良好な人間関係を築けるかどうかは、自分も相手も気持ちよく仕事ができるかに左右されます。特に作業療法士(OT)はOTスタッフ同士だけでなく、他職種のスタッフ、患者さんとその家族など様々な立場の人と人間関係良好な関係を築いていかなければなりません。

ここでは、転職後にスムーズに新しい環境や人間関係に慣れていけるよう、事前に人間関係で困るタイミングと解消法を知っておきましょう。

1.人間関係で悩まないために気を付けておきたい基本

まずは人間関係で悩まないよう、言動について気を付けておきたい基本的なポイントを説明します。そして、相手に好印象を感じてもらえるような言動、姿勢を意識することで、新しい職場の人と関係性を築いていきましょう。

転職先で注意したい言動

新しい職場で相手を不快にさせる発言をうっかりしないよう、注意すべき言動をいくつか押さえておきましょう

① 前の職場と比較しない

前の職場と比べることはご法度です。「前の職場では〇〇でしたけど…」と比較し、転職先の職場を下に見るような言動は、反感を買ってしまいます。

スタッフから「前の職場はどうしていたの?」と聞かれれば答えても構いませんが、あくまで今の職場を否定しないような言い方にするよう気を付けましょう。

「郷に入れば郷に従え」ということわざがあるように、まずは、今の職場のルールに従い、新たな環境では自分のやり方を一度頭の片隅に置き、その職場のルールに従いましょう。

一般的に、「転職して最初の3ヶ月はおとなしく従え」と言われます。職場のルールに慣れしっかりと仕事を覚えた後に、それでももっと良い方法があれば、職場の雰囲気を見ながら柔軟に提案していくようにしていきましょう。

②.どんな相手でも礼節を持って接する

中途採用の場合、スタッフの中には、キャリアも年齢も自分より下の方もいるかもしれません。しかし、年下だからと言ってタメ口で接するのはNGです。

年齢や作業療法士(OT)としての経験は自分の方が上でも、転職先では「新人」です。年下の同僚は、「新たな職場の先輩」になりますので、タメ口での挨拶や質問は失礼に当たります。

もちろん、OTに限らず、看護師、介護士のスタッフなど、職種を問わず丁寧な対応を心がけるようにしましょう。

好印象に思われるための言動

NGな言動を把握した後は、どうすれば相手に好印象を与えるかを押さえておくことで、人間関係を築くのをよりスムーズにしてくれます。

①.笑顔で明るく挨拶をする

挨拶は良好な人間関係を築く基本です。同僚でも患者さんでも、「おはようございます」「こんにちは」「お疲れ様でした」など、気持ちの良い挨拶を心がけましょう。すれ違いざまに笑顔で会釈をするのも、社会人のマナーとして大切です。

また、相手の顔と名前を積極的に覚えることも、相手に好印象を与えることにつながります。「◯◯さん、おはようございます」と声をかけられることで、自分に好意や関心を持ってもらっていると相手が感じられます。積極的に挨拶をすることで、相手にも早く自分の名前や顔を覚えてもらえる良い効果も。

特に、患者さんは入院生活や病気について不安な気持ちを抱えている方も多く、笑顔で気に掛けることで、自らに安心感や親近感を持ってもらいやすくなります。

②.「教えてもらっている」という謙虚さを持つ

OTとしての経験がどんなに長くても、転職先では「新人」です。初心を忘れず、「教えてもらっている」という謙虚な姿勢で感謝の心を持つことが大切です。

説明を受けたこと、教えてもらったことはメモを取り、職場のルールなどを早く覚えられるようにしましょう。

③.相手の状況に合わせた個別的な対応をする

スタッフ間はもちろん、医療現場では患者さんとのコミュニケーションで、相手に合わせた対応を取れることはとても大切です。相手への気遣いを怠らないことで、自らが相手に「信用できる人」「安心できる人」と思ってもらいやすくなります。

コミュニケーションにおいて、相手に寄り添った、個別的な対応ができているかを確認しましょう

  • 声の大きさやスピードは、相手の聞こえ具合に合っているか
  • 言葉選びは相手の理解度(認知機能)に適しているか
  • 声のトーンは相手に不快感を与えていないか
  • 笑顔で接することができているか
  • 相手の目線に立って話しかけているか など

