興味が出るなど自身の気持ちの変化もあり得ますので、確認しておいて損はありません。

3.言語聴覚士(ST)が就活中にやりがちな注意点

この記事の冒頭でも書いたように、STの就活は一般的な就活とは異なる点があります。先のことを十分に考えて応募しないと、後々トラブルになる場合もあるので注意しましょう。以下に実際に私の同期が経験した2つの失敗を挙げましたので参考にしてみてください。

複数の施設に同時に応募しない

一般的な就活では複数の希望する企業に応募し、複数の企業から内定を得て、最終的に就職先を決定します。しかしSTをはじめとするリハビリ職の場合は、基本的に1つの施設に応募して、合否の結果をもらい、就職が決まらなかった場合にのみ別の施設に応募することができます。

特にSTは有資格者が少なく、新卒者も国家試験に受かるとは限らないため、施設側も人数の確保が大変です。複数の施設に応募し、複数の内定を得た状態になると、合否の結果がわかる3月末に急に欠員を出すことになり、施設に対して多大な迷惑をかけることになります。

実際、養成校の就活センターや教授などに相談なく、就活を進めた学生が複数の施設に応募して、複数の内定をもらったということが後から発覚し、学科長や教員とともに施設に謝罪に行くなど騒ぎになった事例もありますので、よく考えて1つの施設に応募するようにしましょう。

国家試験の合否が出たあとについて

在学中は国家試験合格に向けて勉強に励んでいくことになりますが、就活と並行して考えておかなければならないのが、不合格だった場合にどうするかです。

授業の成績から試験が不安で国家試験後に就活をする場合は大きな問題にはなりませんが、就職先が決まっていて国家試験に落ちてしまったという場合には内定取り消し、もしくは助手という形で働きながら再度国家試験合格を目指すということになります。

そのため、もし不合格となってしまった場合には自分がどう次の試験に備えるつもりなのかを考え、面接で聞かれた際や結果を報告する際に答えられるようにしておく必要があります。

不合格の場合の取り決めは施設ごとに異なりますので、あわせて確認しておきましょう。

4.まとめ

今回は言語聴覚士(ST)が就職活動で失敗しないために、スケジュールや押さえておきたいポイントについて解説しました。

STが就活をする期間はとても短く、試験などの期間を考慮するとあっという間に国家試験が近づいてきます。早い時期から、自分のやりたい専門分野や将来像を考え、自身の理想のSTがどのようなものか明確にすることが成功への近道です。

初めての臨床が楽しみなるような職場が見つけられるよう、こちらの記事が就活に悩んでいるST学生の参考になれば幸いです。
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