例えば、高齢の方へのコミュニケーションでも、認知症のある方とない方では、対応が変わってきます。認知症がない方にゆっくり過ぎる話し方や簡単すぎる言葉選びはかえって失礼になります。

また、相手の生育歴や背景(現在の状況に加えて、病前の職歴なども)を把握したうえで、どのような態度が失礼に当たらないかを踏まえて関わることは、患者さんの信頼を得られ、人間関係を構築するうえで非常に重要です。

そして、共通することは、年上の患者さんには疾患に関わらず「人生の大先輩」であるという尊敬の気持ちを持って関わりましょう。

また、車椅子や寝たきりの患者さん、小児の患者さんなどは、目線の高さを合わせることもとても大切です。見下ろす姿勢になると、それだけで相手に威圧感を与えてしまいます。

声をかけるタイミング

OTでもほかの職種でも、医療現場は基本的に忙しい職場がほとんどです。人間関係を円滑にするためにはある程度「その場の空気を読む」ということも求められます。

特に、上司や他職種のスタッフ(多忙な医師や看護師など)に話しかける時には、以下のことを留意したうえで、声をかけるようにするといいでしょう。

  • 話しかける相手は今忙しそうにしていないか
  • (相手が忙しそうにしている場合)今話しかけた方が良い内容か、後に回しても支障がない内容かどうか
  • 伝え方は簡潔で、なおかつ相手に意図が伝わるか

そして、声をかける時に、「今少しお話よろしいですか?」「〇〇の件で伺いたいことがあるのですが」などと前置きをしてから話しかけると、良いでしょう。すると、相手も「今忙しいから後にして」などと返事をくれ、トラブルを回避しやすくなります。

2.人間関係でよくあるトラブルと揉めないポイント

自分ではいくら気を付けていても、トラブルを避けられず、人間関係のいざこざに巻き込まれてしまうこともあります。そのため、事前によくあるトラブルともめないポイントを把握しておくことで、問題の悪化を防げるようにしておきましょう。

スタッフ間で、第三者の批判や悪口を聞いた時

組織や上司、先輩や後輩、人間関係において不満が生じることは避けられないこともあります。時には「〇〇さん(先輩)って、こういう嫌だよね」「あなたはどう思う?」などと批判に対して同意や意見を求められることもあり得ます。

自分が聞き役となり、相手の気持ちに寄り添うことは、人間関係を円滑にするためには必要な部分もあります。

しかし、批判に同意したり、自分も同調して悪口を言ってしまったりするのは、おすすめできません。職場内では、誰が聞いているかもわかりませんし、最悪自分が率先して悪口を言っていたと思われる可能性もあります。

そして、自らも職場の不満があった場合でも、なるべく職場ではない場所で発散する方が安全です。

求められる仕事がキャパオーバーになってしまう時

積極性を持って仕事にあたることで、職場での信頼を得られ、リーダーなどの役職がついたり、後輩指導や勉強会の発表など臨床以外の任してもらえたりすることは、喜びややりがいにつながります。

人間関係を円滑に保とうとするあまり、つい業務面でも頑張りすぎてしまい、自分のキャパを超えてしまう方も中にはいます。しかし、それが行き過ぎて、仕事量が増えすぎてしまうと、かえって負担になり仕事が辛くなってしまう恐れもあります。

人によっては、自分が「できない」「大変だ」などと声をあげることで、「ほかの人に負担がかかってしまうのではないか」「ほかの人に悪く思われるのではないか」などと不安になってしまい、自分から周りにヘルプを出せなくなってしまうことも。

助けを求められず、過負荷な状態を続けてしまうことで、結果的に退職に追い込まれてしまう場合もあります。

そんな時は、信頼できる上司と、1対1で話をできる時間を作ってもらいましょう。「~してほしい」という希望ははっきりと伝えられなくても、現状の悩みを伝えることで、解決の糸口を見つけたり、負担を軽減するために配慮をしてくれたりするでしょう。

患者さんから明らかに理不尽なことで苦情を受けた時

患者さんからクレームを受けた際、患者さんの思いをしっかりと聞き、謝罪をしたうえで、なぜその問題が起きてしまったか、原因を探り、対策を練り、改善していくことが大切です。

しかし、まれに明らかに理不尽なクレームを言ってくる患者さんもいます。そんな方は一度クレームを受け入れてしまうことで、患者さんのその後の態度やクレームがより悪化することも考えられるので、注意が必要です。

患者さんの行き過ぎたクレームを受けた時には、まず患者さんの話はもちろん、担当看護師などにも情報を確認し、事実関係を明白にすることが大切です。そのうえで、スタッフ側の改善すべき点はどこか、患者さんの訴えをどこまで酌むべきかを検討していく必要があります。

自分では判断に困った時、自分では対応しきれないと感じた時には、早めに上司に相談しましょう。

3.困った時の対処法

人間関係で悩み困ってしまった時、どのような対象法を講じればいいのか、事前に知っておくことで、人間関係のストレスや不安を軽減させることにもつながります。

どうしても解決できない時は転職することで、人間関係を一新できますが、まずは今いる場所でできる方法を考えてみてはいかがでしょう。

自分の言動・行動を振り返ってみる

人間関係で悩んだ時には、自分の言動や行動を振り返ってみることが大切です。

  • 自分の伝えたい意図がきちんと伝わっていたか
  • 言葉や態度が威圧的であったり、相手を傷つけるものだったりしなかったか
  • 相手の気持ちを考えて発言できていたか

これらの視点を持って相手への伝え方を振り返りましょう。同じ要求(指導やお願いなど)をするにしても、自分の態度や表情、声のトーン、言葉選び、声の速さなどで相手の伝わり方は違います。

また、自分の言動自体が正しいものであったか、相手を思いやったものだったかを振り返ることも大切です。

他人に変わってほしいと思っても、中々他人の性格や考え方を変えることはできません。しかし、自分が相手を思いやる対応や言動を意識することで、少しずつ相手の反応が変わってきたり、以前よりも良い関係性を築けるようになっていったりする可能性はあります。

適度な距離を保つ

どうしても、苦手だと感じる人に対しては、思い切って距離を置くことも一つの方法です。私的な会話をしないだけでも、負担は軽減できるでしょう。

しかし、ともに働いている以上は、一切コミュニケーションをとらないことは不可能です。業務上必要なホウレンソウ(報告・連絡・相談)を、きっちりと行い、仕事では支障を出さないように気を付けながら、適度に距離を置くようにしましょう。

そして、挨拶は欠かさずして、話しかけられた時には、笑顔で返事をしましょう。そうすることで、関わりは減らしつつも、相手に不快感を与えないようにすることができます。

職場の上司に相談する

問題が起きた時には、自分で抱え込まず、早めに解決に導けるよう、周りの人の助けを借りることも重要です。職場の先輩、そして上司に相談することで、的確なアドバイスをもらえることもあります。

特に、人間関係の悪化によって、仕事に支障が出る場合には、上司に相談して部署異動などを検討してもらうことも一つの方法です。

比較的規模の大きい総合病院などでは、疾患ごとにチーム編成を組んでいる場合があります。所属するチームを変えてもらうことで、人間関係の問題が解決する場合もあります。

それでも改善しない場合は、職場の相談窓口を利用することも検討してみるといいでしょう。

どうしても解決できない時は転職を考える

不満やトラブルのある職場で我慢して働き続けるのは精神的な負担につながり、仕事にも集中できません。自分の態度を改めても、上司に相談したりしても、悩みを解決できそうにない時には、転職も視野に入れましょう。

職場が変わることで、人間関係が変わり、悩みが解決する可能性も広がります。

転職をする際のポイントは、職場の雰囲気をしっかりと確認してから、就職を決めることです。上司はどんな人か、話しやすい雰囲気を持つ人か、職場全体の雰囲気はどうか、スタッフの表情は生き生きとしているかなど、面接や見学の時点で確認しておくことで、転職後に人間関係でつまずくリスクを軽減させられます。

4.まとめ

人間関係を円滑に進めるためには、まずは普段の自分の言動を振り返ることが大切です。問題が起きなくても、自分の態度がどうか定期的に振り返ることで、人間関係のトラブルを避けることにつながります。

相手を思いやって関わることが、人間関係を円満に構築するためには必要不可欠です。

また、自分が疲れている時やイライラしている時は、相手への配慮もかけてしまいがちです。自分の心がリラックスできるように、疲れた時にはしっかりと休息をとる、気分転換を図るなどの工夫をしてみてもいいかもしれません。

この記事を読んだ転職を予定している方や転職をしたばかりの方が、人間関係を築きやすくなるヒントを得られると嬉しく思います。

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